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瑠璃🍫✨💭ྀི
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――私は広睦くんと別れたあとどうするか自分で考えてた通り仕事に集中した。
橘さんには広睦くんとのことを聞かれた時に別れたことだけ伝えた。待つと言った橘さんを選ぶことは逃げることになる気がして、結局私には無理だった。橘さんは私の気持ちを尊重し、淡々と仕事の関わりと、時々息抜きに食事に連れて行ってくれた。
仕事があるから倒れずにいられる。やっぱり恋愛一辺倒は良くないな。そう思い返して満足したもののすぐにはっとした。広睦くんとのことは元々恋愛と言うより広睦くんが納得するための期間で、いつの間にか三脚の一辺になったんだよなぁ。
広睦くんの復讐とやらはわたしにじわじわ効いていて、婚期を逃すのはいただけないけど、逃してしまうかもしれないくらい沼にはまってしまっていた。どっぷりとはまっていた、そう自覚したのは無くした瞬間だ。
やっぱり恋愛は頭でするものじゃない。婚活だって割り切らなきゃならないのにいつまでも心が邪魔をする。
広睦くんのことは悲しいけど、なんかすっきり…………でもないけど、恨む気持ちもなく、かと言って引きずっているわけでもない不思議な感覚だ。
卒業式を終えてもまだ普通に登校しちゃいそうな感覚。もう卒業してここの生徒じゃないのに、みたいな?
「何を……言ってるんだろう」
ぼーっと部屋の窓から空を見ると、小さな飛行機が雲の筋を作るのが見えた。
元気でやってるのかな、海外はどうだったかな。今度お土産話を聞かせてもら……ああ、もう会えないんだっけ。もう会えないのが不思議な気分だ。
頭がぼーっとする。
休みの日はずっとこうやって部屋で過ごしていた。まどろみの中で夢なのか、現実なのか。暑さのせいかな。
あんな青空なのに、また急な雨になるかもしれない。いいか、どうせ出かける用事は無いのだから――……。
――季節は夏が終わり秋に変わっていた。
今年の夏も暑かったねと人は口々に言うけど私はこの夏を見送っていた。
取り組んでいたプロジェクトの区切りがついた。誰かの案が採用されたのではなく、色合いやデザインやそれぞれの案が採用され微調整して決定した。
沸き立つ気持ちで販促へと回した。SNSでは意味深にデザインのリニューアルを告知し、この冬店頭に並ぶ。
やり切った、そう思っているのは私だけでなく、参加したメンバーも、もちろん橘さんもだ。
「打ち上げ」
「はい」
販売後、会社として立食パーティーがホテルであるらしいけど一先ずメンバーで飲もうかという話になった。
「我が子が進級する時の気持ち。新しい学校でやっていけるのかな、あの子」
「大丈夫よ、私の子だもの」
「そうだよ、あんなにしっかり育てたんだ」
何人かが乗って笑い声が起きた。
「いや、ほんと発売まで胃が痛いっすわ」
「わかる。ずっと緊張してる」
「達成感半端ないね」
「ほんと、多分今までの仕事で一番大きな案件だった」
一通り心境を分かち合ってお互いの頑張りを称えた。
黙って聞き役に徹していた橘さんがいつの間にか横に座っていた。
「東谷もお疲れ」
「あ、いえ。橘さんも、お疲れ様です」
「……元気か? 」
「まぁ、それなりに? 」
「はは、なんだそれ。」
私を心配してくれたのだろう。
「少しづつ、前を向いて歩く……つもりです」
「おー? 」
橘さんはほんとかよ、と言わんばかりに片眉を上げた。
「仕事があって良かったです。しかもいい結果だせて」
「まだ反応これからだけど。認知してかなきゃなあ」
「そうですけど、大丈夫だと思ってます。私は」
「俺も大丈夫だと思ってるよ。お前は」
「え、私? 」
橘さんはふっと笑って私の頭を軽く撫でると、また他の人たちに合流していった。
打ち上げは一次会で終わり解散となった。
温い風はいつの間にか少しひんやりと感じるようになっていた。
橘さんが一人反対方向だった私を送ってくれた。並んで歩く安心感と居心地の良さ、知らず笑顔になってしまう。
「あ、ここで」
「おー、いいのか、駅じゃなくて」
「はい。人通りも多いですし、お疲れ様でした」
「ん」
橘さんが歩いていくのを少し見送って私も歩き出す。少し、夜風に当たりたかった。仕事で満たしていた頭の中に空きが出来てしまったから。
カツ、カツと自分の歩く音がする。ここの石畳、こけないようにしないと。そんなに酔ってないけど、こけたら痛そうだ。今日は絆創膏持ってるけど。それで思い出した、そうだ、ここ結婚式の二次会後に靴擦れが出来て休んだベンチだ。あの時若い男性が親切に絆創膏をくれて、それから絆創膏を持ち歩くことに……。
ベンチを目の前に、ああ、と思う。
ここで広睦くんと初めて喋ったんだ。
一人そのベンチに腰掛ける。今日はあの日みたいに荷物は多くないし、着飾ってもいない。
何より、広睦くんがいない。“あの頃は名前も知らないかっこいい人”だったけど。そう思ってクスリと笑った。そんな何年も経ったわけじゃないのにすでに懐かしい。でもつい昨日の事のようにも感じる。言いようのない変な感情がまた襲って来た。
「あの、横いいですか」
不意に誰かに声をかけられ、人が近づいてきたことにも気づかなかった私は飛び上がってしまった。隣って……何で?他のベンチも空いてるのに。
恐る恐る顔を上げる。大丈夫人通りは多いしいざとなれば走って……。
「言い訳をね、聞いてもらいたくて」
そこには少し大人びた広睦くんの顔があった。ヒッと叫びかけた口を両手で覆った。
コメント
1件
えっ!?急展開すぎて心臓止まるかと思った笑 主人公が仕事に打ち込んで少しずつ前に進もうとしてるところに、まさか広睦くんが突然現れるとは…「言い訳を聞いてもらいたくて」ってセリフがめちゃくちゃ刺さった。ベンチで一人回想してる描写が切なくて、ここで再会するのも運命感じちゃうな。続きが気になりすぎる🔥