ー注意事項ー
・一話参照
◇◇◇
「 …あと少しの辛抱やからな、__!! 」
抱えた彼の身体は冷たく、衰弱しきっていた。
けれども、目をなんとか開け続けこちらを見上げていた。
だから、その期待に応えてやりたかった。
生きて、帰らせたかった。
「 …、 」
「 __!? ……もう眠いよな、」
ぐた、と抱えた身体から腕が落ちた。
その場に座り込み、こちらを見上げたまま眠った彼を抱きしめる。
熱が戻る可能性があるんじゃないかと。
「 …辛かったな、ごめん…ごめんな、 」
1人で、敵陣に連れ込まれた彼の気持ちなど、俺が理解できるはずがない。
俺は、いくら親密な関係であろうと、所詮は他人であって、彼の気持ちなど分かりやしない。
「 …だいすき、絶対、絶対にまた、俺のとこに来るんやで… 」
彼の口に唇を合わせる。
虚しさだけが残るのも、仕方ない。
彼が好きだった。
コロコロ笑う、彼が本当に好きだったと思う。
彼に口付けをしたら、どんな反応をしただろう。
後悔なんて、残酷なものである。
「 …だいすき、絶対に、また会おうな。 」
そう誓った、彼の名を
俺は忘れてしまったのだと言うのか。
◇◇◇
「 …はあ。 」
煙草を咥え、素朴な街を歩く。
先程までは、utとknと居たのだが、女にナンパを始めたので置いてきた。
shpは、煙を吐き出した。
「 ……んー。 」
ここら辺の街は危険が沢山だから、一人で行くなよとtnに言われたばかりである。
なんにも、tnは変なガキに絡まれたらしい。
大体こういうとこにいるガキは、警察沙汰になる。
面倒な街だと思う。
shpはその辺の壁にもたれかかり、煙草を見つめる。
先端はオレンジ色に揺れていた。
オレンジ色。
物心着いた時から好んだ色。
まあ、今は皆にしっくりくると言われた紫色を好んでいるのだが。
そう思いながら、自身のもこもこの紫色の上着を見た。
「 …あ、あのうっ 」
「 … ん"ッ、んん… 」
「 あのぅー…?? すみませえん。 」
「 ……なんすか。 」
香水の強い匂いをまとった女がやってきた。
やはりこういうのも寄ってくるのか。
お気に入りの上着に匂いが着くのは嫌だが。
女は胸をshpの腕に押付けながら言った。
「 迷子になっちゃってえ。 」
「 俺も知りません。 他に聞いてください。 」
「 っ!! あっでもぉ…ちょっとは分かりますよお?? 着いてきますぅ?? 」
「 分かるならそっちに行けばいいじゃないすか。 俺はいいです。 」
「 んんう…もう、分かってるでしょぉ?? 」
ぎゅうう、と近寄るのをうんざり思い払う。
「 んんっ// 」
「 …はあ。 きも。 」
「 はッ、!? キモって言った!? 」
「 …まあ。 キショいなアンタ。 」
「 なにそれ…ッ、有り得ないんだけどっ!! 」
カツカツと、走り去るのを見てクスクス笑う。
ああいう女はわかりやすい。
ちょっとでも否定すれば本音を出す。
…アイツは違った。
否定すると、とことん悲しみ、肯定すれば、とことん喜ぶ。
仲良くなればなるほど本音を吐き出す。
そんな姿は可愛らしくて仕方なかった。
警戒心が高いのか、低いのか。
でも、仲良くなれば警戒心の高さを実感することもあった。
それが大きな優越感でもあった。
「 ……誰だったかな、 」
遠くに見える少年に、微かな懐かしさを覚えながらshpは深く俯いた。
