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ふぁ
33
せれあ
19
170
【注意事項】
本作品はフィクションです。 登場する人物・団体・学校・事件・地名などはすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
また、本作品にはホラー・ミステリー要素、恐怖を感じさせる描写、不穏な表現が含まれます。
苦手な方はご注意ください。
キャラクター
黒瀬 湊(くろせ みなと)
主人公・17歳
冷静で観察力が鋭く、皮肉を口にするタイプ。三年前の出来事について、重要な記憶が抜け落ちている。人の嘘には敏感だが、自分の記憶だけは信用できない。
雨宮 澪(あまみや みお)
17歳・湊の幼なじみ
成績優秀で口が達者。怖いものなどないように振る舞うが、旧校舎の二階だけは頑なに避ける。美月の失踪について、警察にも話していない事実を知っている。
神崎 玲央(かんざき れお)
18歳・元生徒会長
明るく社交的で、場の空気を読むのが得意。誰とでも仲良くできる一方、事件の話になると冗談で話題をそらす。三年前の失踪当日、学校に残っていた。
篠原 千紘(しのはら ちひろ)
17歳・新聞部員
証拠と記録を重視する現実主義者。心霊現象を信じていない。事件に関する新聞部の古い資料を保管しており、その一部だけが不自然に切り取られている。
三上 直人(みかみ なおと)
17歳・元写真部員
気が弱く、嘘をつくと目をそらす癖がある。事件当日の写真を撮影していたが、本人は「何も写っていなかった」と主張する。
白瀬 美月(しらせ みつき)
失踪当時16歳
明るく、誰とでも打ち解ける少女。三年前に失踪し、死亡したという証拠すらない。五人それぞれに違う秘密を打ち明けていた。
第1話 午前零時の通知
「……で。誰が呼んだんだよ、これ」
夜の校門の前で、俺は手元の紙をひらひらと振った。
雨が降っていた。
十月三十一日、午後十一時三十二分。
廃校まで、あと一か月。
俺たちの母校、私立・夜見坂高校は、少子化と経営難を理由に閉校が決まっていた。
三年間通った学校がなくなる。
普通なら、感傷的な気分にでもなるのだろう。
少なくとも、こんな時間に呼び出されて、雨に濡れながら門の前に立たされるよりは。
「知らないわよ。私だって、これが届いたから来ただけ」
隣で雨宮澪が答えた。
彼女は傘を差しながら、俺の持つ紙を見た。
白い封筒。
宛名は手書き。
中に入っていたのは、一枚の紙だけだった。
『十月三十一日、午後十一時三十分。
旧校舎一階、第一音楽室。
白瀬美月がいなくなった日のことを、覚えていますか』
差出人の名前はない。
「悪趣味だな」
「あなたが言うと、妙に説得力があるわね」
「褒め言葉として受け取っておく」
「褒めてない」
澪は即答した。
昔からこうだ。
俺が何か言えば、澪が言い返す。
三年前までは、そこにもう一人いた。
白瀬美月。
よく笑うくせに、時々、誰よりも冷たい目をする少女だった。
そして三年前の十一月一日。
美月は、学校から姿を消した。
遺体は見つからなかった。
それでも事件は、事故として処理された。
俺たち五人は、警察から何度も話を聞かれた。
何を見たのか。
誰と話したのか。
最後に美月と会ったのはいつか。
俺は、その質問に答えられなかった。
なぜなら。
その夜の記憶が、途中から抜け落ちているからだ。
「おーい! お二人さん! こんなところで青春してる場合か?」
校門の向こうから、神崎玲央が走ってきた。
傘も差さず、制服の上にパーカーを羽織っている。
「青春じゃない。雨宿りにもなってないだけだ」
「相変わらず口が悪いな、湊」
「お前がうるさいだけだ」
「はいはい。仲良しで何より」
「どこがよ」
澪と俺の声が重なった。
玲央は楽しそうに笑った。
その笑顔を見て、俺はふと思った。
こいつは、いつからこんなふうに笑うようになったのだろう。
三年前。
美月がいなくなる前は。
もう少し、違う顔をしていた気がする。
「ほら、残りも来たぞ」
玲央が校門の外を指した。
三上直人と篠原千紘が、並んで歩いてくる。
直人は俯き、千紘はスマートフォンを操作していた。
「全員集合、ね」
千紘は俺たちを見回した。
「これ、誰かの悪ふざけだと思う?」
「そう思いたいところだな」
俺が答えると、千紘は小さく息を吐いた。
「招待状の紙、全員同じだった。封筒も。筆跡は……判断できない。わざと癖を消して書いている」
「そこまで調べたのかよ」
「調べるでしょ。三年前の事件を蒸し返す手紙なんだから」
千紘は封筒を鞄にしまった。
「それに、差出人が誰であれ、私たち五人を同時に呼び出せる人間は限られている」
「五人?」
直人が、小さな声で口を挟んだ。
全員が彼を見た。
「……いや。何でもない」
直人は俯いた。
その仕草が、妙に引っかかった。
「とりあえず、中に入ろうぜ」
玲央が校門を押した。
錆びた金属音が、雨の中に響いた。
鍵は、開いていた。
「閉校するからって、管理が雑すぎない?」
澪が呟く。
「誰かが開けたんだろ」
「誰が?」
「さあな」
