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侵略者たち

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侵略者たち

29 - 026 皇族の護衛(2)

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2024年12月30日

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 戦闘に特化した宇宙人、下羅狗からく。 その反乱分子は、光太郎を連れて飛び降りた。


「待て!!」


 俺は慌てて飛び出し、奴の跡を追う。


「私たちも直ぐに向かわないと……!」


「でもここ二階ですよ……!?」


「大丈夫……! 少しの浮遊なら、この人数、私の魔法でなんとかできる……!」


 ゴォン!!


「残念だな〜、あの兄ちゃん……。外れクジだ……」


 背後からもう一人、巨大な壁を砕いて侵入する。


「お、お前も……もしかして……」


「俺か? 俺は千羅せんら、ただの構成員だ……。まあ、元下羅狗ってところは船長と一緒だけどな」


 先程の男よりも一回り大きな身体の男は、奴を”船長”と呼び、自分をただの構成員だと述べた。


「船長は戦う時、遊んじまうからな。あの男は運が悪い。苦痛の末に死ぬことになるだろう。それに引き換え、お前たちは運がいい。俺は優しいからな。痛みを与える間もなく……皆殺しにしてやる」


 ――


 子供一人を抱えた赤髪の男は、ぴょんぴょんと身柄に、飛び跳ねるように林の木々を駆けていた。

 俺も、なんとか見失わないよう跡を追う。


「おい……! 待てよ……!! 光太郎を返せ……!!」


 すると、こちらを一瞬振り返ると、ニコッと笑い、急に立ち止まった。


「なんだ、アイツ、一匹足止め出来なかったのか」


「何言ってんだ……! お前の目的はなんだよ……!」


「いやいや、見て分かるでしょ? 誘拐だよ。日本の皇族のガキが、取引に必要なんだって。まあ、俺はそう言うのよく分からないんだけどさ」


「よく分かってもいねぇのに……誘拐なんて……」


 動揺と驚愕、そんな心境で歯を強く噛んでいると、男は光太郎を寝かせ、屈伸を始めた。


「俺の名は湘烟しょうえん。まあ、ここだけの縁だと思うけど、自分が殺される男の名前くらいは知っておきたいだろ?」


 やっぱ……戦うしかねぇのか……。


「俺は、鯨井・LU・優。お前の言う通りかもな。残念ながら、誘拐は阻止され、上司に泣かされることになる。お前を負かす男の名だ……」


 そして、スッと刀を手に宿した。


 ――


 ガタイのいい男は、鎖鎌と大きなトゲトゲの玉を手に取ると、僕たち四人を見回した。


「ルリさん……行けますか……?」


「当たり前……一瞬で捕縛してやる……!」


「私たちも援護します……! UT変異体ではないですが、相応の訓練はしていますし、宇宙武装も特別に装備させて頂いているので……!」


 そして、佑希さん、佐久間さんも臨戦体制に入る。


 が、


 ゴッ!!


 次の瞬間、二人は壁に叩き付けられていた。


「なん……だ……今の速度……」


 あまりの人間離れした攻撃に唖然としていたが、すぐに我に返り、ルリさんを見つめた。


「ルリさん……! 早く拘束魔法を……!!」


 しかし、ルリさんの目付きはいつもと違っていた。


「に……逃げるぞ……。に、逃げるぞ!! 学!!」


「え!? ルリさん!?」


 そのまま、ルリさんは躊躇いもなく背を向け、走り出してしまった。

 その背を追うように、僕もその場から離脱する。


「そ、そんなに強敵なんですか……!? 異世界の魔法でも、どうにもならないんですか……!?」


「いや、魔法さえ使えれば、私の魔法の前に成す術もないだろう。でも、あの速度で攻撃が来るんじゃ、その魔法を唱える時間がないんだ……! 私は異世界では、四人ほどのパーティで、中衛か後衛で魔法を放っていた! こんな前衛も誰もいないのに、あんな強者を一人で相手するのは無理だ……!!」


 ブン!!