◇◇◇
tnに拒絶された日から、ciは変わり果てただろう。
男らを拒否することもなくなった。
だからといって、男らが飽きるわけでもなく。
一方的に壊されていっていた。
ciの腹は毎時壊されていて、首から下は夥しい痕ができていた。
そして、今日もciはホテルにいた。
部屋の隅に小さく座り込み、男らを待つ。
痛む腹を擦りながら、出もしない涙を堪えた。
その時、部屋の前までやってきた男らの会話が耳に入る。
なぜだか、男らはいつもに増して多い。
3人、最大でも5人だったのが、10数人いる。
「 殴ってもええのー?? 」
「 え、クスリ飲ましてもええー?? 」
「 えっじゃあ俺アレやっちゃおー 」
「 何人まで入るんその子。 」
「 拳とか入るんちゃう?? ゆるゆるやろ。 」
「 えっいいなあ!! でも俺は口がええ。 」
「 ちっちゃい口が可愛ええよ。 」
「 顎外してもええ?? 」
「 首絞めんのは?? 」
「 なんでもありやろ!! あの女が許可してたし!! 」
「 じゃあとにかく好きなようにするかー!! 」
「 鍵は?? おい、誰が持ってるんや 」
ciは命の危機をようやく感じた。
慌てて立ち上がり、入口の下駄箱の下に隠れ込む。
息を潜めていると、男らが入ってきて、靴を乱暴に脱ぎ捨てた。
それからゾロゾロと部屋に入る。
男らはciを探すように気持ち悪い声で名を呼んだ。
ciは閉まる扉の隙間から急いで抜け出した。
それから、非常階段へと走り、階段を急いでかけ下りる。
居ないと気づいたら、きっと彼らはすぐ追いかけてくる。
それから、親へと連絡がいき、親もciを探しに来るだろう。
ホテルの裏口から飛び出し、裏路地へと倒れ込む。
この後、どうすれば良いのだろうか。
助けてくれる人などいない。
だって、もう…。
ciの頭には、誰も過ぎらない。
恐る恐る、裏路地から顔を出してみる。
「 …ッ、!!?? 」
目に入った。
忘れかけた彼の顔が目に入った。
その瞬間、いつぶりかciの目から涙が溢れた。
彼なら、かれなら…。
そう思って、足を動かす。
彼に拒絶されたらもういい加減諦めを付けるから。
だから、彼にだけ、あと、1回だけ。
彼に手を 「 おい、どこ行くガキ!!!!!!!! 」
「 …ッ!!???! 」
「 待て!! テメェ…俺らで遊びやがって!! 」
「 …っ、た、たすけ、!! 」
「 …ッ!! 」
「 …た、たすけ、て…たすけて、 」
届かないと思っていた彼に抱きつく。
震えが止まらず、嘔吐しそうになるのをなんとか堪える。
「 ……、お、おまえ、 」
彼…shpは、理解してない様子で目を丸くしていた。
この感じ、きっと、拒絶だ。
「 すみません…ウチのガキが。 ほら、帰るぞ。 」
「 … 」
服を掴まれ、ぐいと引っ張られるのに、思わず咳き込む。
もう終わったのか。
ciは彼の足から手を離し 「 待てよ。 」
「 アンタ、この子になにしてたんや。 」
「 は、はあ?? お前には関係ないやろ。 離せ 」
shpの腕が、ciを包んだ。
暖かい。暖かかった。
彼の温もりを、思い出す。
「 この子を見放す訳にはいかなくなった。 」
「 んだと…嗚呼、お前も試すか?? コイツの穴、凄いんやで?? 」
そういって、男はciに手を伸ばした。
ぎゅう、と目を瞑るciに、その手をshpは勢いよく叩き落とした。
