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地球の真上に浮かぶ宇宙船。
そこに、一人の女が転送される。
「お呼びでしょうか?」
女は、男の顔を見た途端、普段の任務とは訳が違うことを悟り、少し身構える。
「今回は、君一人では大変……いや、死んでしまうことになるかも知れないね……」
「メテオロスですか?」
「いや……彼らをも足に使う……”神族”だよ」
その言葉に、女は目を鋭く尖らせた。
「場所は……?」
「地球……日本。アンダー・トーキョー……」
場所を聞き、女は目を見開いてスクッと立ち上がる。
「どうした……?」
「いえ……。-絶対防御-、迅速に向かいます」
――
突如現れた老人に、ニコリと微笑む湘烟と呼ばれた男は静かに、その老人へと歩み寄る。
「まさか、海賊である俺たちが、地球に用事があるなんて言われた時でさえ驚いたのに、目標がこんなに小さな島国だなんて、見据える世界が小さくなりましたね」
湘烟の言葉に、ギロリと老人は再び目を凝らした。
「それに、任務内容は子供の誘拐と来た……。地球人と交戦になるのなんて、俺たちからすれば蟻にも等しいようなものなのに。ってことは、バアル様はこの蟻たちと同様な存在ってことになるんですかね?」
「小童が……減らず口も大概にしておけよ……」
「神だなんだと恐れられても、結局は銀河系の塵に過ぎないってことですよね。ほら、こんな小童の戯言に、あなたは今、ご機嫌斜めになってしまわれた」
ズッ…………ゴォン!!!
次の瞬間、湘烟に向かって前方の山が消し飛んだ。
俺は見ていた。
あの老人は、腕を振っただけだった。
「象が暴れないでくださいよ。地球とも何か取引がしたくてこの子供を攫うんでしょ? なら、生態系破壊はあまりオススメできません」
湘烟は、いつの間にか老人の背後に避けており、ニタリとした表情を変えることもなく、話を続けた。
なんの話をしているのか、そんなことを問う余裕は、この天災のような局面を見れば分かる。
光太郎を救い出す……? 出来るのか……?
そもそも俺は……こんなところから逃げられるのか。
「さあ、殺してみてくださいよ。俺と言う塵も……」
ゴッ…………!!
湘烟の言葉を幕切りに、互いの拳がぶつかり合う。
その衝撃だけで、暴風が巻き起こり、周囲の木々の数本は折れて吹き飛んだ。
湘烟の拳から血飛沫が噴き出すが、ペロリと舐めると、再びニコリと笑みを浮かべた。
「神と呼ばれても、老衰には敵いませんか? 昔のあなたであれば、俺の腕なんて吹き飛ばしていたでしょうに」
「世話をしてやった道具だからだ。儂は、道具は大切に扱うようにしていてな」
ヤバイヤバイヤバイヤバイ……!!
こんなところ、一秒でも早く逃げ出したいのに……俺が動いて標的にされたら……死ぬ……!
そんな緊張感の中、再び天から光が降り注ぐ。
「ちと……暴れ過ぎたか……」
「お前は……!!」
光と共に天から降りて来たのは、以前、初めて鮫島・A・司と対面した際に出会した、元魔王の部下であり、四天王だった異世界人、-絶対防御-だった。
「優様!! ご無事ですか!!」
「対UT特務班……宇宙の王の手下か」
-絶対防御-の登場に、二人の戦いは止まった。
「ふふ……対UT特務班のNo.2と言っても、防御しか脳のない子供だ。今の俺には脅威じゃないよ」
「なら、目の前で潰してみせろ。それが成せるのであれば、先の無礼は水に流してやる」
「それじゃあつまらない。コイツを潰したら、俺の次の獲物はアンタだ……バアル様……」
「ふん、減らず口を。精々、天界人の手先にむざむざとやられなければ良いがな」
そして、湘烟はこちらへ戦闘態勢を向ける。
「おい……助けに来てくれたのはいいけど、敵意がこっちに向いちまったじゃねぇか……! せっかく、身内同士でやり合っててくれたのに……!!」
しかし、-絶対防御-はチラリと俺を覗き見る。
「では……いいのですか? あの二人が本気でやり合えば地球は半壊する……。いや……あの老人が本気を出せば、地球なんて小さな惑星……そのまま破壊されます」
「そ……そんな……。そんなの……フリーザ様の領域じゃねぇか……!!」
「いえ、フリーザ様はあの少年の方……。あの老人をドラ○ンボールで例えるなら、破壊神ビルスです」
「アイツすら……地球破壊レベル……。もし、ドラ○ンボールで例えるなら、俺はどの辺なんだ……?」
「今の優様の実力であれば……ピッコロさんでしょうか。仲間の中では上位に君臨しますが、スーパーサイヤ人には及びません。ですので、彼らには勝てません」
ズァッ…………!!
