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『ここまでくれば大丈夫か。まだ腹が痛むか? 多少なら医療魔術の心得があるが』
ガゼボのベンチに私を座らせたアルフォンス様は、魔術の灯りを浮かべて尋ねてくる。
『……いえ、大丈夫です』
『しかし腹が痛いと……』
『た、食べ過ぎです!』
真剣に心配してくれて申し訳ないあまり、私はとっさにそんな言い訳をしていた。
(いくらなんでも思春期の王女が食べ過ぎとか……。他にもっといい理由があったでしょ)
思わず自分に突っ込みを入れるも、アルフォンス様は安堵して表情を緩め、私の頭を優しく撫でてきた。
『……立ち去ろうとする君を見て、初めて会った時の事を思いだした。レティシアはピンクのドレス、君はブルーのドレス。皆は聖女に注目していて、君はそれを少し離れた場から寂しそうに見ている』
言い当てられ、ドキッと鼓動が跳ね上がった。
私を見つめてくるアルフォンス様の目はすべてを見透かしているようで、その視線を受けた私は『敵わない』と感じて根を上げた。
『……どうしてなんでもお見通しなんですか?』
いくら洞察力がある方とはいえ、彼にはもっと気に掛けるべき人がいるはずだ。
今日はレティの他にも他国の王侯貴族が集まっていて、みんながアルフォンス様と話したがっている。
なのに彼らを放って、私なんかを気に掛けるなんて……。
(……勘違いしてしまいそうで怖い)
勘違いした〝じゃないほう〟ほど悲惨なものはない。
本来ならひっそり生きるべきなのに、愛されていると思い込んで舞い上がった挙げ句、『君の事なんて何とも思っていない』と言われた日には、穴を掘って埋まりたいどころじゃ済まなくなる。
(今ならまだ冷静な判断をくだせる)
そう思って彼を見つめていると、アルフォンス様は目を瞬かせて不思議そうに言った。
『君をよく理解しているからに決まってるじゃないか』
そう言われ、ぐだぐだ考えていた思考がポーンと吹っ飛んでいった。
驚いて固まっていると、ベンチに座ったアルフォンス様はリラックスした表情で微笑む。
『いつも手紙を読んでいるから、君がどういう考えの持ち主か分かっているつもりだ。君はレティシアが注目されていたら、徹底して邪魔にならないようにするだろう。しかし、負い目があるとはいえ、俺から見れば悲しい癖だ』
すべてバレていたのが気まずく、私は赤面して言い訳する。
『……ち、違うんです。……美味しそうな料理があったのを思いだしたから、なくならないうちに食べに行こうかと思って』
とっさの言い逃れにしては酷すぎる。これではハラペコ王女だ。
するとアルフォンス様はニヤッと笑った。
『ん? さっきは食べ過ぎだと言っていたが?』
『あっ』
墓穴を掘った私は、目を見開いてからカーッと赤面し、狼狽する。
彼はそんな私を見て微笑み、優しく言い含めてきた。
『レティシアに気を遣うのは分かるし、比べられたくなくて場を去りたくなるのも理解する。自分の心を守るには、なるべくつらい出来事から距離をとるべきだ。……でも俺には隠し事をしないでほしい。フェリの信頼を失ったのかと思ってしまう』
そう言われると、レティに嫉妬し、劣等感を抱いた自分が子供っぽく思える。
(……私には何もかもが足りない)
聖なる力がないのは勿論、レティのように品良く振る舞えないし、王女としての威厳もない。
何かつらい事があれば、理由をつけて逃げようとする。
(……けど)
私は大きく息を吸い、アルフォンス様を見つめる。
――この方は何があっても私を励まし、見守り続けてくれている。
なら……。
『…………私、アルフォンス様の想いに足りる女性になりたいです』
私は彼を見つめ、胸に秘めた気持ちを訴える。
『私には聖なる力も、王女らしさも、誇りも気高さも、何もかも足りません。……けど!』
感情が昂ぶったあまり、目の奥が熱くなり、涙が伝ってしまう。
(こんな大事な時に泣いてしまうなんて……)
いざという時にしっかりできない自分が嫌になる。
アルフォンス様は私を見つめ、優しい表情で頷く。
『君がいつも努力しているのは分かるよ。離れた所に暮らしていても、手紙からフェリの努力やまっすぐな性根、優しさが伝わってくる』
なんとか想いが伝わったようで、私は安堵して溜め息をつく。
けれど、次の言葉を聞いて目が飛び出るほど驚いた。
#虐げられヒロイン
#ファンタジー