「…ねぇ、キスより先のことも、してみる…?」
天使のように愛らしい顔に、まるで小悪魔みたいな艶っぽい笑みが薄っすらと浮かぶ。
「し…しないから……」
しどろもどろで断ることしかできない私に、
「じゃあ…いつなら、するの…?」
彼が軽く唇をとがらせて見せる。
「いつならって……いつになっても、しないから、そんなこと……」
首を何度も横に振って応えると、
天馬君が、長い睫毛をしばたいて、
「しないの……? ……本当に?」
すねたようなあどけない顔を、一転してのぞかせた。
くるくると変わる表情に、惑わされてしまいそうにもなる。
「し、しないってば……」
そうくり返しはするけれど、私の声のトーンはまるで弱々しかった。
「僕……君に、ひとめぼれだったのに……理沙は、違うの? 僕のこと、嫌い……?」
大きな猫のような瞳がうるりと潤む。
その目の奥に吸い寄せられ、魅入られるかのように、
「嫌いじゃないから……」
と、つい答えてしまっている自分がいた。
「嫌いじゃないなら……好きなんだよね?」
簡単にほだされちゃいけないとは思うのに、もはや彼のペースに乗せられた私は、頷くことしかできなくて、
「うん…好き…」
と、一言を口に出した。
「僕も、好き……理沙のことが……」
甘い囁きとともに覆いかぶさる体に、抵抗すら奪われる。
のしかかられた体の重みで、ギシリ…とベッドが軋む。
首筋に降りたキスの熱に、「うんっ…」と、小さく喘ぐと、
「かわいいね…理沙」
さっきまでかわいかったはずの彼から、そう囁きかけられた。
天使な顔をした小悪魔にまんまと捕らわれた私は、
その感じたことのない甘い魅惑から、もう脱け出せないのかもしれなかった……。
-END-
次は、三日月「美形な厳格執事と、ロマンティックLOVE」
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