テラーノベル
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それに、男はわざわざ人通りの全くない、遮音性の高そうな場所を選んで僕を閉じ込めたのだ。
こんな場所でいくら叫んだところで、誰かが気づいて助けに来てくれるはずがなかった。
そう理解した瞬間
目の前の信じたくない現実に絶望する他なかった。
(ど、どうしよう…どうしたら……っ)
激しい焦燥感に駆られたのも束の間
突如、頭がぐにゃりと回転するような強烈な目眩が僕を襲った。
足の筋力が完全に抜け、僕はその場にズザァと両膝から崩れ落ちてしまった。
床に両手を着き、ゼーゼーと必死に酸素を吸い込もうと呼吸を繰り返すが、もう遅かった。
恐怖による過呼吸と精神的ストレスが引き金となり、薬で無理やり押さえ込んでいた
ヒートの症状が、ここに来て一気に最悪の形で大爆発を起こしてしまったのだ。
身体の芯が、まるで沸騰したお湯のように熱い。
それなのに、この冷たい倉庫の床の上にいると
理性をゴリゴリと削り取られるように身体が鉛のようにだるくなってしまい
指一本動かすことすら満足にできなくなっていく。
「…はっ、あ…はぁ……っ、くる、しぃ…」
目尻から熱い涙が止めどなく溢れ出し
喉の奥からは、自分でも信じられないほど甘く淫らな喘ぎ声が漏れ始めてしまう。
オメガの本能に肉体も精神も支配されていく発情期が、まさかこれほどまでに孤独で
辛く、苦しいものだなんて知らなかった。
こんなに苦しいとき
もし自分に番がいてくれたら、どれほど楽になれただろう。
僕だって……僕だって、心から大好きな人と恋人になって、愛し合いたい。
自分だけの番を見つけたい。
ただ純粋に、誰かからの温かい愛が欲しい――。
そんな、満たされない寂しさと切なさばかりが
熱で朦朧とする脳内でぐるぐると幾度となく反芻していた。
何よりも最悪なことに、今の僕のオメガの身体は
本能によって、自分を支配してくれる強大な『αの匂い』が欲しくてたまらない状態になっていた。
(僕もαに抱かれたい。αに、番になって欲しい)
そんな淫らで破滅的な思考で頭がいっぱいになってくると、不思議なことに
さっきまで心に鋭く突き刺さっていたはずの恐怖心さえも、熱の海の中に溶けて麻痺し始めていた。
いや……違う。
アルファなら誰でもいいわけじゃない。
僕の頭の中に浮かんで消えないのは
いつだってあの、シトラスの香りがする優しい大人の顔だけだった。
あの人に、抱かれたい。
あの人に、僕のすべてを捧げて、番にしてほしい。
じゃないと苦しくて、寂しくて、不安で。
お願いだから今すぐ僕をここから助け出してほしくて。
黒星
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コメント
1件
ああ、これは胸が締め付けられるような展開でしたね…。主人公が発情期の苦しみの中で「αに抱かれたい」「番になって欲しい」と願いながら、それでも「あの人」——シトラスの香りの優しい大人だけを思い浮かべる切なさが、とてもリアルで心に響きました。孤独の中で本能と理性がせめぎ合う描写、特に「恐怖心さえも熱に溶けて麻痺する」感覚が生々しくて、続きが気になります。どうか助けが来てほしい…!🤍