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……約二時間後。午後九時になったため、ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)は俺を起こすと寝室から、お茶の間に移動するように指示した。

俺は寝ぼけ眼《まなこ》を手で擦《こす》りながら、お茶の間に移動した。

俺はこれから朝の三時まで十人のモンスターチルドレンの要求に応《おう》じなければならない。

正直に言うと自信はない。全《まった》くというわけではないが、とにかく自信はない。

まあ、これから『五帝龍《ごていりゅう》』の力を持ったモンスターチルドレン十人の『心の暴走』を俺がなんとかしなければならないわけだから、当然と言えば当然かな。

俺がそんなことを考えていると、ミサキが一人目を連れてきた。(俺は、座っている)

一人目は吸血鬼型モンスターチルドレン|製造番号《ナンバー》 一の『ミノリ』(強欲の姫君)だった。

俺が最初に出会ったモンスターチルドレンであり、俺のことを俺以上に知っているかもしれない存在である。

そんなミノリは、ミサキに背中をトンと押されたあと、俺の方にモジモジしながらやってきた。

目の色が違う。俺がミノリを見て最初に気づいたことは、それだった。

いつもは黒いはずの瞳《ひとみ》が、赤と青と緑と黄と黒がちょうど五分割されたものになっていたのだから。

これが『心の暴走』状態になっている証《あかし》なのかは分からなかったが、俺はあえて、そのことは言わずにミノリ(吸血鬼)に話しかけた。


「よ、よう、ミノリ。元気か?」


「……え、ええ、元気よ」


「本当か? なんかいつものお前らしくないぞ?」


「いや、その、それは……」


「もしかして、何か変なものでも食ったのか? もしそうなら、そう言えよ? 遠慮しなくていいから」


「ううん、別にそういうわけじゃないわ」


「そうか」


「うん」


な、なんだ? このぎこちない空気は。

こいつは本当に、あのミノリ(吸血鬼)なのか? いつもなら、俺をからかうぐらいはしてくるはずなのに。

今のミノリは無口キャラとは言えないけど、ツンデレのツンが抜けたような状態だな。

まあ、とりあえずミノリ(吸血鬼)に満足してもらおう。そうじゃないと、俺の睡眠(すいみん)時間がどんどん減っていくからな。

俺はそう決心すると、再びミノリ(吸血鬼)に話しかけた。


「なあ、ミノリ」


「な、なあに?」


「その……なんか俺にしてほしいことはないか?」


「してほしいこと?」


「ああ、そうだ。なんかないか?」


「ある……けど」


「けど?」


「は、恥ずかしい」


「……そ、そうなのか? いや、別に言いたくなければいいんだ。別に強制はしないから」


「……ありがとう、ナオト。じゃあ、一つだけいいかしら?」


「おう、いいぞ」


ミノリ(吸血鬼)は目を閉じて深呼吸した後、キッ! と目を見開いてこう言った。


「あたしは、ナオトの耳を掃除したい。だから、耳かきさせてくれる?」


「み、耳かき……だと?」


「ええ、そうよ。あっ、もしかして、あたしに耳かきされるの、嫌《いや》?」


「い、いや、別にそういうわけじゃない」


「じゃあ、なに?」


「いや、その……そういうのは母親か彼女にやってもらうものなんじゃないかなーと思ってな」


「じゃあ、今この時だけ、あたしはナオトの彼女になるわ。それでいいでしょ?」


「いや、それはちょっと無理があ……」


「じゃあ、ナオトの初めてをもらってもいいの?」


「耳かきでお願いします」


「分かったわ。それじゃあ……はい、どうぞ」


ミノリ(吸血鬼)はどこから持ってきたのかは分からないが、耳かき棒《ぼう》を持っていた。

ミノリは正座をした後、膝枕《ひざまくら》で耳かきしてあげるわと言わんばかりに、自分の膝《ひざ》をポンポンと軽く叩《たた》いて準備完了の合図を出した。

落ち着け! 俺! 俺はロリコンじゃない。そう、ロリコンじゃないんだ!

俺はただ、ミノリ(吸血鬼)の要求に応《こた》えるだけだ! だから、不純な気持ちなんて微塵《みじん》もない!

俺は心の中のゴタゴタを片付けると、ミノリ(吸血鬼)の膝枕《ひざまくら》に自分の頭をミノリの腹部に目を向けないように、そっと置いた。


「え、えっと、その……や、優しくしてくれよ? 俺の耳はかなり敏感なんだから」


「ええ、初めてだけど、頑張るわ」


「お、おう」


それからのことは言うまでもない。ミノリ(吸血鬼)の耳かきがあまりにも上手かったため、俺はそれを両耳で大いに堪能《たんのう》にした。

その後、俺はなんだか穏《おだ》やかな気持ちになってしまった。


「はい、おしまい。ふふふ、なんだか幸せそうね、ナオト」


「そ、それはお前の耳かきが上手《うま》かったからだ」


「へえ、そんなに気持ちよかったんだ。でも、良かったわ。久しぶりに、あんたのことを独占できたから」


「そうか。じゃあ、もう満足したのか?」


「うん! とっても満足したわ! ありがとう! ナオト! カプッ!」


「……! お、おい! ミノリ! いきなり何すんだよ!」


「何って、あたしはただ、あんたの右耳にゴミがついてたから、取ってあげただけよ」


まあ、本当はゴミなんてついてなかったんだけどね。


「そ、そうか。で、でも、今度からは、ちゃんと言えよ」


「分かったわ。それじゃあ、おやすみ。ナオト」


「あ、ああ。おやすみ、ミノリ」


その後、ミノリ(吸血鬼)は寝室に戻っていった。やれやれ、まずは一人か。

はぁ……こういうのが、あと九回も続くと思うと先が思いやられるな……って、あれ? でも今のって俺にとっては、ご褒美《ほうび》なんじゃないのか?

いや、今回はミノリ(吸血鬼)のしたいことがたまたまそういう内容だったからであって、決して俺がしてほしかったことじゃない。

うん、そうだ。そういうことにしておこう。

俺がそんなことを考えていると、ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)がマナミ(茶髪ショートの獣人《ネコ》)の背中をトンと押していた。

どうやら、休む暇《ひま》は与えてもらえないらしい。

次は獣人型モンスターチルドレン|製造番号《ナンバー》 二、モデル【ネコ】のマナミか。

なるほど。じゃあ、やるか。

ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜

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