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【第十九話:月下の審判と、新たな誓い】
廃倉庫から少し離れた、ビルの屋上。
ハンググライダーを畳んだ快斗は、限界を迎えたようにコンクリートの床へ膝をついた。脇腹の包帯からは、じわりと赤い血が滲み出している。
「おい、ボウズ! しっかりしろ!」
松田はすぐさま駆け寄り、その細い身体を抱きすくめた。
「ハハ……。大丈夫、だよ、松田の兄貴……。ちゃんと、生きてる……」
快斗は青白い顔で、それでも安心したようにふっと微笑んだ。
「――全く、二人してとんだ大馬鹿野郎だな」
暗闇から響いたその声に、二人の身体が同時に強張った。
ゆっくりと振り返れば、月明かりを背に受けた降谷零が、静かに歩み寄ってくるところだった。中森たち一課の警察官の姿はない。彼は公安のトップとして、単身で二人の行き先を完全に先読みしていたのだ。
「ゼロ……お前、なんでここに――」
松田が快斗を庇うように前に出るが、降谷はそれ以上距離を詰めず、ただ二人を見下ろして静かに息を吐いた。
「地上でのあの無茶な芸当、そして君たちの今の様子。……これ以上、僕に何を疑えと言うんだい?」
降谷の紫紺の瞳には、冷徹な公安の光ではなく、どこか呆れたような、けれど温かい色が灯っていた。
「黒羽快斗。君の異常なまでの身体能力と、命がけで松田を救ったその覚悟……確かにこの目で見せてもらった。国際犯罪者として君を捕縛する理由はいくらでもあるが、君がその力を、大切な人間を守るためだけに振るっているというなら」
降谷は一度視線を外し、夜の街を見つめた。
「君たちが追っているあの『組織』は、僕たち公安にとっても排除すべき日本の害悪だ。……君一人にその重荷を背負わせるほど、日本の警察は無能じゃない」
「……え?」
快斗がモノクルの奥の目を見開く。降谷の言葉は、実質的な『見逃し』、そして『共同戦線』の提案だった。
「勘違いしないでくれよ、松田。君がこれ以上独断で不祥事を起こさないよう、僕が監視(サポート)してやるという意味だ」
「へっ……相変わらず言い草の可愛くねぇ奴だぜ、ゼロ」
松田はフッと口元を釣り上げ、隣の降谷に拳を軽く突き出した。降谷もまた、小さく笑ってその拳を軽く合わせる。
降谷は最後に、ソファで息を整える快斗へと視線を戻した。
「黒羽くん。君の親父さんの事件のデータ、公安の権限で開示できるものは松田に渡しておく。……ただし、次からショーをやる時は、僕たちをあまりハラハラさせないことだね」
「……、……うん! ありがと、お巡りさんたち!」
快斗は完璧なポーカーフェイスを忘れて、少年らしい、心からの眩しい笑顔を見せた。
月光が照らす屋上で、お互いの正体も、背負う覚悟もすべて共有した三人の警察官と怪盗。
泥棒と警察という境界線を超え、彼らは大切なものを守るため、これから始まる巨大な闇との戦いに向けて、静かに、けれど世界で一番強固な絆を結び直したのだった。
コメント
5件
最後少年らしさを取り戻した快斗さんが眩しくて……… 誰も傷つかないで、傷つけないでよかった……!
続き読みたいですか?一応これで完結はしているけど⋯
うおおおおお!!第19話、めっちゃ熱かったです!!😭✨ 降谷さんがついに快斗の覚悟を認めて、しかも『見逃し』どころか『共同戦線』組むって展開に胸アツすぎてもう大号泣ですよ…!!松田さんとの拳合わせるシーン、最高にエモかった…💕 「次からショーやる時はハラハラさせないで」って降谷さんの台詞、完全に親バカというか兄貴分ムーブでしょこれ!!快斗の少年みたいな笑顔もめっちゃ眩しかった〜!!泥棒と警察の壁を越えた絆、これからもずっと応援してます!🔥