家系を遡ってたどり着いた男のお陰で、私は遂に京極組組長、日下と、若頭、五十嵐に会うことができた。
日下という男は私を一目見るや否や、面倒くさいというように頭を振り、残りを五十嵐に託して出ていった。
私はひとり、五十嵐と向き合う。
「お前が噂に聞いていた、ドン・ウエスギ(ドン/Don …ドン・キホーテのように、イタリアやスペインで用いられる敬称。〜殿、〜様にあたる)か。」
「左様。しかしドンというのはやめてくださらぬか。そのような呼び名は身に重い。ただの、Signor (スィニョール…〜さん、英語のMr.にあたる)で構いませんよ。」
「何を言っているのかわからんが…」
「これは失敬。では、日本語で続けましょう。」
「お前の評判は聞いている。無論、我が京極組に入ってくれることは大歓迎だ。ところで聞くが、お前のその武器は何だ?」
「ふふっ。これは中世から保存されていた剣ですよ。我流ではありますが、幼少のみぎりにフェンシングを嗜んでおりましてね。趣味が高じたものです。」
「ふむ…フェンシングとな。また横文字か、ややこしい…。」
「ただ、私のこれは、戦場で血に洗われた殺人剣。色モン扱いなさるのならば、死にますね。」
「そうか、わかった。なら認めよう。」
こうして私は、京極組に加入することになった。
事務所を出るとき、五十嵐が何やら一人で呟いた。
「ふふっ。どんな奴かと思っていたが、なかなか面白いじゃねぇか…。それにしても血は争えないようだな。あいつと、全く同じことを言いやがる…。」
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