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とある丘。青年が1人…。花を1輪のみ持っている。
「あれからもう1ヶ月かぁ…時間って早いね。クロちゃん…。」
そう海に向かって言う。親友はもう…。
「いや、勝手に殺すな…。」
いや、まだ生きている。奇跡的に生きてるので、竜一はタフだな。そう思ったそうだ。
遡る事1か月前。クロスがベンデッタとの戦いを終え、間もなくその生涯を終えようとした時…ローランが泣きながら「兄ちゃん死なないでよぉぉぉ!!!!ずっと一緒って言ってたじゃんか”ぁ”ぁ”ぁ”!!!!」と言ってたので、クロスはもう少し生きてみようと、pacifist団体に治療を頼んだ。
最低限の応急処置はしてもらえたものの、やはり腕の複雑骨折や、肋骨が5・6本折れてるとなれば、勿論病院行きだ。
しかしながらクロスは大の病院嫌いの為最初は断ったものの、「じゃあロー置いてくつもりか。」と竜一に言われた為、嫌々病院へ入院送りとなった。
肋骨は治ったものの、左腕は治る見込みが無かった為切断となり、現在は義手。
そして、右目の視力が無くなり、色も見えなくなった為、現在は色が見える眼鏡を付けて生活している。さながらクロス自身も、よく生きてるな。と思う。
「あんたホントタフだな。」
「そりゃどーも。」
そして今夜は、クロスの退院パーティ。あの有名歌手ハルの特別ライブがある為、竜一はこの日をとても楽しみに待っていた。
「「「「クロス退院おめでとう!!」」」」
と、全員から拍手喝采が上がる。そして料理として出されたのは、幼い頃クロスの大好物であった、松高手作りの『バタースコッチシナモンパイ』だ。
本来なら笑顔になるところだが、クロスは驚いたような顔をしている。松高は(やはりメロンパンが良かっただろうか…。)と心配していたが、クロスはそれを1切れ取ると、パクリと1口齧った。
その後は皆が驚いた。クロスが静かに泣き始めたからだ。松高は
「泣く程不味くなってたか!?!?!?」
と言う。無理もない。1300年程眠ってたのだから、味が変になっててもおかしくなかった。だがクロスは
「…味もなんも変わってねぇし…嬉しかったんだよ。馬鹿松さん。」
と、今まで見せた事が無かったような、最高の笑顔だった。
「けど、パイの生地部分がちょっと硬い。作り直し。」
「えぇ!?!?!?」
「嘘だよ。硬いのは本当だけど。」
その後は皆飲み食いし、酔っ払って、ほとんどが寝てしまった。起きているのはpacifist団体の皆がほとんどだ。
「…クロス、ハル…悪かったな、今まで寂しい思いをさせて…。」
「…私、パパにもう一度会えただけで嬉しかった。それにパパ。ちゃんと父親してたって、私は思う。」
「…ハル…。」
「…ねぇクロス、歌ってよ。私、全然クロスの歌聞いてなかったから。」
「ん…でも僕、もう歌う資格は…」
「ちゃんとケジメは付けたんだ。歌っても大丈夫さ。」
リーダーの発言に団体の皆も、クロス歌ってくれ。という声が挙がってきた。
歌っても、良いのだろうか。いや、良いか。
「…ハル、ピアノ弾けるか?」
「当たり前じゃん。なんの為に歌手やってると思ってんのよ。」
日向のピアノを借りて、ハルは弾いた。曲は、クロスが小さい頃ハルと一緒に作り、歌った曲だ。
「この風は どこから来たのと 問いかけても 空は何も言わない。 」
この世のものとは思えぬほど、美しかった。
お借りした曲
「世界のつづき」
「風のゆくえ」