俺たちは校舎に入った。
廊下は暗く、非常灯だけがぼんやりと床を照らしている。
壁には、卒業生の写真が並んでいた。
その中に、俺たちの写真もあった。
三年前の文化祭。
俺と澪と玲央、千紘、直人。
そして、美月。
六人で写っている。
「……これ」
俺は足を止めた。
「どうしたの?」
澪が振り返る。
「いや。何でもない」
写真を見つめた。
美月は笑っていた。
俺の隣で。
けれど、何かがおかしい。
写真の中の俺は、カメラを見ていなかった。
俺だけが、美月の方を向いていた。
そして美月もまた、俺を見ていた。
まるで。
この写真が撮られることを、二人とも知っていたみたいに。
「湊?」
「……行こう」
俺は視線をそらした。
第一音楽室は、一階の廊下の突き当たりにあった。
扉には、古いプレートが残っている。
第一音楽室。
その下に、誰かが鉛筆で小さく書き込んでいた。
『六人目は入室禁止』
「何だよ、これ」
玲央が眉をひそめた。
千紘がスマートフォンのライトを向ける。
「最近書かれたものじゃないわね。文字がかなり薄い」
「六人目って……」
直人が言いかけた。
その瞬間。
校舎のどこかで、チャイムが鳴った。
キン、コン、カン。
間の抜けた、古い音。
俺たちは一斉に顔を上げた。
「……この学校、まだチャイム鳴るの?」
澪が呟く。
「電源は落としてあるはずだぞ」
玲央の声から、さっきまでの軽さが消えていた。
千紘が時計を確認する。
午後十一時五十八分。
「あと二分で、日付が変わる」
誰も返事をしなかった。
俺は扉に手をかけた。
鍵はかかっていない。
ゆっくりと押し開ける。
室内には、古いピアノと机が並んでいた。
窓はすべて閉まっている。
人の気配はない。
それなのに。
一番奥の机に、白い封筒が置かれていた。
俺たちが持っているものと、まったく同じ封筒。
表には、名前が書かれている。
白瀬美月。
「……ふざけんなよ」
玲央が呟いた。
千紘が封筒を開ける。
中に入っていたのは、小さなメモだった。
『五人とも、来てくれてありがとう。
でも、一人足りないね』
「五人、いるだろ」
俺は言った。
澪。
玲央。
千紘。
直人。
そして俺。
五人だ。
千紘がメモを裏返した。
そこには、さらに一文が書かれていた。
『湊くんは、何人いると思っているの?』
「……は?」
そのときだった。
全員のスマートフォンが、一斉に鳴った。
午前零時。
画面に表示された送り主を見て、俺は息を止めた。
白瀬美月。
三年前から、誰も使っていないはずのアカウント。
メッセージは、一通。
『ねえ。どうして私を殺したの?』
「……誰だよ、こんなの送ったの」
玲央が声を荒らげた。
「アカウントを乗っ取ったんじゃないの?」
千紘はすぐに画面を操作した。
「無理。これ、私たちのグループに送られてる。でも、送信者のアカウントは……」
千紘の言葉が止まった。
「何だよ」
「このアカウント、三年前に削除されてる」
沈黙。
雨音だけが聞こえる。
そのとき。
俺のスマートフォンが、もう一度震えた。
個別メッセージだった。
送り主は、白瀬美月。
『湊くん』
『あの日、最後に私を見たのは、あなたでしょう?』
指先が冷たくなった。
思い出せない。
美月がいなくなった日のこと。
最後に会った相手。
最後に交わした言葉。
何一つ、思い出せない。
「湊。どうした?」
澪が覗き込もうとする。
俺は画面を伏せた。
「……何でもない」
「嘘。顔色が悪い」
「気のせいだ」
「三年前も、あなたはそう言った」
その言葉に、俺は顔を上げた。
「……何?」
澪は口を閉じた。
一瞬だけ。
本当に一瞬だけ。
彼女の表情が、恐怖に歪んだ。
「澪?」
「帰ろう」
「は?」
「今すぐ、ここを出るの」
澪は俺の腕を掴んだ。
「ここにいたら、また……」
その先は、聞こえなかった。
なぜなら。
二階から、足音がしたからだ。
一歩。
二歩。
三歩。
ゆっくりと、階段を下りてくる音。
俺たちは全員、動けなかった。
この校舎は、二階も含めて立ち入り禁止になっている。
管理人以外、誰もいないはずだった。
足音が止まった。
階段の踊り場。
暗闇の中に、人影が立っていた。
顔は見えない。
けれど、その人物がこちらを向いていることだけは分かった。
直人が震える声で言った。
「……そんなはず、ない」
人影が、一段下りた。
その瞬間。
俺のスマートフォンに、最後のメッセージが届いた。
『湊くん』
『今度は、ちゃんと六人で帰ろうね』
画面が暗くなる。
そして、階段の上から。
確かに聞こえた。
三年前に聞いた、美月の声が。
「みんな、久しぶり」
――第1話・終――
ここまで見てくれた人ありがとうございます!初投稿でしたがどうでしたか?!
お楽しみいただけたのなら嬉しいです!
10ハートで次の話も書いちゃおうかな??
ではバイチャ(o・・o)/
コメント
3件
おお……初投稿でこの没入感、すごくないですか? 第一話から不穏な空気と友情の間の“ずれ”が絶妙で、読んでいるこっちまで息をひそめました。特にラストの「みんな、久しぶり」の声――あれは心臓にきました。続きが気になりすぎます……! 10ハート、目指して応援してます🌷