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俺が不破さんと話していると、警察署からローレンさんが横断歩道を渡り、俺達の所までやって来た
多分ずっとここに居るのを見兼ねて助け舟を出してくれたんだ
「おはようございます、不破さん。うちの小柳がどうかしましたか?」
「またまた、いつもの事じゃん。こやにね、プレゼント持って来たのに受け取ってくれないんだけど」
「署としてもこの前言ったと思うんですけど、一応そう言うことは辞めて頂けたら良いんですが‥‥」
「でも俺も言ったよね?警察のこやに渡してるんじゃなくて個人に渡したいって」
ローレンさんが腰に手を置き、悩みながら空を眺める
「まぁ‥‥警察署の中で受け取った訳じゃないから、小柳‥‥貰っといたら?」
「え?‥‥あ、はい。所長が言うなら‥‥でもいつも貰ってばかりで俺‥‥」
「だから、こやが今持ってる何か頂戴」
「なにかって‥‥‥‥」
俺は慌ててカバンの中を探る
財布‥‥スマホ‥‥鍵‥‥
あとは何もない
「あ、それが良いな」
「え?‥‥これですか?」
不破さんが指差したのは、鍵に付いてる猫のキーホルダーだった
「え、小柳‥‥おばあちゃんにでも貰ったのか?」
「ダサくてすいませんね。白猫が可愛かったんですよ」
「ホントだぁ。可愛い白い猫ちゃん。鈴も付いてる。ありがとね、こや」
「‥‥こんなので良いんですか?」
「良いよ。これが良い!ずっと付けてたの?これ」
「はい。多分3年くらい付けてました」
「良いじゃん。ずっと付いてたんなら気に入ってたって事でしょ?」
「いや、はい‥‥まぁ‥‥」
不破さんは鈴を指で鳴らしながら、高そうなブランドのキーケースに付けている
今時、鈴付きのキーホルダーなんて誰も付けないだろうに‥‥
こんなキーホルダーなんて外す理由がないから付けてただけであって、別に何とも思った事がなかった
「まぁ、そう言う事で小柳の就業時間がありますので‥‥」
「あぁ、そうだね。また朝に会いに来るから」
俺とローレンさんは笑顔で見送った
「ありがとうございました、ローレンさん」
「笑顔が引き攣ってるぞ。さぁ、もう時間がない!走れ、小柳!」
「あ、はい!すいません!」
慌ただしく紙袋を揺らしながら警察署へと出勤した
「ロウくん、それ何入ってんの?」
ギリギリで署に入り、机の上に散らばったままの私物
その中でも目立つ紙袋をりりむさんが覗きに来た
「あ、これは頂き物で‥‥何だろう?」
「見ても良い?」
「良いですよ」
俺は紙袋の中に手を入れる
形でわかる
これはお酒だ
「凄ーい!木箱に入ってるよ?」
「‥‥そうっスね」
「開けてみて、開けてみて!」
木箱の蓋をスライドさせる
「‥‥読めない」
「俺もっス」
近くにいたレインさんがスマホを取り出す
「パタチが調べてあげる!」
写真を撮り検索をかける
「‥‥‥‥うぇぇ?‥‥やばぁ‥‥」
「なになに?いくらなの?」
「30万もするよ?これ」
「ハァァ⁈30万⁈」
めまいがしそう
何を考えてるんだあの人は‥‥
「めっちゃ貢がれてるね、ロウくん」
「やめてくださいよ、りりむさん」
「だってそうじゃん。誕生日でも記念日でもないのにこの金額‥‥もうさ、あんなにカッコよくて優しくてお金持ちでスパダリなんだから、お嫁に行っちゃえば?」
「‥‥他人事だと思って」
「まぁ、ちょっと人とは違くて超越してるってか‥‥何考えてるか分からないって言うか‥‥何言ってるか分からないって言うか」
「めっちゃ言うじゃないですか」
「でも本当に気を付けた方が良いかも。ふわっちって優し過ぎて、心の奥底に怒りや嫉妬を溜めてるタイプだとりりむは思うんだよね。爆発したら厄介なタイプかも。ギャングのボスだし」
「‥‥めっちゃ怖い事言うじゃないですか」
そんな事言われても俺と不破さんの関係なんてこれ以上も、以下も無い
正直俺は不破さんの事が好きだと思う
でもどうしようもない
今のままが一番良い
そんな風に俺は考えていた
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コメント
2件
ギャングのボスはお金持ってますから笑(*´ω`*)
流石ふわっち!金銭感覚バグってんなぁ