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第7話 〚夕焼けと、味方たち〛
放課後の校門前。
白雪澪は、えま・しおり・みさと と並んで歩いていた。
夕方の風が、少しだけ涼しい。
「……ねえ」
最初に口を開いたのは、みさとだった。
「今日さ、委員会決めのとき」
「澪のこと、なんか言ってた人たちいたよね?」
澪は、歩く足を止めそうになって、
でも何も言わなかった。
しおりが、眼鏡の奥で眉をひそめる。
「“澪なんか出来ないでしょ”って」
「聞こえてた」
「ほんとそれ!」
えまが、急に声を荒げる。
「何様だよって話なんだけど!」
拳を握りしめるえまの雰囲気が、
一気に変わる。
――ヤンキーモード。
「勉強できない=何もできないって思ってるのが無理」
「委員会はテストじゃないんだけど?」
「てかさ」
みさとが腕を組む。
「自分たち、何もしないで人のこと言ってるのが一番ダサい」
澪は、胸がきゅっとなった。
(……ごめん)
自分のせいで、
大切な人たちが怒っている。
「……みんな」
澪が、静かに口を開く。
三人が振り向く。
「私、大丈夫だから」
えまが、すぐに言い返す。
「大丈夫じゃないでしょ!」
「澪が優しすぎるだけ!」
しおりも、少し強めに言う。
「怒っていい場面」
みさとが、ため息をついた。
「もうさ、ムカつきすぎて甘いもの欲しい」
その瞬間。
澪の中で、
ある考えが浮かんだ。
「……コンビニ、寄りませんか?」
三人が、同時に澪を見る。
「アイス、奢ります」
澪は、少しだけ笑った。
「いっぱい」
一瞬の沈黙のあと。
「……行く」
えまが即答した。
「澪、神」
みさとが言う。
「理にかなってる」
しおりも頷いた。
コンビニの冷凍ケースの前。
四人は、思い思いのアイスを選ぶ。
「これ絶対おいしい」
「え、そっち選ぶ?」
「澪、それ渋すぎない?」
笑い声が、少しずつ戻ってくる。
そのまま、
近くの海まで歩いた。
夕焼けが、水面に反射している。
波の音が、一定のリズムで続く。
防波堤に座って、
アイスを食べながら、
誰もすぐには喋らなかった。
やがて、えまが言う。
「……ごめん、キレすぎた」
「いや、分かる」
みさとが笑う。
「感情の発露として正当」
しおりが真面目に言って、
三人が吹き出す。
澪は、その様子を見て、胸が温かくなった。
「……ありがとう」
小さな声。
「私のことで、怒ってくれて」
えまが、澪の肩に腕を回す。
「当たり前でしょ」
「澪は、私たちの仲間なんだから」
しおりも、静かに言う。
「一人で抱えないで」
みさとが、にっと笑う。
「三軍なめんなよ?」
夕焼けの中で、
澪は思う。
――未来が見えなくても。
――この時間は、確かに本物だ。
予知じゃない。
妄想でもない。
ここにいるのは、
自分を守ってくれる人たち。
波の音に包まれながら、
澪は、初めて心から笑った。