「 気色悪。 」
「 んだと!?!?!? テメェ…いい度胸じゃねえかよ、俺らが可愛がってやろうか?? 」
「 いいねいいね、次は?? 」
「 …は?? 」
楽しげな声に、男は振り返る。
スマホのカメラを向けた彼が、ヒラヒラと手を振った。
「 shpく〜ん!! もっと楽しそうにして!! あ、でもそこのオッサンはもっとカッコイイ顔して!! 」
「 おいut!! もっと画角考えて撮れよ〜!! 」
「 はいは〜い!! 全員映ってるかな〜?? ピースピース!! 」
「 ut先生、knさん…そんなテンションじゃないんすけど。 」
「 まあまあ!! ほらほら、1+1は〜?? 」
「 にー!!!!!! 」
カメラを向けるのはutだ。
そして、その後ろで楽しげにピースをしているのはknだ。
shpはciの頭を撫でながらため息を着いた。
男らは理解出来ずに固まっている。
「 な、何撮ってんだよお前!! 」
「 犯罪集団とメントスコーラしてみた!! とかどう!? kn!! 」
「 うんうん!! ええなあ!! あっ!! あと、警察も入れて!! 」
「 …け、警察!?!?!? 」
男らは慌てて顔を隠すように手で覆った。
ザワザワとするのを中心に、街の皆が集まり出した。
それから警察もやってきたのに、utは手を振った。
「 emちゃ〜ん!! 」
「 その呼び方古いわ〜 」
「 嗚呼なるほど。 emさん呼んでくれたんすね。 」
「 せやせや!! 戻ってきたら、shpくんがなんか危なそうなことに首突っ込んでるから!! 」
knがグッ!と親指を立てる。
その間に、emとその警官仲間が男らを捕えた。
utは笑いながら、撮った動画をemに見せていた。
証拠動画を撮っていたのだった。
「 …んでー、その子供は?? 」
「 うん…。 」
頭をshpの肩に押し付けたままの子供を優しく撫でる。
「 親呼んだ方が… 」
「 いや良いです。 こういうことしてる子供の親とか信用ならん。 」
「 まっ確かにな!! じゃ、ut!! 俺ら撤退すんぞ〜!! 」
「 おっけ!! em後は宜しくな!! 」
「 えっ!? ま、まあええけど… 」
いざと言う時に頼りになる男、em。
皆で元気よく彼に手を振って別れた。
◇◇◇
いつも横になるベッドとか変わったベッドの上にいた。
ciはゆっくりと起き上がり、周りを見渡す。
見慣れない景色に、背筋を凍らせた。
あの後、どうなったかをciは覚えていなかった。
確か、shpの足にしがみついて…。
その後は失神してしまったんだった。
ciは慌ててベッドから降りて、机の下に潜り込んだ。
いつものように、息を潜め顔を塞ぐ。
shpに拒絶されてしまったのが、最後の記憶に残っている。
ciは遂に終わったのだ。
今までの生きる価値を全て無くした。
これで、悔いなしに消えることができる。
ふう、と息を吐く。
ガチャ、と扉の開く音がする。
ciは口を手で塞ぎ、呼吸音をも隠した。
「 …!? 」
男は驚いたように、布団を捲り出す。
見つかったら何をされるのだろう。
ciは恐怖に呑まれて震えていた。
「 …!! 」
足が机の前まで来て、膝を着く。
嗚呼、バレた。バレてしまった。
下唇を噛み締めていると、現れたのは
「 ああ、いた…ci!! 」
「 …は、ぇ、 」
“ shpくん ” …??