 しかし、あんな速度で鉄球を振り回せる巨体、逃げられるわけもなく、前の男が破壊した、唯一外に逃げられる壁の前に、激しい風圧と共に移動し、僕たちの逃げ道は塞がれてしまった。


「逃げることはねぇだろ〜? あながち、一番の外れクジは俺かも知れねぇんだから……。あ〜、やっぱ、船長の企みに乗るんじゃなかったな〜」


 男は、余裕綽々と身の丈話を話し続ける。

 僕たちは、次にどう動くべきか考え続け、汗を滲ませていた。


「死ぬ前に聞いてくれよ。今回の任務は、船長から『一匹も逃がさずに足止めしろ』って言われてたんだ。でも、これには落とし穴がある。ってのもな? 普段であれば、そんなことは当たり前だから、船長はそんな指示は出さないんだ。つまり、『一人も逃がすな』って指示を出すってことは、逆に『一人は戦いたいから逃がせ』ってことなんだよ。これに気付けるようになるには、長い時間、アイツの下にいなくちゃ分かんねぇよなぁ〜」


「へぇ……じゃあ、優のことはわざと逃したと……?」


「そうだ。でも、さっきも言った通り、あの兄ちゃんだけが後を追っちまった。あの戦闘狂の船長が、戦いたくてウズウズしてるんだろう。まあ、なんとなくだが……俺はそれ以上に、引っ掛かる点もあるんだがな……?」


 そして、ギロッと僕たちのことを睨み付ける。


「まあ、それもお前たちを殺してからだ。愚痴に付き合ってくれてありがとな」


 男が殺気を発した瞬間、ルリさんは杖を構える。


「長々と無駄話……ありがとな!! 髭面!!」

 ゴォッ!!!


 男が長話をしている間、魔力を溜め、密かに魔法の準備をしていたルリさんは、攻撃される間もなく唱える。

 男は光の輪に拘束され、首、腕、足と、何本もの輪に通されて身動きが取れなくなった。


「なんだこれ……? お前……地球人じゃないな。UT技術程度で、俺たちを止められるわけがねぇ……。ハァ〜、俺って奴は本当に、外れクジを引いちまったみたいだ……」


「何が目的なのか……白状してください……!」


 ルリさんが二人の治癒に向かう。僕のできることは、少しでも情報を聞き出すこと……。

 しかし、男は全身を拘束され、身動きが取れない中でもニタニタと笑みを浮かべていた。


「いいぜ。坊ちゃんは何が聞きたいのかな?」


「まず、下羅狗の脱走犯であるあなたたちが、どうして日本の皇族を誘拐したのか……です」


「そうだな。まずは、俺たちはもう、下羅狗の脱走犯ではない。宇宙で海賊を生業としている。泣く子も殺す、宇宙海賊『メテオロス』ってな。海賊は確かに、好きに暴れて好きに奪うイメージがあるかも知れねぇが、それだとこの業界で生きてはいけない。俺たちを使ってくれる連中……ズバ抜たの戦闘能力を誇る俺たちですら手を出すのをビビっちまう連中が、この宇宙にはいるのさ……」


「あなたたち宇宙海賊メテオロスに、今回、日本の皇族を誘拐しろと指示した人がいる、と言うことですか……?」


 すると男は、目を瞑ってまた、不敵に笑う。


「俺はやられちまった。だからもう知らねぇよ〜。あの大バカな船長が……何をしでかすのか……」


 ゴォ…………ドォン…………!!


 次の瞬間、誘拐犯と優さんの走って行った林に、天から巨大な光が降り注ぎ、次第に爆音が鳴り響いた。


「一体……何が……!?」


「ふっ……無知なお前らに教えてやろう。この宇宙にはいるんだよ……。”神”ってモンが……」


「神……? 天界人が統治する宇宙に……そんな馬鹿げた存在がいるわけ……」


 ――


「なんじゃ……? 湘烟……。ヌルい仕事をするように育てた覚えはないんじゃがな……」


「嫌だなぁ、旦那。だからこうして、指令通りのガキ連れて、宇宙船に戻ろうとしてたところなのに」


「儂の目からは、今からそこの剣士と一手交える……主の好きな余興を始めようとしていたように見えるが……?」


 突如、空から降ってきた老人は、光太郎を連れ去った男、湘烟と、何やら神妙に話をしている。

 会話の流れから、光太郎を連れ去る命令を出した上司のように見えるが……湘烟は苦い顔を浮かべるどころか、ニコニコと笑っていた。

「き、急に現れて……なんなんだよ!! み、味方の増援か……!?」


 俺の言葉に、老人はギロリと睨み付ける。

 その眼光を向けられただけで分かる……この老人は……とんでもなく強い……!!

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