コツコツコツ…
薄暗い路地裏に、足音が響く。
???「あー、つっかれた…」
「流石に立て続けで準1級任務は疲れる…」
そう言い乍伸びをする少女、彼女の名は氷月琉衣。
さぁ帰ろう、そう思っていると、彼女が歩く路地に6人分の足音が増え、一気に騒がしくなる。
(何だか楽しそうだな、いいなぁ…流石にもう授業終わっちゃっただろうしなぁ…)
そう思い乍横を通ろうとするも6人もいればこの狭い路地はいっぱいになってしまう。どうしたものかと思案していると、スッと道に1人分程の空間が。道を空けてくれたのだと気づいて、彼女はぺこりと会釈した。
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一方、琉衣とすれ違った6人組には異変があった。
彼等のボスである佐野万次郎、通称マイキー(つまりこの6人組は犯罪組織「梵天」であるのだが。)が急に路地裏のど真ん中で立ち止まり、固まった。そして数瞬の間の後放った言葉が
マイキー「三途、さっきすれ違ったあの女を調べろ。」
突拍子も無いこの言葉に一同は驚愕した。何故なら、彼が女性に興味を持つ事はおろか、彼自ら調べろと言った事など無かったからだ。彼女は梵天に敵対する組織の娘でも、梵天の構成員でも裏切り者でも何でもない。故に更に一同は驚愕した。
三途「はい、分かりました。」
従順に承諾した三途と呼ばれた人物は、大きな瞳にバサバサの睫毛、長い髪に小さな顔という、口元の大きな傷が無ければモデルと勘違いする程の美貌だ。
三途「オイ九井、幾らでやる?」
然し、この三途春千代、れっきとした男である。そして何を隠そう、「梵天」のNo.2でもあるのだ。
ココ「ピー万」
そして九井と呼ばれたこの男(通称ココ)、サラッとトンデモナイ額を口にした。
三途「……チッ」
「しゃーねぇ。これもマイキーの為…」
これには流石の三途も盛大な舌打ちである。然し自分の手間を考えると安いものである。ボスに頼まれた仕事を人に押し付けるのも如何なものかとは思うが。
???「えー三途やっぱココに仕事任せんの~?w」
???「やっぱりヤクやりすぎて頭回ってねぇんだな」
そして三途の苛立ちに火に油を注ぐのがこの兄弟である。ニヤニヤと軽薄な笑みを浮かべる方が兄の灰谷蘭、真顔で失礼な事を口走るのが弟の灰谷竜胆である。
三途「ぁ”?黙れやクソ谷兄弟よォ。」
蘭「黙れって言われて黙る奴いねぇだろぉ?w」
???「オイお前ら、五月蝿いぞ。」
三途「てめぇに言われる筋合いねぇワ黙れや鶴蝶」
大きな溜息をついて今にも取っ組み合いなんて生ぬるい喧嘩を始めそうな3人を制止するのは「梵天」No.3、鶴蝶である。この面子の中では比較的まともな方ではあるが、「梵天」に所属している時点でそれすら危うい。
三途「キメェんだよブラコンがよォ」
蘭「テメェこそヤク中だろうがw」
三途・蘭「ぁ”?」
一触即発の3人(というか2人)を止めたのは
マイキー「三途、蘭、やめろ」
鶴の一声と言うのが相応しい、首領の一言だった。
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※この物語は「呪術×東リべ」のノベル版です