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桃赤ちゃん初書き
桃くんの幼なじみとして、とっても可愛い子が出てきます♪♪
注意
・赤ちゃんが告白を断られ続ける。でもちゃんとハピエン
・桃赤で赤女体化
・恋愛
―――
赤side
朝の光が、窓の向こうから教室を満たしていく。
春になってもうすぐ二ヶ月。1年の始まりに告白した彼に、私は今日もまた声をかける。
「ねえ、ないくん。今日も私のこと、好きになってくれないの?」
彼は椅子の背にもたれて、少しだけ眉をひそめたあと、いつものようにこう答える。
「ごめん。無理だよ、今はまだ。」
その「今はまだ」が、優しさなのか、遠回しの拒絶なのか、もう分からなくなっている。
それでも私は、「そっか、じゃあまた明日ね」と笑うのが日課になっていた。
―――
最初に告白したのは入学式の日。席が隣になって、何気ない話から始まった彼との距離。
気づいたら、その目も、声も、名前を呼ばれる音すらも好きになっていた。
だから、勇気を出して伝えた。「好きです」と。
そして、毎日、同じように伝えることにした。
彼が振り向いてくれる日が来ると信じていた。
でも、1ヶ月が過ぎ、2ヶ月が経って、3ヶ月が見えてきたある日。
「ないこー、話あるんだけど。」
綺麗な黒髪に、ピンク色のメッシュが入った、桜っぽい女の子。ないくんと小学生から一緒だった子によると、名前は桃瀬、と言うようで、どうやらないくんの幼なじみらしい。
他の男の子からもモテているらしく、私は意地の悪いお願いをした。どうか、桃瀬さんを想っている男の子が、桃瀬さんと付き合いますように、と。心底思った。だって、怖かったんだもん。
ある日、廊下で桃瀬さんを見かけた。
「もー、馬鹿にしないでよ!」
「お前が先に言ったんじゃねえか!」
綺麗な紫に染まった髪の毛の、男らしい人と歩いているところを。言い合っている姿はまるでカップルみたいで、お似合いだった。
この人と付き合っちゃえばいい。そう思っていた。
―――
私は屋上のフェンスにもたれて、空を見上げていた。
風が強くて、短く切ったミニスカートの裾が揺れる。可愛いキーホルダーがたくさんついた鞄の中には、昨日書いた手紙が入っている。
「もう、これで最後にします」とだけ書いた、すごく短くて淡白な手紙。
でも、届けるのはやめた。
もう、いいかなって思った。
頑張った自分を、そろそろ許してもいい気がした。
「……大神さん!」
振り向くと、教室にいるはずの彼が、息を切らして立っていた。
「どうしたの?」
「……なんで、今日は来なかったんですか。」
その言葉に、一瞬だけ心が止まった。
自惚れてるのかもしれないけど、まさか、もしかして。彼は、私が毎日来ることを、待ってた?
「……ちょっと、疲れちゃったから」
そう言うと、彼は黙ったまま私の横に並んだ。
しばらく、何も言わず、風の音だけが間を埋めていた。
「俺……ほんとはさ」
その声に、思わず彼を見つめる。
「毎日、断るたびに、胸が痛かった。でも、こんなに真っ直ぐ気持ちを向けてくれる人に、俺なんかじゃダメだって……そう思ってた」
「なんで?」
「自信なんて、なかったから。だけど、今日、君が来なくて……初めて、本気で怖かった」
彼はゆっくりと、私の手を取った。
「好きだよ、大神さん。……もし、まだ間に合うなら、俺と付き合ってほしい」
目の奥が熱くなる。声が震えた。
「……もう、遅いかもしれないよ?」
「遅くない。ずっと、君の声を待ってたんだ」
私は泣きながら、笑った。
「じゃあ、明日からは私が断る番だね。」
「…うそだ。」
「…うん、うそだよ。もちろん、ちゃんとうんって言うよ。」
屋上に吹く風が、少しだけぬるくなっていた。
夏が、始まろうとしていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
《それでも、言えなかった。》
(桃くんの幼なじみの女の子視点)
???side
屋上のドアの影から、風が私の髪をかすめて通り抜けていく。
ほんの少しだけ、開いていた扉の隙間。その向こうから、聞き覚えのある声がした。
「……俺と付き合ってほしい」
——え?
