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「そんな、校舎が…」
猫百合イッサが目の前の瓦礫の山に向かって呟く。
「さっきまで俺達が走ってた所が…巻き込まれるところだった。」
冷や汗が頬を伝う。一歩遅れていれば今頃瓦礫の下だっただろう。
「それより、上にいたはずのいぬいぬこ達は?無事なのか?」
「……いぬいぬこ!11!」
イッサは声を張り上げながら、瓦礫の山を必死に見上げた。その瞳には不安と焦りが交錯している。
「おい!返事しろよ!」
まんじゅうも加勢するが、返答はない。
鼬が鋭い声で冷静に状況を分析する。
「音からして、上階が完全に崩れたのは間違いない。いぬいぬこたちは巻き込まれた可能性が高い。だが、諦めるのはまだ早い。」
鼬の言葉に、イッサは小さく頷く。
「そうね……探さないと。瓦礫の隙間を見て、声が聞こえるか確認するわ!」
「俺も手伝う!でも異形がまた来るかもしれねぇ、注意しないと!」
まんじゅうが双剣を構え、警戒を怠らないよう周囲を見回す。
「ッあれは!!??」
その視線の先には、明らかに他の異形よりも大きく甲殻をまとった獣。
まんじゅうは一瞬で理解してしまった。
「勝てない。無理だろ、これ…」
しかしイッサも鼬もいぬいぬこと 11 を探すのに気を取られ気づいていない。
「—サマ…イッサ様!」
瓦礫の中から 11 の声が聞こえた。
「 11 ちゃん!?どこ!?無事なの!?」
気づいたイッサはすぐに瓦礫に駆け寄り、声がした方向に耳を澄ました。
「私は稼働に問題ありませんが瓦礫で動けません。その上いぬいぬこ様が負傷して気を失っています。」
どうやら 11 が咄嗟に庇ったものの、いぬいぬこは衝撃で気を失ってしまったようだ。
そして、動こうにも瓦礫に阻まれ、無理やりパワーで脱出するにしても生身のいぬいぬこが問題になる。
「待っててすぐにそこから…」
イッサが瓦礫を錬金しようと手を伸ばしたその時、
「危ない!!!!」
大型の異形が拳を振り下ろしていた。
ドガンッ
まんじゅうと鼬が咄嗟にイッサを持ち上げ回避した。だが衝撃波で吹き飛ばされてしまった。
「痛た…ありがとうまんじゅうさん鼬さん。助かったよ」
「大丈夫ですよ、それよりいぬいぬこ達はあの下に居たんじゃ…」
最悪のビジョンが脳を過る。
「なっそんなー」
土煙が晴れた頃には、ただ一つ鎮座する大型異形と、その攻撃によって生じたクレーターの端に…
「いぬいぬこ! 11 !!」
左腕を欠損しながらもいぬいぬこを守るように立っている 11 、頭から血を流したいぬいぬこ。
「損傷甚大、活動継続に支障あり…戦闘、可能ー」
11 が右腕で大斧を持ち異形へ斬りかかる、しかし硬い甲殻に阻まれ有効打を与えられない。
片腕だけではパワーが足りない。
「おい!いぬいぬこしっかりしろ!!」
「これを!」
イッサが懐から一本の試験管を取り出しいぬいぬこにぶっかける。
「ブフォッ!ゲホッゲホッ…う、何が?起きた?」
液体が気管に入って咽ながら意識を取り戻した。傷も塞がっている。
「よし、治癒薬は完璧ね!でも…」
朦朧とした意識の中で目を見開き、周囲の状況を把握し始める。
「……なんだ、これ……あのデカいのが……」
視線の先には、巨大な甲殻を持つ異形が威圧感を放ちながら11に向かって攻撃を繰り出していた。片腕しか使えない11はそれを必死にかわしながらも、攻撃はことごとく通じていない。
鼬も長槍を持って応戦しているが、異形の攻撃力になかなか近づけずにいる。
「お前、動けるか!?状況はヤバい!めっちゃヤバい!」
まんじゅうが駆け寄りながら叫ぶが、いぬいぬこは顔を歪めながらも立ち上がる。
「それでも、なんとかしないと…作戦を考える。一旦引こう!鼬も! 11 も!」
「わかった!」
「了解。」
イッサが足元に煙幕弾をなげ、その隙に全員本校舎横の体育館へ退散した。