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小説本文(スライム討伐編)
こうして受けた正式依頼――「初心者向けスライム討伐」。
街外れの草原に、りもこんとふうはやは再び立っていた。
「ついにきたな……勇者りもこんの本領発揮だ!」
「キャベツじゃなくてスライム相手だからな。今度は食べる勝負じゃないぞ」
『キャベツ討伐RTAから本編へw』
『いよいよスライムwww』
『勇者、胃袋以外でも勝てるか?』
足元でぷるんと跳ねる青いスライム。
一見かわいらしいが、依頼票には「近隣農地を荒らす害獣」としっかり書かれている。
「よし! くらえ、勇者ソード!!」
りもこんが勢いよく剣を振り下ろす――が。
ブヨンッ。
スライムは柔らかく弾んで剣を受け流した。
「えっ!? 無効化された!?」
「いや、お前の剣筋が軽すぎるだけだ」
『wwwww』
『キャベツ丸呑みの腕力じゃなぁ』
『ゼリーに負ける勇者』
追撃しようとしたその時――りもこんの足がキャベツの残骸(昨日の置き土産)に滑った。
「うわっ!? ま、またキャベツ!?!?」
体勢を崩し、偶然振り回した剣が――スライムの核心を真っ二つに断ち割った。
ピシィィンッ!
光の粒が弾け、討伐完了のエフェクトが広がる。
「や、やったぁぁ!! 俺の勇者パワー炸裂!!」
「……ただ転んだだけだろ」
『運+15の奇跡wwww』
『勇者の天敵=キャベツ(でも勝因もキャベツ)』
『滑って勝つの草』
こうして――“キャベツ王者にしてスライムスレイヤー”の勇者りもこんが、伝説(?)の一歩を踏み出したのであった。
小説本文(スライム討伐編・改)
草原の真ん中。ぷるんと光るスライムが一匹、こちらをにらんでいた。
りもこんは剣を構え、ふうはやは一歩引いて様子をうかがう。
「ふふふ……キャベツを制した俺に、もはや敵はいない!」
「キャベツは敵じゃなくて野菜だろ……」
りもこんが勢いよく斬りかかる――が、剣先はスライムに弾かれ、逆にバランスを崩してドシャァッと転倒。
その衝撃でポーチから昨日のキャベツの切れ端がぽとりと落ちる。
スライムはぷるんと震え、そのままキャベツを吸い込んだ。
……が、すぐに体全体がぶるぶる痙攣し、ぷすぅ、と音を立てて萎びていく。
「……えっ、今ので倒せた!?」
「お、おい……お前の必殺技、キャベツ落としなのか……?」
残骸を見下ろし、りもこんは胸を張った。
「これぞ勇者の奥義――キャベツスラッシュ!!」
「落としただけだろ!!」
こうして、初めての討伐クエストは奇跡的に成功した。
ギルドに帰還
「討伐、確かに確認しました……」
受付嬢は依頼票を確認しつつ、深々とため息をついた。
「まさか、スライムがキャベツで倒されるとは……」
「ははっ! 俺にかかれば朝飯前だな!」
「朝飯食べてたのスライムの方なんだよなぁ……」
周囲の冒険者たちがざわつく。
『またキャベツwww』
『戦闘スキル皆無、胃袋スキルだけカンスト』
『勇者の必殺技:農作物依存』
ギルド中に笑いが響き渡る中、受付嬢は無表情で次の依頼票を突きつけた。
「……では次。ゴブリン討伐です」
りもこんは拳を握りしめ、叫んだ。
「よし! 今度は野菜じゃなく剣で勝ってやる!」
ふうはやは頭を抱えながら呟く。
「(……ほんとに大丈夫か、この勇者)」
ゴブリン討伐編
森の奥から現れたのは、小型のゴブリン三匹。
牙をむき出しにして襲いかかってくる。
「うおっ!? 剣が効かねぇ……!」
りもこんは最初の一撃を弾かれ、体勢を崩す。
ふうはやが慌てて叫んだ。
「りもこん、集中しろ! キャベツじゃなくて敵を見ろ!」
息を整え、剣を構え直す。
ゴブリンが飛びかかってきた瞬間――。
「必殺……キャベツ斬りぃぃぃ!!」
振り下ろした一撃がゴブリンを真正面から捉え、見事に叩き伏せた。
「おおっ!? 本当に斬れた……!?」
「お前、初めてまともに勝ったな……でも名前がキャベツなんだよ……!」
残りのゴブリンは慌てて逃げていき、戦闘終了。
りもこんは剣を高々と掲げた。
「見たか! これぞ勇者の必殺技、キャベツ斬りだ!!」
「いやだからキャベツから離れろって!!」
ギルド帰還
「……討伐確認しました。おめでとうございます」
受付嬢は依頼票に判を押しながら、抑えた笑みを漏らした。
『勇者、ついにまともに斬った!』
『キャベツ卒業……いや名前に残ってるw』
『農業系勇者、成長イベント突入』
冒険者たちも爆笑しつつ、どこかで少しだけ「おお、やるじゃん」と拍手を送った。
コメント
2件
きゃべつwww きゃべつから離れろよ!w