たるしょがご飯食べてるだけです
それだけです、何もありません。
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「……先生ってさ、口小さいよね。」
「んむ……んっ、……そうだろうか。」
じっ、と机に置かれる食事を口にする彼の事を見つめながらそう口に出す。
此処は万民堂。いつもの香菱という優秀なシェフに料理を頼んでは、この彼と共に食事をする。
口が小さいからなんだ、って言う話だけど……やっぱり、口いっぱいに頬ばって食べる彼の姿がまるで小動物の様で可愛いからである。
……なんだか、彼が財布を毎回忘れてきても許せるくらいには可愛い。
「公子殿も冷めないうちに食べたらどうだ。」
「あぁ、そうさせてもらうよ。」
なんて言いながら、未だに慣れない箸へと手を伸ばす。ぎこちない持ち方、そしてまともに掴めない料理がぽとり、と落ちていく。
「なんだ、まだ使えていなかったのか。」
「なんだよ、スネージナヤじゃこんなの使わないし……!!」
「ははっ、公子殿には箸も買ってやっただろう?」
「はぁ……、俺の金で、でしょ。」
「あぁ、その通りだな。」
「開き直らないで欲しかったなそこは……。」
くすり、と笑みを浮かべながら自身を揶揄ってくる彼に苛立ちを覚えてしまうも、そんな彼もなんだか許せてしまう自分が居る。
「公子殿、そんな箸使いでは食事もままならないだろう。」
「……あのねぇ、俺だって使えないわけじゃないからね……、食べるけど。」
自身の箸を手に取り、手馴れた手つきで自身の落としてしまった料理を再度掴んでは自身の口元へと差し出し、笑みを浮かべながら待つ彼に溜息を吐くも、折角彼がしてくれるなら、という事で口元へと差し出された物を口へと運ぶ。
……いつも通りしっかり美味しい、美味しいけど……いつもより、なんだか少しだけ味わい深く感じた。……ゆっくりと、その味を噛み締め、そして飲み込む。
「どうだ、美味しいだろう?」
「んむ……美味しいよ。……でも、俺は鍾離先生の口の方が好きだな。」
ニコニコと笑みを浮かべたままそう問い掛けてくる彼に頷き、そして仕返しをしてやろうと言わんばかりにニヤリと口角を上げ、そう告げる。
「なっ……そういう事を言うのはよせ、恥ずかしくなるだろう……。」
「ん〜?でも先生、俺とのキス好きじゃんか。」
「〜〜っ…!!俺を揶揄うのも程々にしておくんだな……、」
「は〜い、それは鍾離先生も、でしょ?」
頬を赤く染め、自身から顔を逸らす彼に満足気に笑みを浮かべれば、再び箸を持ち、ぎこちない手付きなのは変わらなかったが、いつもよりかはなんだか……掴みやすい気がした。
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