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「いつかまた、」
私は、今はもう見えない色葉さんの背中を見送りながら、そう言葉を紡いだ
家に帰る途中で色葉さんの食べるおにぎりの釘付けになってしまい、見つかった時は怒られるかと思った
しかし色葉さんはあろうことか、私におにぎりを分けてくれた
文句一つ言わず、食べる私をまるで天女のような優しい笑みで頭を撫でてくれた
「、よし!まずはいっぱい食べて、色葉さんよりおっきくなるぞー!」
私はそう心に誓い、家路へと向かった
________
「、、、」
「、、、」
現在私は鼻をほじりながら、目の前にいるとあるボロボロな少年を見つめていた
、なんかめっちゃ獪岳じゃね?
えだって、髪色と髪型とかめちゃんこそっくりなんだけど
「、なに見てんだよ」
「、、、」
えー、というか待って、これ悲鳴嶼家とっくに襲撃されて終わってる感じ?
うそやろ?推しに会って”よっしゃやったろ”って意気込んだ矢先にこれ?
「おい」
ってか獪岳ちっさ。コイツマジで将来鬼になんの?
いやでも、原作じゃ善逸に瞬殺されてたよな
いやでも、ほったらかしにすると逆に善ちゃんの育手が死ぬからな
「おい!聞いてんのかよ!」
私が脳内整理を行っていると、獪岳の怒鳴り声で現実へ戻された
「え。あぁ、女ってやっぱ胸だよな。特にデケェ方」
「何言ってんだお前」
やべ、つい性癖を出しちまった
私はゴホンと軽く咳払いし、座り込む獪岳の前でしゃがみ込んだ
「お前、こんな道端で何してんの?家出少年ですかー」
「、別に。お前に関係ないだろ」
そう言うと獪岳はすぐにそっぽを向いてしまった
うっわ、想像以上にめんどくせぇタイプだわ
私がどうしたものかと考えていると、獪岳の腹から大きな音が響いた
「、!!」
「えなにお前、腹減ってんの?」
「ち、ちげぇよ!これは、その、屁の音だから!」
「余計汚くなってんじゃねぇか。それなら腹の音の方がマシだろ」
ったく、仕方ねぇなと私は懐からおにぎりの入っている包み袋を取り出す
「ほら、これでも食えよ。最後の一個なんだから味わって食えよ」
「、!、いいのかよ」
「腹空かせるガキほったらかす程薄情じゃねぇの。いいからとっとと食えや」
「んぐっ!?」
私はおにぎりを手に取り、獪岳の口に突っ込んだ
「、!美味い、」
獪岳はおにぎりに無我夢中で頬張り、私は口角を上げながら獪岳の隣に腰掛けた
「そんで、何でこんなとこで蹲ってんの?」
どうせ悲鳴嶼家を鬼に売って路頭に迷っているだけだとは思うが、一応聞いておくか
私がそう問いかけると、獪岳はおにぎりを飲み込むとぽつり、ぽつりと話し出した
「、俺、追い出されたんだ。金を盗んだって」
「そんな事してねぇのに、そもそも金を盗めるんだったらとっくに盗んでるっての」
「、、、」
私は何も言えなかった
そもそも獪岳は寺の金を盗んで子供達に追い出され、夜に鬼と鉢合わせる
そこで悲鳴嶼(中の人銀さん)を裏切り、最終的に鬼になるシナリオ
いや、そもそもそこが違うのかもしれない。
寺の金を盗めるんだったら何故最初に盗まなかった?
悲鳴嶼(中の人銀さん)は目が見えない
しかも、まだ鬼殺隊にも入っていないから五感もそこまで鋭くはないはず
盗めるチャンスなんて道端の石ころのように転がっていたはずだ
もし、獪岳が寺の子供達から嫌われていて、何らかのはずみで金を盗んだと嵌められていたら
原作の善ちゃんが言っていた”幸せの箱”に穴が開いたのはこれくらいの時期
そして、獪岳は承認欲求の権化。所謂汚いライナーだ
いじめられた子供というのは周りの評価や目に過剰に反応する
その全てが、この先の獪岳に全て当てはまる
そして、嵌められた復讐と自分が死にたくない為に鬼を寺へ案内する
これだけでも十分辻褄が合う。
「、ん?いや待てよ、」
今まで気にした事無かったけど、なんで獪岳がいんの?
悲鳴嶼家って確か一年前に無くなったはずじゃなかったけ?
「、いやまぁ、宇髄さんの時系列だって狂ってるし、いっか」
「?」
私はしばらく考えたのち、考えるのを放棄した
いやだって、もう良くない?なんか面倒くさくなってきたし
私は獪岳の口端にあるご飯粒を指で取り、優しく微笑みかけた
「お前、私と一緒に来るか?」
「!良いのかよ、こんな得体の知れねぇガキ、」
「んな細ぇ事気にすんなって。丁度一人旅は飽きていたところだ」
私は立ち上がり、獪岳に手を差し伸べた
この手を取るか取らないかで、この先の未来が変わってくる
もし、獪岳がこの手を取らずに原作通りになった場合
桑島んとこの爺さんの首、ちゃんと斬ってやらねぇとな
私がそんな妄想を働かせていると、手のひらに小さい温もりが乗った
「、俺を、連れて行ってくれ」
「、おう、私は夜斗色葉。お前は?」
「獪岳、」
獪岳は私の手を握り、今まで一つの影だった二つに増えた