たくさんの吸血鬼が私の元に無惨に転がっている。
その中心に立っているのが私。十六夜咲夜。 私の仕事は ゛吸血鬼ハンター ゛
吸血鬼を狩ることを仕事としている。
「…今日のノルマ達成」
私にとって吸血鬼を狩ることはなんとも思わないほどになっていた。
何故かと言うと,吸血鬼は私にとっては最大の敵。だからだ。
「…お母さん,お父さん,私…上手くできてますか?」
誰もいない空にそう呟き,ナイフを直そうとしたその時,ふと誰もいないはずの背後から気配を感じた。
「誰も居ないわよね?」
そう言い振り返ったが誰も居なかった。
気の所為と思いナイフをしまってその場を立ち去ろうとしたその時。
いきなり背後から襲われた。
「…っ!!」
「へぇ…今の私の攻撃を交わす…とはね。ここまで強い人間は初めて見たわ。」
(こ,子供…?)
突如として現れた吸血鬼,その見た目は小さな子供だった。
油断した…と思った。
今までは大人の吸血鬼ばかり狩っていた。まさかこんな子供にやられるなんて…と。
吸血鬼ハンターとして一生の汚点だった。
ふと私の目の前に先程投げたナイフが見えた。
(そうだ…これで攻撃すれば…時間さえ止めればこっちのものよ…!)
The,ワールド!!
瞬時に周りの物の動きが止まった。
そう。私の能力は時間を操る程度の能力。
今までその能力を使われて無事でいた者はいない。時間を止めている間に近くまでナイフを飛ばし,すぐに時間を再生して抹殺してきたのだから。今までの吸血鬼もそうやって排除してきた。
「え…居ない…?」
時間を再生するとそこに先程までの子供の吸血鬼はいなかった。
何故…?確かに時間を止めている間にナイフを刺したはずなのに。
「へぇ…時間を止めるなんて,随分と卑怯な真似をするのね。」
「!!!!」
(な,なんでバレて…?)
ポッ…ポッ…
ザァアアアアアアア…。
私が次の手を考えている間に雨が降り出してきた。
ぅ…うぅ…
突如としてしゃがみ込んだ吸血鬼。
その瞬間私は思い出した。吸血鬼最大の弱点を。
十字架,陽の光,そして水。
吸血鬼は蹲り,何かを呟いていた。
「ぱちぇ…ふりゃん…。」
ぱちぇ??ふらん??
仲間の名前でも呼んでいるのだろうか。
私はふとその吸血鬼に声をかけていた。
「貴方,名前は?」
辺りに漂うしばらくの沈黙の後,その子供は弱々しく名前を言った。
「れみりぁ…ちゅかーれっど…」
呂律が回っていない。当たり前だ。弱点である水を大量に浴びているのだから。
よいしょ…っと。
私は吸血鬼の少女を背負い,雨の当たらない場所へと移動させた。
「吸血鬼ハンター,失格ね…」
吸血鬼とはいえまだ子供なのだ。
いくら天敵とは言えど子どもの姿のまま殺すのには気が引けた。
30分ほどした後,改めて私は少女に名前を聞いた。少女はだいぶ回復していたらしく,先程の弱々しい口調とは打って変わって強気の口調で答えた。
「レミリア・スカーレット」
「…!!!!」
レミリア・スカーレット…
この子が私の捜し求めていたスカーレット一族の子供…?
「ぱちぇ,ふらん。この2人は誰??」
「パチェは私の友人,フランは私の妹。」
まだグッタリしてはいるものの,しっかりとした口調で少女は答えた。
…雨って凄いのね。
「フランは私の大切な妹の名前よ。」
妹…か
吸血鬼にも妹や,家族が居るのか。
そんな当たり前のことを考えていたそんな時だった。
グサッ
「…え…あ…。」
私…こんな所で死ぬの…?
痛みに耐えつつ,朦朧とする瞳でレミリアと名乗る少女を見た。
少女はこう言った。
「ちょうど人間を探していたのよ。…貴方みたいに強い人間を…ね。」
私を探していた…?
人間の私を…?
思考回路がめちゃくちゃになり意識も朦朧としていた。
当然だった。深く刺された脇腹からは止めどなく血が流れ続けていたのだから。
「…ねぇ?貴方。私の従者になる??なるのならばその痛みや,苦痛から解放してあげるわ。それに,私の家へ来るのであれば衣食住,全ての保証はするわ。どう?悪い話では無いでしょう?」
依然として血がダラダラと流れ続ける脇腹を抑えながら私は考えた。
確かにこのまま,ここに居ては何れかは私は死んでしまう。
それにもしこのまま生き延びたとして,
体にハンデを背負うかもしれない。
そうなればハンターとしての生活も難しく,吸血鬼達の格好の餌になるかもしれない。
そんなリスクを背負ってまでここに居るより
この少女の言う紅魔館へと行った方が安全かもしれない。それに,私もこの少女。レミリア・スカーレットに興味を持ったのだから。
「分かったわ,レミリア…いいえ,お嬢様。私のこの命を賭けてでもお嬢様。あなたをお守り致します。」
「め〜い〜り〜ん〜?またあなたは寝たりなんかして!!」
「はわわ!!さ、咲夜さん!こ、これはけして寝ていたのではありません!た,鍛錬をしていたのですよ〜!」
全く…この門番は…。
「咲夜〜紅茶が飲みたいわ!」
「はい!只今お向かい致します!」
私はメイドになって正解だと思った。
最初こそ色々と大変だったし,何度も挫折しそうになった。
だけれどもお嬢様は私に生きることの楽しさ。幸せを教えてくれた。
パチュリー様は私に料理や,時々侵入してくる2人組のことについて教えてくれた。
小悪魔は,時々私の仕事を手伝ってくれたり,愚痴を聞いてくれたりしている。
美鈴は なんだかんだ言いつつ,私たちのために門番をしてくれている。(寝てることが多いのがたまにキズだけれども…)
妹様は 破天荒な行動をしつつも私の事を慕い,尊敬してくれている。皆誤解しているけど根はすごく優しくて意外と可愛らしい人なのだ。
私は紅魔館へ来て決めたのだ。
死ぬまでお嬢様たちをお守りする。と
お嬢様,あの時私を救い出してくださり,見つけ出して下さりありがとうございます。
この十六夜咲夜,死ぬまでお嬢様方の従者としてお守り致しますので
これからもよろしくお願いしますね
コメント
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すっごい好きです… フォロー失礼します!