/s/[storyId]/_components/heading/assets/back_arrow_icon.4081080bcaba67b8.svg){kind=icon}
/s/[storyId]/_containers/report-container/assets/more-icon.20cfac1b79e24f56.svg){kind=icon}
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。
テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
タイトル、作家名、タグで検索
ストーリーを書く
テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
タイトル、作家名、タグで検索
ストーリーを書く
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！
ノアがアシェルから銀細工の花冠を受け取った半年後。
春の爽やかな風に乗って、リーンゴーンと絶え間なく祝福の鐘の音が王都に響き渡る。
本日は次期国王アシェル・リアッド・イェ・ハニスフレグと、彼が一目惚れしてあの手この手を使ってようやく口説き落とした少女──ノアの結婚式である。
といっても式は既に終わり、現在二人は控室で小休止を取っている。
「──ん、んんー……ふぁー」
総額いくらなのか考えたくもない豪奢な王族衣装に身を包んだノアは、ソファに浅く腰掛けた途端、豪快に伸びをした。
でも夜明け前から着付けをしてくれたフレシアの顔が浮かんで、すぐに伸ばした腕を引っ込める。衣装が着崩れしたら申し訳ない。
着なれない衣装に疲労困憊のノアとは対照的に、目の前に立っている新郎はニコニコニコニコして、とても元気そうである。
「初めてのことばかりで疲れただろう？さ、これを飲んで」
「……ありがとうございます」
冷たい果実ジュースを渡してくれるアシェルだって、分刻みのスケジュールに追われて疲れているはずだ。
それなのに、使用人がやるべき世話を率先してやってくれる。
申し訳なさとくすぐったさを同時に覚えたノアは、グラスを受け取ると腰に手を当てて、一気飲みをする。
本来なら、チビチビと優雅にグラスを傾けるのがマナーだが、この国で2番目に高貴な存在であるアシェルは、無作法なノアを見ても眉を顰めることはない。
こういうところも全部愛しいと思い、彼はノアに求婚したのだ。
「ローガンさん達はもう軟禁塔に移動してるのかな？」
「そうだね。夜明け前に移動を命じておいたから、今頃キノコ料理を食べているんじゃないかい？」
「えー。ずるい」
「ははっ。ノアの分はちゃんと取ってあるよ」
「……なら、いいですけど」
本来ならローガンは極刑なのだが、ノアのたっての希望により、恩赦という形で牢獄から出ることができた。
ただし呪詛返しを受けたローガンの目は、見えないまま。彼は一生盲目として生きていかなくてはならない。婚約者だったクリスティーナは、一生ローガンの世話係として軟禁塔で暮らしていく。
あれほど王位を狙っていたローガンが夢に敗れ、生き恥を晒すことが幸せだとは思えない。
それでも生きてなんぼという精神を持つノアとしては、どうかしぶとく生きてほしいと願ってしまう。
「ノア、緊張してる？」
「んー……そりゃあ……少しは。でも、グレイアス先生からちゃんと教わった」
「緊張してるってことだね。じゃあ私が緊張しない魔法をかけてあげるよ」
さっくりノアの言葉を遮ったアシェルは、含み笑いをして膝を折った。次いで、ノアの頬に手を添えると素早く口付けを落とす。
「な、な、何をっ」
「ははっ。どうだい？これで緊張が解けただろう？」
「……んー、もぉー」
まんまと策にはまってしまったノアは、頬を赤く染めながらジト目でアシェルを睨む。
でも威力は弱かったようで、アシェルを満足させる結果に終わってしまった。
──コンコン。
「入りますよー。殿下、そろそろお時間です」
まるで図ったかのように、側近のイーサンは扉を開けて、ひょっこり顔を出す。
「ああ、今行く」
何事も無かったように淡々と答えたアシェルは、わなわなと身体を震わすノアを抱きかかえて廊下へと出た。
ビシッと騎士の正装姿に身を包んだイーサンとワイアットが、アシェルにむかってにやぁーと笑いかけたが、今日は珍しくお咎めがなかった。
それから長い廊下を歩いて、ちょっと階段を上って──バルコニーにつながる重厚な扉を開けた瞬間、わぁぁっという民衆からの歓声と、グレイアスを筆頭に魔法団が作った花吹雪がノアとアシェルを歓迎した。
美味しいものを食べた時。美しい景色を目にした時。心地よい眠りにつく瞬間。夢が叶った時。目標を達成できた時。運命の人と出会った時。
好きな人が、笑ってくれた時。好きな人が、自分を求めてくれた時。
この世界には沢山の幸せが溢れているが、その形は目に見えない。けれども、人はソレに触れた時「幸せだ」と感じることができる。
沢山の観客達に手を振りながら、アシェルは隣に立つ最愛の女性の腰に手を回す。
「ねえ、ノア。君は今、幸せかい？」
包み込むように囁かれた問いに、ノアは目を細めて頷いた。
「ええ、とっても……あのね、アシェルが私を求めてくれる限り、私はずぅーっと幸せなんですよ」
このお話は、遥か昔に悲恋で閉じた物語の続き──ではなく、不器用な二人が織りなす恋物語。
そう。どこにでもある、ありきたりな恋のおはなし。
◇◆◇◆おわり◆◇◆◇
/s/[storyId]/_containers/next-in-series-container/next-in-series/assets/list-icon.c10ab777f3210550.svg){kind=icon}
作品ページ