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第8話 〚ひとり、置いていかれる〛
りあは、あのときを「勝ち」だと思っていた。
前期委員会を決める日。
白雪澪が、小さく手を挙げた瞬間。
(……は?)
周りの視線。
ひそひそ声。
澪が、少し俯いたのを、りあは見逃さなかった。
(落ち込んでる)
その事実が、妙に心地よかった。
(やっぱりね)
(高嶺の花ぶってても、所詮あの程度)
りあは、委員会に入らなかった。
でも、それでいいと思っていた。
委員会なんて、地味。
やらなくても、クラスの中心は自分。
――そう信じていた。
「白雪さん、委員会できるの?」
誰かが言った言葉に、
りあは心の中で頷いた。
(できるわけないじゃん)
だから。
橘海翔が、手を挙げたとき。
「じゃあ、俺も入ります」
その声を聞いた瞬間、
りあの中で、何かが音を立てて崩れた。
(……なんで)
放送委員。
地味で、目立たなくて、
誰もやりたがらなかった場所。
そこに、
橘海翔が、自分から入った。
しかも――
澪の隣に。
(助けた?)
(あの子を?)
胸の奥が、どす黒くなる。
それからだった。
澪を見るたびに、
りあの中の感情は、
「苛立ち」から「恨み」に変わっていった。
「どうせ、同情でしょ」
「橘くん、騙されてるだけ」
そう言いながら、
本当は分かっていた。
――選ばれたんだ。
放課後。
一人で歩く帰り道。
周りには、誰もいない。
誘われることも、引き止められることもない。
(……別に、平気だし)
そう思おうとした、そのとき。
遠くに、海が見えた。
夕焼け。
防波堤。
そこに――
澪がいた。
村上えま。
石田しおり。
河野みさと。
四人で笑っている。
アイスを持って、
風に髪を揺らしながら。
りあの足が、止まる。
(……なに、あれ)
楽しそう。
自然で。
無理していない。
――仲間。
胸が、ぎゅっと締め付けられる。
(私には、ない)
気づいてしまった。
自分は、
誰かの中心にいるつもりで、
実は――
どこにも属していなかった。
(……白雪澪)
あの子は、
何もしなくても、
人を引き寄せている。
橘海翔。
友達。
笑顔。
全部。
りあは、唇を噛みしめた。
(許せない)
孤独が、
嫉妬に変わる。
嫉妬が、
恨みに変わる。
夕焼けの中で、
りあは一人、立ち尽くしていた。
――これは、
ただの意地悪じゃない。
この瞬間から、
りあは本気で、
白雪澪を“敵”だと認識した。
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