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【第十八話:月下の白翼、限界を超えて】
深夜、廃倉庫が立ち並ぶ湾岸の一角。
松田陣平は、キッドが追う組織の「密輸ルート」を単独で突き止めたものの、敵の罠に嵌まり、完全に退路を断たれていた。
周囲を取り囲むのは、黒ずくめの男たちと、容赦なく浴びせられる銃弾の雨。
「チッ、数が多いな……!」
コンクリートの柱の陰に身を潜め、松田は拳銃を構え直す。だが、背後のドラム缶には、爆発物の信管が仕掛けられているのが見えた。残り時間は数秒。爆弾処理班の彼だからこそ分かる、逃げ場のない死のトラップ。
「おいおい、松田。そこで死なれては困るな!」
遠くから応援のパトカーのサイレンと、降谷零の鋭い声が響く。だが、降谷たちの距離からはどう足掻いても爆発までに間に合わない。
『残り3秒』
松田が死を覚悟し、萩原の顔を思い浮かべた――その瞬間だった。
パリィィィン!!!
倉庫の、遥か高い天窓の強化ガラスが、爆音と共に内側から激しく粉砕された。
夜空から降り注ぐガラスの破片を浴びながら、純白のマントを激しく翻し、一羽の巨大な鳥のように急降下してきた影――怪盗キッドだった。
「――っ、ボウズ!?」
松田が目を見開く。
『残り1秒』
「松田の兄貴、掴まりなっ!!」
キッドは天窓から超高速で落下する勢いのまま、松田の身体をその細い両腕で強引に抱きかかえた。まだ脇腹の傷が癒えていないはずの少年の、どこにそんな力が残っているのか。キッドの異常なまでの身体能力が、大人の男一人の身体を軽々と宙へと引き上げる。
ドガァァァァァン!!!
直後、ドラム缶の爆弾が凄まじい大爆発を起こし、炎の火柱が倉庫を飲み込んだ。
炎の熱波が二人を焼き尽くそうとしたその刹那、キッドは空中でワイヤーガンを対面の鉄骨へと撃ち込み、爆風の揚力を味方に付けて、そのまま一気に夜空の彼方へとスイングした。
「ハァ、ハァ……っ、間に、合った……!」
腕の中で息を荒くするキッドの素顔は、モノクルの奥で必死に耐えている。引きちぎれたマントの隙間から、包帯に血が滲んでいるのが見えた。
「お前、その身体で……なんで来た……!」
「言っただろ。……俺は、あんたを傷つけさせないってさ」
キッドは苦しげに、けれど最高に誇らしげに、松田の腕の中でポーカーフェイスの微笑みを浮かべた。
◇
地上。燃え盛る倉庫の前で、降谷零をはじめとする大勢の警察官たちは、ただ呆然と夜空を見上げて立ち尽くしていた。
「な、なんだ、今の動きは……。人間業じゃない……」
「怪盗キッドが……なぜ、松田刑事を助けたんだ!?」
ざわつく捜査員たちの中、降谷は煙を上げるワイヤーの軌跡と、夜空へと消えていく白い翼を、ただ静かに見つめていた。
公安のどんなデータにもない、あまりにも異常で、命を賭した超人的な身体能力。
そして何より、国際犯罪者であるはずのキッドが、警察の包囲網を、自らの命を危険に晒してまで『松田陣平一人』を救うために突き破ってきたという揺るぎない事実。
「……そうか。そこまでして、君は彼を守るのか、黒羽快斗」
降谷の紫紺の瞳に、驚愕と、そして二人への深い畏敬の念が宿る。
泥棒と警察。その境界線を完全に破壊し、世界の理不尽な闇からお互いを命がけで救い合う二人の絆の凄まじさを、降谷は今、認めざるを得なかった。
コメント
2件
快斗さんと松田さんの絆(?)はそれだけ深いものなんだね……!
**美月ゆめか🌸の感想:** うわああああ第18話やばすぎた…!!😭💕💕 天窓からキッドが飛び込んで松田を助けるシーン、マジで鳥肌止まらんかった…!怪我してるのに「あんたを傷つけさせない」って、その執念やばすぎん??しかも降谷さんが「黒羽快斗」って心の中で呼んだ瞬間、世界観ぶっ壊れるかと思った…!笑 泥棒と警察の境界線ぶっ壊して命懸けで守り合う、この絆が尊すぎて泣く。次回も絶対読むよ!!📖✨