「よし!俺の役目はもう終わりだからあとはみんな頼んだわ!」
「無能のくせして前に出るからよ…」
「でも、そうしないとお前は止まらなかったろ?」
「いや……まぁ…………うん。」
「なら、大目に見てや」
「じゃあ仕方ない…とはならないって。アンタも死ぬかもしれないんだから」
「言ったろ?俺は才能が無いから最悪死んでもいいけど、お前は才能があるんだ。ソレを後世に伝えろ。それが、才ある者の使命だ」
「カッコつけちゃって…。」
「とにかく俺も動けないし、ルナベルも動けないだろ?あとはマリンにでも任せれば倒せるよ」
「危ない役回りを渡したくはないんだけど」
「ココ最近のマリンは成長が著しい。子供として見るのもこの辺でしまいにしてやろう」
「私はまだ認めないからね。けど、今回は状況が状況だから許すけど…」
「お前はマリンの親か何かなのか?」
「親のつもりですけどぉ?」
「そっかぁ……。まぁ、とりあえず俺らはここから退けよう。」
「退いたあと私が親だということをあなたに力説してあげる」
「けが人が元気に喋るな……。
…てなわけで、マリン。あとは頼んだ。作戦も何もかも思うままにやってみな。そこの三馬鹿も使っていいから」
「三馬鹿って言うな!無能のミナルが!!」
「ミナルお兄ちゃん……。うん!マリン頑張って見るね!」
ルナベルの狂化でミナルを担ぎ、すぐさまマリン達のさらに後ろに引いて戦闘の邪魔にならないようにする。一応直ぐに戦闘できるよう回復薬を飲んだり、塗ったりして対応はしておく。
「私が今度は二人を守る番!絶対に倒してみせる!」
「勢いがあるのはいいが、具体的なプランはあるのかマリンちゃん?」
「後ろから見てた感じルナベルおねーちゃんはあの腕のゴツゴツを壊そうとしてた。」
「まぁ、あそこがあいつの最大打点だろうからなぁ。」
「だからまずはそこを壊す!」
「壊し方は?」
「私の罠魔法で壊せるはず!みんなは私を守って!」
「囮になるではなく守るのか?」
「罠は敵味方関係なく平等に効果を発揮する。変に囮作戦を使うと多分事故に繋がると思うからナシ!」
「なるほど…。しっかりしてるなマリンちゃん。」
「まずは今のくまさんの反応速度を見る!」
そういい紅姫の周囲に複数の罠魔法を設置しマリンは弓を構える。
「さぁ!どうやって私たちを攻撃する!?」
あえてマリンは罠魔法を設置する瞬間を見せながら行った。理由はもちろん相手の出方を見るのと、再度紅姫の知能の高さを知るためだ。
紅姫は少しじっとしたあと右腕を振り上げ、地面を強く打つ。すると、紅姫付近の地面にヒビが入り箇所によっては割れたりする。
(その判断が出来るってことは、やっぱりあのくまさん人と同じくらい賢いかも…)
マリンがそう感じた理由は地面を叩き割るという行動にあるのだ。罠魔法は名の通り地面や壁に設置する魔法であり、術式として『魔法選択→特定の箇所に設置→魔法陣を描く→完成』というプロセスになっている。
これをわかりやすい例を交えると…
『捕縛を使いたい(魔法選択)→自身の前に設置(箇所選択)→捕縛魔法設置(この時捕縛の魔法陣が描かれる)→完成』という手順になり、捕縛が発動するには描いた魔法陣を踏むか通るかしないと発動しない。また、地面に描かれているなら**術式を壊すことが可能**ということになる。
放出系の魔法は術者の杖の先なり、手のひらの上なりで魔法を作り出しそれを相手に投げるようなものだ。例えば炎を放ちたいとなると、炎魔法の術式を手のひらに構築する。そして、それが完成すると術式→炎魔法という別物に変わる。なので、術式は壊されることは基本ない。
しかし、罠魔法は別物で何者かが設置した魔法の上を通らない限りは術式でしかない。何者かがその上を超えるなり踏むなりして初めて術式→魔法に変わるのだ。そのため、描いた魔法陣が完成品でも地面が割れると術式が崩れるため魔法は発動せず、ただ魔力を失うだけとなる。
罠魔法自体はレアな才能の為基本魔物は理解が追いつかず、なすがままとなる。もちろん人間相手でも先程の魔法の知識がないとただのサンドバッグに変わらない。
今回相手する紅姫も、罠魔法の存在は知らないはずだが何処かで術式は壊せるということを学んだのだろう。だから地面に強い衝撃を与えて魔法陣を壊したんだろう。
(まさか壊してくるとは思わなかったから、マリンの手の内を晒しただけになるのか…。けど、それすらも逆に利用してやる…。罠魔法を壊したということはそれだけ厄介なものと理解してるからだ。現に一番最初に【捕縛】で身動きを封じてる。それで学んでいてもおかしくは無い、か…。
考えてマリン。ミナルお兄ちゃんとルナベルおねーちゃんがマリンの為に託してくれたんだもん。失敗は許されないしもちろんするつもりもない!
あのくまさんはマリンが罠魔法を使えるという情報を手に入れたから狙うはマリンのはず。けど、迂闊には近づけない。進んだ先に罠がないとは限らないからだ。なら…相手にさらに選択肢を与える事で思考の時間を長くさせる!)
「みんな!一度マリンから離れて!!」
「なっ!?嬢ちゃん気が触れたか!?」
「そ、そうだよ!マリンちゃんがこの場を切り抜けるためのキーなんだよ!?」
「マリンに考えがある!これが決まれば大打撃を与えられて、みんなの攻撃も通る!」
「……分かった。マリンちゃんを信じよう。」
「しょ、正気かお前!?お前は赤魔道士なんだからサポートだって行けるし……」
「今この場で経験値や歳なんかよりも優先するのは自身よりも強い者の意見を聞くことだ。その策には不足する分は俺らでカバーをする。違うか?」
「うぐっ…。」
「そ、そうだね。今は彼女の策を聞いてその穴を僕らで補填しよう。ルナベルさんの指示を守るのも大事だけど、それに囚われて勝てないんじゃ元も子もない。」
「……だぁぁ!!分かったよ!嬢ちゃんの作戦を教えてくれ!」
「とっても簡単だよ!あのくまさんの狙いはさっきの攻撃でマリンになったはず。優先して攻撃してくる。それを利用する!」
「それってつまりマリンちゃんが囮ってこと?」
「多分そうなるのかな?でも、大丈夫!これが決まれば絶対勝てるもん!」
「…なら、それを信じよう。」
「じゃあみんなはマリンから距離をとってくまさんの攻撃を避けられるようにして!」
「あいよ!」
「了解した」
「うん!」
「そうしたら月読ノ魔道士さんは私に足が早くなる魔法か身軽になる魔法をかけて!」
「分かったよマリンちゃん!」
マリンの指示を信じてマリンに身体強化のバフをかけ、一定の距離を保つ。
「くまさん!これでバイバイだ!」
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