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やってきたのは――自然界。ピットの話によるとその黒い人物は自然王と統べる者の神殿のどこかに潜んでいるとかなんだとか。しかしひとりの場合、そこまでどういった方法で向かえばいいか。そこでパルテナの『転送』により神殿の前までなら可能だと。今、その時点に彼女は突っ立って。
「…………」
周囲を確認してみると自然軍の本拠地なためか、地上にはポックリにドスドス…空中にはトツコツにプコなどの魔物が暇そうにあちこちさまよっていた。一目見たところで神殿内部へ侵入。
これといったものはないが、内装は全て自然の作物によって作られており、香りなども含まれている。少し興味はありげに一歩踏み出すその瞬間、侵入者が踏み入ったと思われる足音が一瞬。
「……誰。」
「お戯れを。あなたのような侵入者…いえ、人間がここまで来るとは想定外でしたので。」
自分より高身長かつ執事のような見た目のじいやがこちらを睨みながらゆっくりと近寄る。
「一応お伺いしますが、人間…てことで判定しても?」
人間。それであっていると警戒心を強めながら頷く。では、と話を進め。
「ここに来た理由としてはナチュレ様…ではなくブラックピット様に会って話をつけるため。違いますか?」
「そう。」
「でもなんでその事知って──」
「その件に関しましては、ナチュレ様よりお伺いしております。なので全てを話さなくていいんです。」
「しかし、本当なら人間をここに招き入れるのは禁じられているのですが…」
「どうやら、そちらに事情というものがあるようだったので今回だけ特別、という訳でして。」
「…早くして」
「あまりせか」
「ねっ、二人で何し──あらその子、迷子?」
執事の背後からひょっこり現れた、電光のエレカ。稲妻のスピードとパワーを兼ね備えたクールビューティーとも謳われていたり。
「いいえ。どちらかと申しますと…ブラックピット様に用があるようでこちらに転送されてきたとの事です。」
「転送?ああ…もしやあのおばさんから?」
「うん。……ん?」
「コラコラ、エレカ様。そのようなことを言っているとバチが当たりますよ?」
「えぇ…冗談で言ったのに。」
「冗談も程々に。ね?」
「はーい。」
「今更ですが案内して差し上げましょう。わたくしの後に着いてきてください」
やっと長い長い話が一段落し、執事の後を追う。エレカ。その名を知った上で脳内にしまい、覚えておくことに。
しばらく歩いていると数分くらいである場所に到着した。執事から「ここは射撃場」という訓練所を説明されるのを聞きながら視線を向けたその先に…あの時の彼はいた。
「あそこにいらっしゃるのが“ブラックピット”様です。お、ちょうど今特訓が終わったみたいですね。ではわたくしはこれにて…」
「うん。ありがと」
さすがは律儀な方。礼儀正しく頭を下げて退散。その後ろ姿を見送ると早速。
「あの……」
「あ?なんだお前」
「てかどうやってここに…」
「転送…」
あーなるほどな。と一瞬で察したかのように体を彼女の方へ向かせる。
「……あの時。」
「?」
「あの時の……助けてくれた……」
「なんの事だか…」
「覚えてる…今でも」
「ほう…だがそんな昔の話、オレには興味ないね」
「話はそれだけか?だったら失せろ」
「っ……」
結局、思い出してはくれなかった。そのことにショックを受け、仕方なく地上界へ戻り。
その後、ブラックピットは先程の少女が気になってか自然王の部屋へ。
「ナチュレ、いるか?入るぞ」
「コレ!今起きたばっかなのだぞ!まだ寝癖が…」
自然王ナチュレ。
緑や自然、大地を司る女神。最も人間を嫌い、パルテナ軍と敵対することもあるが利害一致すれば尚更。生命の象徴である血潮の赤色をした法衣を待とう幼き見た目が特徴。破壊王とはまさに彼女のこと。
相変わらず、ノックなしにドアを開けるブラックピットに対しナチュレは激怒。瞬時に奇跡かなにかで寝癖を直すとドアの前で立ち塞がるブラックピットの方を向き。
「で、用は?」
「あの女のことでだ。お前なら何か知ってんじゃねぇのか?自然の女神」
実の所、ナチュレはその時寝落ちしていたため、その女に関しての情報は一切ない。なので、無言で首をゆっくりと振る。その仕草にブラックピットは舌打ち。
「本当に知らないんだな?」
「ああ。
もし知っていたとしても教える気はサラサラないぞよ」
「ん?それは一体どういう意味だ」
「そなたにだけは教えてやろう。あのサルの危険度を。」
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