テラーノベル
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――広睦くんは同い年くらいの友達と一緒だった。
広睦くんには広睦くんの世界があって……。私がいなくても楽しくやっている。
ああ、若いな、若い。私のいるフィールドと全然違う。これ前も思ったっけ、前も思って落ち込んでそれでもまだ一緒にいたんだ、私……。バカだな。一目瞭然なのに。
声……かけない方がいいよね。
久しぶりに感じる広睦くんの姿を見ておきたくて向こうに気づかれないように少し近づいた。かっこいいんだよなぁ。別れると決めてから妙に感傷的でちょっとしたことも覚えていたくなる。出会った頃からの思い出を回想することも多くなった。
私の方を向かない広睦くんは他人だった頃のようで、電車で見かけるだけだった時の彼と重なる。大人っぽい……かな。もう大学生にしか見えないけど。髪が伸びたな。染めないのね。今時の子は染めないのかな。周りの子も見ても髪を染めてる子はいなかった。パーマは当ててるし真面目……とは違うから今のトレンドは黒髪なのかしら……。私の時は、ほとんど染めてたなぁ。そんなことを思いながら見つめていた。
ポケットに無造作に入れられた手、時々出しては顔にかかった髪を避ける。
大学生くらいの男の子の団体って、特に彼は気後れするくらい見た目が素敵だから近寄りがたく感じる。ちょっと不敵なイケイケ感があって怖く感じる。けど……誰とも知れない私の忘れ物をベンチで待ってくれてたっけ。結局彼は覚えていなかったけど。
「……………………いや。俺、彼女いるからこの後は合流しない」
先の会話は聞こえなかったけど、広睦くんの口から『彼女』という言葉が出てきて耳をそばだててしまった。私の話題だ――。
「え、いいんじゃないの。彼女年上だろ、気にする? 」
「俺が気にするんだよ、今失敗できない」
俺が気にするという言葉は嬉しかったけど『失敗』って……?
盗み聞きなんてよくないのはわかっていて早くいかなきゃならないのに動けないでいた。今更彼が私をどう思っているのか知りたいだなんて……。
「なに、彼女年上? 七瀬って結構その辺真面目なんだ」
事情知らないだろう子が口を挟む。
「違うって、こいつ30超えてるくらいのすっげ年上と付き合ってんの」
「え、マジで。ばばぁ……や、悪い。熟女好き? みたいな」
微妙に傷ついたけどこの子たちから見ると事実で、その反応には慣れたものだった。
「いやいやそうじゃなく。こいつ悪いんだって。復讐だってよ、復讐」
ドクンと心臓が嫌な音を立てる。
「復讐? なんだよ。熟女に村でも焼かれたんか」
「はははは! そうかもな、そう。今の彼女に前の彼女と同じ理由で振られそうになったから、イラァってきて惚れるだけ惚れさせて婚期逃させて捨てるっつー復讐中らしい」
「はあ、マジ? 」
「……まあ、だいたい」
広睦くんは抑揚なく言った。
「やばいな、お前」
「そうヤバいんだよ、俺」
広睦くんは吐き捨てるようにそう言う。
「で、うまくいくのか、そんなの」
その問いかけには肩をすくめてみせた。
「とにかく、俺は彼女最優先なんで帰るわ」
そう言って広睦くんは身体を翻し、私の方を向いた。
目の前に歩み出た私の前に。
後ろの二人が、誰?と呟き、やばと言って目を逸らすとゆっくりその場から離れていった。
広睦くんは私を見ると驚くでも焦るでもなく何も映さないような瞳で私を見ていた。
「怒らないんですか」
「言い訳はしないのね? 」
私が問うとスッと私の横をすり抜けて行った。
「ありませんよ。言い訳なんて」
私だって、怒れない。怒る理由がなかった。
それに……何だろう。ショックだとか騙されたという気持ちが不思議と湧いてこなかった。始まりから今まで思い返すと、どこかで“やっぱり”という気持ちがあった。
――――振るのは私じゃなかった、終わるという結果は同じなのだからどちらでもいいだろう。むしろこっちのほうが良かったとすら思っている。
コメント
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みぅ🤍🥀です。 第9話-5、読みました……これはまた、重い展開が来ましたね。 広睦くんの「復讐」宣言、ぞっとしました。でも主人公が「怒れない」「やっぱり」って思う気持ち、すごくリアルで胸に刺さりました。ずっとどこかで気づいてたんだろうな……って。 彼女の諦めにも似た静かな受け入れ方が、逆に痛々しくて。この先、どうするんだろう。二人の間に本当の終わりが来るのか、それとも何か変わるのか……続きが気になります。 最後の“振るのは私じゃなかった”って一文、じんわり染みました。 素敵な作品をありがとうございます🌙
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瑠璃🍫✨💭ྀི
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