「なんかこの部屋懐かしい気するわ懐かしい」
そりゃぁそうやろ、昔ここでたっっっっっっっくさん遊んだしお泊まりもしたんやから…
「なぁゾム?」
シャオロンコイツ何言う気や…
「なに?」
「お前の何でもいいけどアルバムないん?」
「絶対嫌や!!」
探すぞーとロボロが探す気満々だ…
わちゃわちゃしてると母さんが飲み物とお菓子のほかに謎な箱を持っていた。
嫌な予感が…
でも、アルバムを見てロボロが思い出してくれるならそれでいいかと思った。
「ゾムのアルバムここにあるで〜!」
「「まじっすか?!あざす!!」」
タイミングよく母さんがアルバムを持ってきた。
久しぶりに見たな…これ以上苦しくなりたないから見ないよう見してたんに…、
ロボロはアルバムの表紙にそっと手を添えると、ゆっくりとページをめくり始めた。
色あせた写真の中には、小さな子どもたちが笑っている。砂場で泥まみれになって遊んでいたり、プールでふざけていたり、運動会で肩を組んで笑っていたり──そのどれにも、ゾムともう一人、今の自分にそっくりな少年が写っていた。
「これ、ゾムやんな? で、こっち……俺?」
ロボロがぽつりと呟く。けど、その声には確信がなかった。
写真を見ても、心がざわめくだけで、記憶そのものが蘇ってくるわけではない。
ただ、懐かしさのような、安心感のような、言葉にならない何かが胸に広がってくる。
シャオロンはロボロの隣で、ちらりとその表情を盗み見る。
「どや、ちょっとは思い出したんちゃう?」
ロボロは首を傾げながらも、目をアルバムから離さずに言った。
「んー……いや、まだハッキリとは……でも、なんか変な感じする。なんでかわからんけど、落ち着くっちゅーか」
その横でゾムは、苦笑いを浮かべながらページをめくる手を止めない。
「変な顔してる写真いっぱい出てくるで? ロボロ、昔からアホな顔してんねんからなぁ」
わざと明るくふざけてるようで、でもその声の奥には、どこか震えるような不安が混ざっていた。
「……そんなん言われたら気になるやんか。どれどれ、俺の“アホ顔”見せてもらおか」
ロボロが言って笑った瞬間、ゾムは少し目を伏せて、口元だけで微かに笑った。
記憶は戻らない。けど、今こうして笑い合えることが、まるで昔から続いていたことみたいに、自然だった。
それが、少しだけ嬉しかった。
そして少しだけ、苦しかった。
ロボロがページをめくるたびに、幼い自分とゾムが並んで映っている写真が出てくる。夏祭り、誕生日、雪遊び、運動会──どれも、まるで昨日のことのように鮮やかで、でもロボロにはどこかぼんやりとしたままだった。
「これ、お前の家で鍋したときやんな? 俺、鍋に箸突っ込んで怒られてたやつちゃう?」
「あーあったなぁ、それ! お前、アホほど食うてたもんな」
シャオロンが横から笑う。ロボロもつられて笑う。
ロボロが覚えているのはシャオロンと出会った頃からの思い出だけ…。
ゾムはアルバムを見ながら、笑いながら、その目の奥にじんわりと涙をためていた。耐えても、
押し込んでも、感情がせり上がってくるのを止められなかった。
思い出せないロボロの無邪気な言葉が、どれだけ自分の胸に突き刺さっているか──知らないくせに。
それが悔しくて、苦しくて、何よりも悲しかった。
涙がもうすぐこぼれそうだとわかったその瞬間、ゾムは目を伏せて、少し声を震わせながら言った。
「……そろそろ帰ってくれへん?」
ロボロとシャオロンが一瞬キョトンとする。
「ん? あ、なんかあった?」
シャオロンが尋ねると、ゾムは一度深く息を吐いて、無理やり笑った。
「いや、ちょっと頭痛くなってきたっぽいねん。多分、クーラー当たりすぎたんやわ」
「マジか、大丈夫か?」
ロボロが立ち上がりながら心配そうに覗き込む。
「大丈夫やって。でも、今日はもう寝るわ。ごめんな」
「ほな、また連絡するな!今日はありがとうアポ無しで来てごめん」
「……うん、こちらこそ、きてくれて、ありがとう、、。」
ドアが閉まり、2人の足音が階段を降りていくのを聞きながら、ゾムはそっと目を閉じた。
そして、こぼれそうだった涙が、とうとう音を立てて落ちた。
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