世界には様々な国が存在する。
国々は個性的で、儚く、切なく、勇しく。
_何より美しい。
しかし、美しいものは決して国々だけでは無い。
この物語を彩るのは 『事物』
例えば、約束の地に咲き乱れる桜の木
ある者の存在証明となったマフラー
永遠の思い出になれたティーポット
平穏で、何気ない素晴らしき日常の中で
過ごす国々の…
そんな、何でもないような物語の一場面から、
瞳の中、鮮やかに写っていた
現在 記録されない『 過去 』
それを、其の目に記憶して欲しい。
その親子は、歪だとも言える関係をしていた。
息子は父親に怯え、認められたいという思いを抱え、父親は息子へ諦めとも、依存とも言える…そんな、互いが独り善がりの関係性だった。
それでも、彼は仲を改善したいと考えていた。
そんな親子を見ていられない、と。父親の友人は息子へ対話を提案した。
日常は、思い出になり得るのか…
自室の扉が音を立てて開く。
何事かと思い、振り向けば其処に息子…13植民地が居た。
「 何の用ですか。 」
私が問うと、息子は私への恐怖心を隠さずに体を縮めている。
息子の言葉を待って暫く経つと、ようやく口を開く
「 お父様、あの、僕、は…。 」
下を向きながら言葉を紡ぐ息子に、少々苛立ちを覚える。
「 はっきりと言いなさい。 」
息子は涙を浮かべてしまった。彼がそんな反応をする度に私はこう思う。
嗚呼、彼は私が居ないと壊れてしまう。私が居ないと駄目なのだ、と…。
息子は乱れる呼吸を整えてから、再度口を開く。
「 お父様と、話をしたいなと思い、此処へ来ました。 」
思わず、目を見開いて彼を見る。畏まって言う程の事なのか、今、しているんじゃないか。と思考が巡る
私が困惑していると、息子は幼いながらの無邪気な笑顔ではなく、無理をして笑おうと引き攣った笑みを浮かべる。
「 紅茶を淹れます、だから…話しましょう…? 」
泣きそうな笑みを見て、私は同情でもしたのだろうか。いや、紅茶だ。紅茶を飲みたかった気分なんだ。そうに違いない。
静かに席を立ち、息子へ近寄る。
「 …仕方ないですね、付き合ってあげますよ。 」
息子は了承して貰えると思っていなかったのか、目を見開いた後、目を輝かせて嬉しそうに微笑んだ。
…まあ、ずっと自室に籠っていて息が詰まっていた所だ。と自分を納得させる。
「 中庭にでも行きましょうか。 」
手を差し出すと、息子はおずおずと其の小さい手を出した。
偶には、気分転換も良いかもしれない。
『「 … 」』
13植民地が一通り話した後、気不味い沈黙が流れる。
其の空気に耐え切れず、私は13植民地へ視線を向け、口を開く。
「 紅茶、ありがとうございます。 」
13植民地は慌てて返事する。
「 どういたし……まして…? 」
彼は勢いだけに任せて言ったのか、後半になるにつれて声が小さくなり、疑問系となる。
思わず溜息が出てしまう。
「 …考えてから発言しなさい。 」
私はティーポットを手に取り、空になった13植民地のカップに紅茶を注ぐ。これでも飲んで落ち着け、という意味で。
静かに其の様子を眺めている13植民地は、申し訳無さそうに此方を見る。
コト。
音を立てティーポットを置き、再び席に座る
13植民地はまた微笑んだ。
「 …ありがとう、ございます。 」
13植民地は慌てて飲もうとしてカップに口を付けて
私はあ、と口から声を漏らす。
「 熱ッ 」
涙を浮かべながら舌を出して唸っている、そんな13植民地を見て私は思わずくす、と笑ってしまった。
「 お前は全く、馬鹿ですね。 」
13植民地は馬鹿正直にショックを受け、青褪めた表情をする。面倒なので誤解を解こうと口を開く。
「 …冗談ですよ。 」
「 ごっ、ごめんなさい!冗談も通じなくて…。 」
頭を下げて謝罪する息子に、厳しく接し過ぎたかと考え込む。
そんな私を見て、13植民地は気遣う様に言葉を述べる。
「 お父様の所為では無いです!僕が… 」
「 もう良いです、この話は終わりにしましょう。 」
こんな事を話していても時間の無駄だ。
今、こうして揉めては居るが、今日はとても充実している気がする。
「 今日は誘ってくれてありがとうございます。良い気分転換になりました。 」
一瞬固まった後、嬉しそうに口角を緩める13植民地。
「 あの、お父様の御友人さんが、一緒に話す事を提案してくれて… 」
友人、と聞くと…とある国が思い浮かぶ。
「 友人って? 」
少々気になったので、目の前にいる息子へ優しく微笑み問う。
警戒心を緩めるつもりだったのだが、逆に恐怖を与えてしまったらしく、顔を青褪めさせ声が震えている。
「 えっと、あの…フランス、っていう。国だったと、思います。 」
やっぱりか。…気に入らないが、今日は余り退屈はしなかった。
息子と初めて対面して話す事が出来たし、今度礼でも…と考え、直ぐに憎たらしい彼奴の顔を思い出し辞める。
「 そうですか…… 」
私は苦笑する。そして、腕時計を見て席を立つ。
「 では、私はこれからやる事が有るので…今日はここで終わりましょう。 」
13植民地は少し名残惜しそうに私を見て来る…
背後から感じる視線に、仕方なく振り向く。
「 明日も紅茶を淹れますよ。 」
ティーポットに触れながら言葉を述べると、意味を理解してくれたのか、嬉しそうに微笑む。
「 ありがとうございます。頑張ってください。 」
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アンティーク調のティーポット
見ているだけで優雅な気分になれるティーポット。イギリスに愛用されている。
後のアメリカ合衆国となる13植民地と初めて対面して話すきっかけになった。
現在、ティーポットは古びて使われなくなっている。
…が、今も尚大切に保管されている。
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to be continued
コメント
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はい神作〜💗💗 アメリカの不器用感大好き。子供だから何も分からないけど、あなたに好かれたい。愛されたい。って気持ちももちろんあると思うけど、自分自身も父親を愛したい。という気持ちで誘ったのではないかという考察組です😄イギリスの「これ以上話しても無駄」という判断冷たすぎるし、だけどこんな話してたら紅茶が不味くなる。と言いそうなそんな雰囲気で萌😭😭😭フランスに対する気持ちがお互いわかりきってて好き。 本当に大好きですこれからも頑張ってくださいえっちめ