私は息を止めた。心臓の音が、一気に早くなる。
隙間から覗くと、そこには乾がいた。
そして、その目の前に立つのは、あの子——毎日、告白していた大神さん。
私が知っている乾じゃなかった。
いつも冷めたような顔をして、何を話しても、どこか他人事みたいだったのに。
今日の彼は、必死で、真っ直ぐで、……ずるいくらい、かっこよかった。
「好きだよ、大神さん」
その言葉が、胸の奥に突き刺さる。
今まで一度も、私には言ってくれなかった言葉。
いや、言わせるようなこと、私はしてこなかったのかもしれない。
幼稚園の頃から一緒だった。
雨の日も、運動会の日も、受験でピリピリしていたあの冬も。
ずっとそばにいた。隣にいるのが自然すぎて、いつか、向こうから好きって言ってくれるものだと、勝手に思ってた。
「じゃあ、明日からは私が断る番だね……」
そこから先は聞こえなかった。大神さんが泣きながら笑ったその声が、あまりにも、やさしくて、きれいで、まぶしくて。
私は、音を立てないようにそっと後ずさった。
足が震えていた。涙が頬を伝っているのに、どこか実感がなかった。
「……そっか。乾、やっと笑えたね」
そう、つぶやいて、私は階段を下りた。
誰にも見つからないように、こっそり、そっと。
屋上から聞こえてきた風の音が、いつもよりずっと遠く感じた。
―――
その日の帰り道。
乾からのLINEは来なかった。
でも、通知が鳴るたびに、画面を見てしまう自分が悔しかった。
いいんだよ。きみが笑えるなら、それで。
そう思おうとするたびに、胸の奥がキリキリと痛んだ。
「……ばか」
つぶやいたのは、乾にじゃなく、自分自身にだった。
言えばよかった。
好きって、一度だけでも。
でも私は、それでも、言えなかった。
―――
《それでも、そばにいたい。》
???視点
帰り道、坂の途中で見慣れた後ろ姿を見つけた。
背中が小さく見えるのは、夕暮れのせいか、それとも……。
「……“らん”?」
彼女は立ち止まって、ゆっくり振り返った。
目の縁が赤くなっていて、いつもの気の強い目つきが、今日は少しだけ弱く見えた。
「い、…“いるま”……なんでここに。おまえの家、こっちの方面じゃないでしょ」
「たまたま。今日は遠回りしよかなって。」
嘘じゃないけど、ほんとの理由じゃない。
今日は、なんとなく学校を出るタイミングを遅らせた。なんとなく、らんがどこかに行ってる気がしたから。
言えるわけないけど。
「なんかあったん?」
らんは少し間をあけて、フッと笑った。笑ってるのに、泣きそうな顔だった。
「乾が、好きな子に告白してた」
「……そっか」
知ってた。というか、気づいてた。
らんがずっと、乾さんのこと見てたのも、彼女がそれを隠してたのも。
だけど、乾はらんを選ばなかった。
それが分かって、正直、ちょっとホッとしてる自分がいた。
最低だと思う。でも、もう止まらなかった。
「じゃあさ」
夕焼けに染まる街の坂道。
彼女の隣に立って、少しだけ軽い口調で言った。
「俺が、慰めてやろうか」
彼女は目を丸くして、すぐに眉をひそめ、しかめっ面になった。
「……何それ、慰めるって。そういうの、安っぽくない?」
「ちげーよ。…ちゃんと、好きだったから。前から、ずっと。……俺が、らんのこと」
夕陽が落ちるまでの時間が、異様に長く感じた。
らんは何も言わず、下を向いたまま。
断られるって分かってる。
今の彼女は、まだ誰かを受け入れられる状態じゃないって、分かってる。
それでも——
「……乗り気じゃないのは分かってる。けど、そばにいるくらいは、させてくれ」
小さく、彼女の肩が震えた。
泣いてるのか、笑ってるのか、見えない。
「……気を使ってくれてるだけでしょ」
「ちがう。気を使うくらいなら、とっくに諦めてた」
「……ほんとに、バカだね」
そう言って、彼女は一歩、こっちに近づいた。
手はつながなかったけど、ほんの少しだけ肩が触れた。
そして、ぽつりとこぼした。
「……じゃあ、ちょっとだけ。ついてきて」
その言葉だけで、今は十分だった。
歩く速度が揃う。
それだけで、少し救われた気がした。
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skfnの紫くんと桃くんにご登場いただきました。
投稿遅れてすいません!
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