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今回の依頼はオーガの討伐である。
期間は7日。
ギルドカウンターにてターゲットであるオーガの特徴・特性・討伐部位などを確認していく。
取れる素材としては、
肉は少し硬く、一般ではあまり食べられていないようだ。
角は討伐部位であると共に何かの薬の材料になるらしい。
革は丈夫で高級なマントやローブになるらしく是非とも持ち帰って欲しいとのことだ。
後はオーガ発見場所の地理を詳しく教えてもらい冒険者ギルドをでた。
俺とシロは町中を通り南門を目指している。
東方面の国境付近を目指しているのにだ。
このモンソロの町にも東門は存在するのだが、今はあまり使われておらず封鎖されている。
そのため、わざわざ南門から回り込んでいかなくてはならないのだ。
東側の国境までは一応街道が通っている。
しかし、あまり使われていないため道の整備が遅れており馬車などは通り辛くなっているようだ。
街道の途中からシロに乗せてもらった俺はすでに国境付近まできていた。
国境といっても何があるわけでもない。この先は丘陵地帯が広がっているだけである。
さて、問題になっているオーガの行方だが情報が新しいため、まだこの付近にいるはずなのだ。
そこでシロに頼んで付近を探してもらうことにした。
そして出来ることなら今回エアハンマーを完成させたい。
頭ではイメージが出来あがっているのだが実際使ってみないと何ともいえない。
――何故そこまでこだわるのか?
そう思うかもしれないが、対人戦のためでもあるのだ。
他の攻撃魔法だと、受けた相手は必ず死ぬことになるだろう。
手を抜いたとしてもおそらく死ぬ。ようするに魔法自体が強すぎるのだ。
今の俺やシロでは調整が難しく、ホイホイと魔法を使えないのだ。
その点エアハンマーは空気を圧縮して放つ魔法である。
これなら空気を横から逃がしてやることで威力調整が素早く簡単にできるのだ。
また、空気を圧縮することで熱が発生するのだが、
そちらも何か利用できないものかと、もっか試案中である。
この魔法はシロにもぜひ覚えさせたいところだ。
後は……、回復魔法を覚えてみたいかな。
俺たちは怪我をしないので使う機会はほとんどないだろうが、これから冒険者を続けていく上で他の者とパーティーを組むこともあるだろう。そのためだな。
ともあれ、シロが持っている魔法は一通り習得したいと思っている。
まぁ、その内にだ。
しかし、オーガなんてどこからやってきたのだろう。
ガルーダ大森林からオーガ1頭でこの丘陵地帯を抜けてきたのか?
ん~、わからん!
さて、シロはどこまで行ったのかな。
久しぶりに ”感覚共有” を使ってみますかね。
たしか南に走っていったよな?
よし、――視覚共有!
おおー、これまた凄いスピードで走ってるなぁシロのやつ。
俺を乗せているときは、かなり抑えて走ってくれているようだ。
『シロ、そのくらいで良いぞ。いっぺん帰っておいで!』
これで、しばらくしたら戻ってくるだろう。
今の視覚共有でMPをどのくらい消費したのか自分を鑑定してみる。
……ふんふん、なるほど。
今のでMPは8ポイント減っているのか。
視覚共有を使ったのが5分程だったから、以前と比べたらMP効率はかなり良くなっているよな。
フルで使ったら2時間ってところか。これなら戦闘指揮や偵察などにも使えそうだな。
おっ、帰ってきたな。
出迎えてよしよしとモフってやる。
まだ昼には早いけど、シロの頑張りにこたえて串焼きを食べるとするか。
フライパンに串焼きを2本分バラして出してやる。
木の深皿に水を出してやり、俺もとなりで1本いただく。
………………
「よーしシロ、今度は北側の一帯だ。頼むぞ!」
ちょっと休憩をはさんだのち、再びシロを送り出す。
「ワン!」
シロは元気よく吠え、北に向かって走っていった。
この辺まで出てきたオーガが丘陵地帯へ戻るとは考えにくいんだよなぁ。
ん~。しかしそれなら、そろそろ見つかっても良さそうなんだが……。
するとそれらは突然! 前方にあらわれた。
オーガ3頭にワイバーンが2頭、いきなり1㎞程先に現れたのだ。
「…………!?」
まずい! 俺はすぐさま近くの木の陰に隠れ、それらを観察した。
運よく、ヤツらはこちらに気付いてはいない。
取りあえずシロを呼び戻すか。
『シロもどれ! ただし、町の方角 (西方) に回り込んで帰ってくるんだ』
これでよし!
しかし、ヤツらはどこから沸いて出たんだ?
オーガはともかく、ワイバーンは飛んでくるから分かるはずだよなぁ。
すると、あの地点に何かがあるのか?
まずは出現した箇所を調べてみないとな。
シロはすぐに戻ってきた。ちゃんと街道 (西方) の方からだ。
「おお、ちゃんと回り込んで帰ってきたな。偉いぞー、よしよし」
首もとを両手でかいてやる。
さあてシロも戻ってきたことだし、行ってみるとしますか。
「シロ、上を飛んでるワイバーンにはウインドカッターでいく。そして、オーガの方はエアハンマーを試してみようと思う。風魔法になるがイメージはこんな感じだな」
そう言って指示を出しながらシロの頭に魔法のイメージを流していく。
「どうだ、いけそうか?」
シロはコクコクと頷いている。理解できたようだ。
「よし行こう!」
シロに声をかけ魔獣の方へ向かって歩きだした。
すると、しばらくして上空を旋回していたワイバーンが俺たちに気付いたようだ。
まず相手にするのは空を飛んできている2頭のワイバーンからだ。
左手をシロの背に置き、右掌を上空のワイバーンに向けて構える。
「ウインドカッター!!」
目に見えない風の刃が2頭のワイバーンを容易く切り裂いた。
攻撃を受けたワイバーンはクルクルと錐もみしながら草原に落ちていった。
――ドス―ン! ドスーン! ドスーン! ドスーン!
オーガどもが走って近づいてくる。
次はこいつらか。
迎え撃つかたちとなる俺とシロ。
先ほどウインドカッターを放った同じ姿勢のまま今度はオーガに標準を合わせる。
右掌を先頭を走るオーガに向け、
「エアハンマー!!」
すると、叫んだ瞬間に、
シュッ! ドゥ―――――――ン!
鼓膜を張るような音が周りに響く。
向かってきていた3頭のオーガは15m程後方へぶっ飛んでいった。
「…………!」
すげえなぁエアハンマー。
これ良いな! 地上戦でも空中戦でも対応可能だし。
「シロ、使い心地はどうだった? かっこいいだろう」
シロは頷きながらパタパタと尻尾を振っていた。
そうして、カウンター気味にエアハンマーを喰らった3頭のオーガ。
立ち上がる気配がまったくない。
そこで俺たちは草むらをかき分け、警戒しながら近づいていった。
「…………あれ?」
おかしいのだ。倒したはずのオーガ (魔獣) がどこにもいない。
それに、先ほど落ちていったワイバーンも見当たらない。
――どういうことだ?
そして、魔獣が倒れていた付近を調べていくと、そこには15㎝程の大きさの赤い鉱石? が転がっていた。
俺はその菱形で赤い鉱石を鑑定してみた。
――鑑定!
”魔石:オーガ:C”
「……えっ?」
これって魔石なのか! まるでダンジョンみたいだなぁ。
って、いや、――まさか!
ダンジョンが……有るの?
俺はすぐに魔石を集めインベントリーに納めると、魔獣の痕跡を辿りながら付近を調査していった。