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3話
[やっぱりクズだ。]
無陀野の訓練の助手として春が着くことになった日、春は首元にキスマを大量につけて教室に来た。
「おっ、みんな早いなぁ?」
その瞬間、教室が凍ったような感覚がした。実際、無陀野が春の首元を見て目を瞑って苛立ちを抑えていたから。
「…やらかしたな、春先生」
皇后崎はボソッと呟いたそのとき、ローラースケートで無陀野は移動して春に詰め寄っていた。
「お?なになに、どうしたーー」
がし、と思いっきり無陀野が春の首を掴んでいた。
「お前、ふざけるのも大概にしろ。」
そりゃそうだ。キスマを付けてやってくる先生なんか春ぐらいで、普通はもっと隠す努力をする。いや、そもそもつけるなという話なのだが。
「ちょっとちょっと、苦しいよ無陀野…」
さすがの春も目を見開いて顔が引きつっていた。
「だらしない。二度とその首で出勤するな。次したら校長に直談判して処分してもらう。」
「ひっでぇな!!俺悪くねえし!つけんなって言ったけどつけてきたのあっちだし!」
「それはお前が無防備だったから起こったことだ。お前が悪い。」
「とりあえず死ぬから離して…」
物騒でいてどこか気の抜ける会話で、実際にキレているように見えた無陀野も簡単に手を離して鼻で笑っていた。同期が変わっていなくて安心していたのだ、この男も。
「…笑ってんじゃねーよ、ばーか。」
そう言いつつ春の手は無陀野の頭を撫でていた。生徒全員が目を見張った。あの鬼みたいで鬼畜な無陀野の頭を撫でるなんて命知らずにも程がある、と。
でも現実は無陀野はふっと笑っていた。
「生徒の前だ、辞めろ。」
拒否しているようでいて、生徒の前じゃなければいいという許可でもあった。
「はいはい、教師の矜恃な。」
春も柔らかく息を吐くように笑ってぐしゃっと無陀野の頭を撫でた。そして急に顔を切り替えて訓練の話を始めた。何事も無かったように。
その空気感の差に追いつけない生徒達。
「…え、何が起こったの今。なあ皇后崎。」
「俺にも分からない。なんだ今の空気は。」
一ノ瀬と皇后崎が会話をしているのを横目に春は笑った。
「昔から撫でてんだよ俺は。無陀野のことをな。」
それだけ付け足した。それが何年の付き合いかは分からないが、深い関係なのだと察するに時間は要しなかった。
真面目な顔をする春をみて、やっぱり優しい講師なんだろうな、と思っていたのもつかの間。
訓練の話が終わった途端、春は顔を切り替えた。
「なあ無陀野~」
「断る。」
「即答かよ?!」
「どうせ金だろう。貸さない。」
「手厳しいなー。」
やっぱりこいつはクズだ。正真正銘の。
コメント
1件
第3話めっちゃ良かった…!!無陀野先生の「だらしない」からのキレっぷりと、春先生が何事もなかったかのように頭撫でるシーンの温度差にやられた😭💕「昔から撫でてんだよ俺は」ってセリフだけで2人の長い関係性が伝わってきてエモすぎる…!最後の「やっぱりクズだ」で締めるのも最高すぎる。続き気になりすぎるよ〜🌸
2,106
87
間礼
270
HA☆KU☆MA☆I☆
73