テラーノベル
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俺が順番を守らずに自分の自己紹介をすると、あれだけ煩かった教室内の空気が一瞬の静寂に包まれる。
「……む、『無色の紋章』? ――ぷっ!」
誰かがそう呟くと、教室中は大笑いに包まれた。
「マジかよ! 数年に一人出るか出ないかの超大外れ紋章じゃねぇか!」
「こりゃ、ミリアの紋章なんかどうでも良いな!」
「ていうか、今『ミリアを学園一の魔法使いに』とか言ってなかったか?」
「じゃあ、ミリアはこいつに吹き込まれただけかよ~」
「てゆーか、なんで落ちこぼれのお前がそんなに自信満々なんだよ!w」
「根暗ぼっち君が、可愛い優等生に声かけられて色々と勘違いしちゃった感じ~?w」
俺が嘲笑される様子を見て、ミリアが反論しようとした。
しかし、俺はそれを手で制してため息を吐く。
(これで良い、ミリアはまだ15歳の少女だ。自分では大丈夫なつもりでも悪意に晒されて潰れる魔法使いも少なくない。せっかく、ミリアは『大当たり紋章』の青の紋章なんだ。そんな将来有望な人材がこんなくだらない奴らのせいで潰されるなんて許せん)
しばらく、割れんばかりの爆笑が教室内を包むと『パァン!』と空気が弾けるような音がして全員がその方向に注目した。
そこには、風魔法を人差し指の上で炸裂させたアンナ先生がため息を吐いていた。
「――全く、ウチのクラスにはとんだ男前が居るらしいな。誰が優秀で、誰が優秀じゃないかはこれから分かっていくことだろう。じゃあ、次の奴の自己紹介に移れ」
俺にウインクをすると、アンナ先生は俺に座るように促す。
こんな青春ゾンビの問題教師だけど、どうやら人を見る目が少しはあるようだ。
◇◇◇
HRが終わると、ミリアが複数の女生徒たちに呼ばれていた。
「ミリアさん、ちょっとお話しましょ~?」
気味が悪いくらいの猫なで声。
俺は気が付いていないフリをするが、ミリアは俺をチラリと見た。
しかし、すぐに彼女らと向き合うと頷いて教室の外へと連れていかれた。
助けを求めている感じではなかった、むしろ『俺に頼らずに解決しよう』とでも考えているような感じだ。
(ミリア、その考え方は立派だけど時には人に頼る勇気も必要だよ)
ろくでもない事が起こると確信した俺はこっそりと教室を出てその後を追う。
すると、女生徒たちはミリアを連れて女子トイレへと入って行った。
「チッ、仕方がない……『隠れ身の魔法』」
ミリアが得意とする魔法を使い、俺は完全に周囲の風景と溶け込む。
今の状態なら、俺が触れられてもこの学校の生徒程度なら気がつかれないだろう。
すぐにミリア達の後を追って女子トイレに入ると、ミリアは背中を蹴とばされていた。
「痛っ!?」
そして、床に倒れこむミリアに女生徒たちはニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべる。
「キャハハ! 『痛っ!』だって!w」
「つーか、何お前?w 青の紋章なの?w」
「落第決定じゃ~んw」
「中等部ではいつも偉そうにしてたよねw ざまぁ見ろって感じ!w」
ミリアは立ち上がると、彼女達に強い瞳を向ける。
「え、偉そうになんてしてないよ! アナタたちが他の生徒をイジメるから叱ってただけでしょ!」
「それが、偉そうだって言ってんの!」
「何が『優等生』よ。雑魚紋章のくせに!」
「あの落ちこぼれラティスと一緒に居る時は笑ったけどw」
「ラ、ラティス様の悪口はやめなさい!」
「コイツ、なんでいつも自分のことより他人のことにばっかり怒るんだよw」
そう言って、ミリアをもう一度蹴飛ばすと頭を踏みつけた。
他の女子生徒たちもミリアを上履きで踏みつけて笑う。
「ほらほら! やりかえしてみろよ!」
「できねぇだろ? 学内で魔法で人を傷つけたら厳罰だもんなぁ!」
「や……やめて! こんなことしても、意味ないでしょ!」
「意味ならあるわよ? あたしらが楽しいからー!」
……なるほど、コイツらの言い分だと楽しければ人に酷いことをしても良いらしい。
(なら俺も、こいつらで楽しませてもらうか)
俺は魔法の発動を準備した。
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