テラーノベル
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「じゃあなチーノ」
「おう、また明日なショッピ!」
そのまま元気よく手を振るチーノを見送った後、俺は重い足取りで自転車に乗った。
なんせ今日は猛暑日なのだ。蝉のジュワジュワという音がより暑く感じさせる。
日が沈む頃には涼しくなると天気予報で言っていたから、この格好で来たというのにこんなに暑いなんて長袖の袖を引きちぎりたいくらいだ。
猛暑日なんてまだ早いと思っていた自分に言っておきたい半袖にしておけと、さすがに腕をまくるのにも限界がある。
でも、肩にクッキリと日焼けの跡が出来なくてよかった気もする。
そう思うことにしよう、だってプールに入る時に跡がついていたらダサいからだ自分だけが思っているかもしれないけど。
いつものように坂を登りたい、が今日だけは気が乗らない。全体重をかけてペダルを踏み込むと一踏み一踏みが強く感じる。サドルから少し立ち上がって前屈みになって進んでみるが変わらずじまいで。
後方を見てみるが全く進んでいない、数百メートル程進んだ気がしたんだけども今日はいつもよりも登る時間が長くなりそうだ。
全く進まない自転車に少々イラっときたがいつのまにか追い風が吹く。背中に当たる風が先刻感じていた暑さを吹き飛ばすほど涼しい
爽快な気分であっという間に坂を登り切りすっかり上機嫌になって、公園の方面へ向かう。
公園というかただ一つポツンとベンチがある土地、どうやって遊んでたんだっけ。人が来ることは滅多にない、自分もかなり前に行った切りで久しぶりだがここは全く変わっていない。
さびれた自動販売機がなんだか風情があって俺は好きだ‥‥ん?
向こうに人影が見えた気がする、ベンチに座っている状態の人。
俺はいつの間にか様子を窺っていたらしい、啜り泣きと嗚咽が聞こえて身が竦む。
チーノ!?
思わず声が出てしまった気がするが気付かれてない様でそっと胸を撫で下ろした。
あいつの家は真反対にあるのだからまず此処に来ないはずなんだが。…本当になんで?
少し考えた後慰めようと自販機でスポドリを買う、もしチーノじゃなくてただの知らない人だったらどうする。あいついつも水色とオレンジの服ばかり着てるからその色がチーノに見えてるのかもしれない、それだったらちょっと不本意だ。
「ぐすっ…うぇぇっん…ぅぅ‥ひっ」
いや絶対チーノだ。あの啜り泣き、号泣の方がぴったりくるか。
声を掛けてやりたいが小っ恥ずかしいので無言でチーノの目の前にスポドリをもってくる。すると徐々に顔があがっていき俺と目が合った、目を見開き口をあんぐりと開けるチーノはなんだか言葉にできない様な面白さだ。
「しょっ、しょっぴぃ、よがったぁあ゛うぐっ、っ『とんとん』、がっごうにぃいたんだっ、、ぐずっほんどにもぉあえないがど思ってでぇ、うっ、」
気がついた瞬間抱きついてわんわんと喚き泣き始めた、こういうところ年下に見えるけど俺の方が一歳年下なんだよなぁ、
でも『とんとん』というのは誰だろう、友達か?学校にいると言っていたけれどそんな名前聞いたことないこんなに泣くほどなのだ生き別れの兄弟なのかもしれない、
うんうんと唸っていると落ち着いたのか少し泣き止んで目を強く擦っているチーノに聞いてみる。
「『とんとん』ってうちの学校にいる友達なん?」
すると俺の目を真っ直ぐ突き刺す様な鋭い眼差しでこっちを一瞬見た後、哀しみの色を浮かべる。
あまり聞かれたくない話だったのかもしれない。
今は緩くなっているスポドリが目につく、この居心地の悪くなった雰囲気をなんとかしたくてもう一度目の前に差し出すと今度は受け取り小さくありがとうと言って、ゴクゴクと音がなるほど一気に飲み干した。あんなに泣き続けていたのだから当然だ。
何分経ったか、少し考える素振りを見せた後気持ちの整理がついたのかついていないのかすくっと立ち上がり、もう帰るわと笑顔で言ってきた。
俺に『とんとん』ってやつを説明してくれないのか…親友じゃないか、とやるせない気持ちになった。
うるさい音が頭の中で響渡るきっとこれは蝉の音のせいじゃない。
コメント
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ふうたさん、第1話「ことのはじまり」読み終えたよ〜!🌸 猛暑の中の自転車の重さとか、蝉の音とか、めっちゃ情景が浮かぶ…! 主人公がチーノの泣き声に気づいて、無言でスポドリ差し出すところ、優しすぎて泣ける😭💕 「とんとん」って誰なんだろ…チーノのあの反応、絶対何かあるよね…気になりすぎて続きが待ちきれないっ! 親友としてのやるせなさも伝わってきて切なかった…次話も楽しみにしてるよ〜!⋆♡