話している内にも、ニタっと笑う湘烟は駆け出す。
「さあ、そろそろ始めようか……!! -絶対防御-!!」
-絶対防御-はグッと構えると、周囲に黒い円球を浮かべさせる。これは、小さなブラックホールだ。
こんな状況なのに……アイツの目に俺は映っていない。
なんなんだ……この気持ちは……。
怖いはずなのに……気持ちがザワザワと……。
震え上がる ――――――――!!
ゴゥッ!!
その瞬間、俺の中から溢れんばかりの感情とエネルギーが放出されるのが分かった。
俺の魔力を掻き消す刀が手元にない。
力の放出が…………抑えられない…………!!
「優様…………!!」
「なあ、-絶対防御-……。俺は紛れもなく、異世界人であり、魔王の息子なんだよな……。っつーことは…………今俺を包んでるこの力は……魔王の力か…………?」
どうした…………この気持ちの落ち着きは。
「そうです。あなたは今、身体が蒼炎に包まれ、肉体が少しずつ変化し掛けています…………」
-絶対防御-の声が、隣にいるのに、遠くに聞こえる。
耳鳴り…………? いや、塞がれてる。
「うわっ! なんだコイツ! 面白え!!」
「あの力の感じ……-絶対防御-と同じ……」
老人が何かを呟く。
しかし、そんなものどうでもいい。
湘烟の向く先は、明らかに俺の方向に向けられる。
目の前にいるのは…………獲物…………!!
ゴッ…………!!
湘烟のさっきのような強力な拳が繰り出される。
俺の拳が、湘烟の拳と交わる。
普段であれば、あんな力……身体ごと壊される。
でも、今の俺なら張り合える…………!!
「なんだコイツ……拳との間に……炎…………?」
ボゥッ…………!!
そしてそのまま、蒼炎を放出させる。
「炎じゃねぇさ…………。魔王の焔だ…………!!」
俺の覚醒に合わせて、-絶対防御-は手慣れたように背後に周り、ブラックホールを撒き散らす。
しかし、
ゴァッ…………!!
「ちょっと……邪魔しないでよ、お爺ちゃん。目の前に急に現れちゃったら、ぶっ殺しちゃうじゃん」
突如、俺たちと湘烟の間に現れたのは、老人。
先程のように腕を振るうと、瞬時に俺の炎と、-絶対防御-のブラックホールを掻き消した。
「湘烟、お前の興に乗ってやった甲斐があった……。お前たち……”異世界の住人”だな……? それも、相当の力を持っている者たちだ……」
「へぇ、異世界からの侵略者……。いいこと聞いたな」
「お前は下がっていろ。異世界人は、儂の獲物じゃ」
先程までの湘烟であれば、素直に言うことを聞くとは思えないが、その殺気からか、素直に身を引き、再び光太郎を抱えた。
「異世界人VS神様……面白そう……」
そう最後に呟くと、ペロリと舌を出した。
「先に伝えておこう。-絶対防御-は儂のことを知っておるな? 儂は、神族と呼ばれる、地球では、神話上に存在する者だ。邪神バアル……落胆させてくれるなよ……?」
そう言うと、湘烟と拳を交えた時には見せなかった戦闘態勢の構えを取った。
――
◇味方陣営
鯨井・LU・優(元異世界の魔王の息子)
ルリアール=スコート(異世界の自称最強の魔法使い)
佐藤 学(新米技術者)
-絶対防御-(元異世界の魔王軍四天王の一人、現在は天界人の懐刀『対UT特務班 No.2』)
光太郎(日本の皇族)
佑希(光太郎のSP)
佐久間(光太郎のSP)
◆敵陣営
邪神バアル(地球の神話上の存在。神族)
湘烟(宇宙最強の戦闘種族『下羅狗』から脱走し、宇宙海賊『メテオロス』の船長となる)
千羅(湘烟と同上。メテオロスの副船長。現在はルリアールの魔法により拘束されている)