「 うん、俺や。 お前…ciやんな。 ほら、一緒に戦った、 」
なぜ、記憶が。
ciは伸びてきた手を眺めるだけだった。
否、それしかできなかった。
「 なん、で…どう、して、?? 」
「 俺もよくは分からへん。 けど、ciを見て全部思い出した。 」
まだ震えているciをshpは優しく抱き寄せた。
無理矢理外に出すのは危ないと判断し、そのまま机の下で。
「 …おかえり。 帰ってきたな、ci。 」
「 …shp、くん、 」
「 随分と遅かったな…まあ、迎えに行った俺の責任か。 」
「 頑張ったな。 偉かったよ。 」
それは、今まで生きてきて初めての肯定。
そう、初めての肯定であった。
ciはわんと泣き、shpに抱きついた。
そんなciを見て、shpは安心したように微笑んだ。
変わらない、ciが帰ってきたんだ、と。
shpは、ciの服の隙間から見える傷痕を睨みつける。
愛おしい彼を傷つけた彼らがやっぱり許せない。
emらによって制裁を受けた彼らだが、足りない気がして腹が立つ。
その圧がciに届いてしまったのか、不安そうにこちらを見上げてきた。
「 ん?? どうした?? 」
「 …ごめんなさい、 」
「 は?? なんでお前が謝んねん。 」
「 だって…おれ、きたないし、 」
ciはそっ、とshpから手を離す。
けれども、shpはciの手を優しく握り戻した。
「 ciが好きや。 」
何年越しに伝えることになった、言葉を彼に伝える。
彼は数秒経ってから、目をまん丸にして振り返った。
shpは楽しげに笑い、その頬を触る。
「 阿呆が寄り道するから。 伝えるんが遅れたやないか。 」
「 え…えっ?? す、すき、?? shp、くんが…おれを、?? 」
「俺が、ciを。 」
「 えっ!?!?!?!? /// 」
今こそ歳の差はあるものの、昔から彼を好いていた。
そして同じく彼も、好いていた。
shpは小さくなった彼を昔よりも優しく抱きしめる。
それは、親友から恋人への抱擁に変わったことを意味するだろう。
「 …ま。 今のお前を恋人にしても、色々問題やからな。 とりあえず、高校生まではお預けやな。 」
「 えっ、ばれなきゃええやろ…?? 」
慣れてるし、とciが自身の尻を触るのを、shpは止めた。
優しく頭を撫でながら、抱き上げる。
「 俺はアイツらみたいなゴミとか違う。 同じにすんな。 」
傷を癒すことを出来ずとも、手を離すことはなく。
◇◇◇
「 ci、はよー。 」
「 おはよう、shpくん!! 」
目を擦りながら身体を起こすciに声をかければ、ぱっ!と嬉しそうに顔を上げた。
眠そうな目は、キラキラと楽しげに輝いている。
それから、shpに抱きついた。
「 今日お仕事は?? 」
「 休み。 ciも今日休みやろ?? 」
「 うん!! 」
あれから数年が経ち、ciはすっかり元のように明るい性格へと戻った。
なんなら、お互いの気持ちを伝えたためか、前よりも甘えたになった気がする。
今ciは学生で、shpはemとバイク屋で働いている。
shpのバイク屋の隣には、utとosの喫茶店が。
前には、tnとsho、knがやっているペットショップがある。
zm、ht、rbは他国へ武道をしに行った。
教えることもあれば、やる事も。
そしてまた教えられることもあるらしい。
grはsnと色んな場所を旅しているらしい。
まあとにかく、皆自由にのびのびと生きているのだ。
この街の周辺に、イケメンが沢山いると噂されたのももう遠い昔に感じる。
女性が沢山来て、バイク屋を初め、喫茶店やペットショップを巡っていた。
それは一種の観光地のようになっていた。
ciはshpに言い寄る女性を遠ざけるのに必死であった。
emも手伝っていたのだが、emは女性に遊ばれ始めたのだ。
誰もが予想してなかった。
否、予想していた光景でもあった。
マスコットキャラクターのように扱われ、それでもemは満更でもなかった。
utに相談をすれば、女はええからな。と最低な回答をするし。
(その後に慌てて、shpはciが好きやから安心せい。とか言っても意味無い)
頼りになりそうなzmはいないし。
tnらは、自身の可愛いペットに夢中だし。
そのため、ciはshpに大きな嫉妬を抱えていた。
次回短篇小説に続く____かも??
余談ですが、配信によりpnciに再熱しております
需要ありますか🫣🫣🫣
無くても投稿しちゃいますけどネ
コメント
12件
続ききたー!ハッピーエンドでよかったガチで!ciのさんがshpさんに嫉妬してんの可愛い〜♡
よかったあああああ😢 tnさんのペットショップ最高すぎる utosの喫茶店なんて毎日通っちゃうわ pnciめっちゃ需要ありあり!! 超絶読みたい!!