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(律……どこ?)
コンビニに行ったけど律の姿はなくて、今度はスーパーへと向かう。
「……居ない……」
けれど、やっぱりスーパーにも居なかった。
連絡しようにも律のスマホは家にあったから、連絡は取れない。
一体どこに居るのかと途方に暮れていると、
「あ……雨……」
とうとう雨が降り出して来てしまう。
スーパーを出てから土手の近くを歩いていた私は一旦雨宿りをしようとスーパーへ戻り掛けた、その時、
「……律……?」
河原で傘も差さずに話をしている男女の姿を見つけると男の人の方は律で、女の人は――鈴さんだった。
遠くからだから何を話しているのかは分からないけど、二人は何だか揉めているように見える。
そして、鈴さんが泣きながら立ち去ろうとしていた時、律が彼女の腕を掴むと――そのまま自分の胸の方へ引き寄せて抱きしめていた。
見たくない光景だった。
きっと、何か理由があったんだと思う。
仕方無かったんだと思う。
だけど……嫌だった。
あんな風に彼女を抱きしめてる律の姿なんて、見たくなかった。
「…………戻ろう」
途中雨脚は強まり、既にずぶ濡れ状態の私は今更焦る事もせず、雨に打たれながらアパートへ戻って行った。
アパートに着いた私はシャワーを浴びて、濡れた制服を乾かしていた。
あれから一時間くらい経つけど、まだ律は帰って来ない。
「…………律……」
早く帰ってきて欲しいけど、あの事を聞くべきか、それとも何も言わないべきなのか迷っていたそんな時、
「ただいま、あーすげぇ降られた……」
ようやく律が帰って来た事で、ひとまず安堵する。
「律、おかえり」
「おー来てたんだ? ってか琴里も降られたんか?」
「うん、そうなんだ。急に降ってきたからね」
「つーことは、まだ来てからそんなに経ってねぇんだ?」
「……うん。そうだけど、それがどうかした?」
「いや、何でもねぇよ。俺もシャワー浴びてくるわ。琴里、悪いけどお湯沸かしておいてくれ。出たらコーヒー飲むから」
「うん、分かった」
そう言って律はお風呂場へ向かって行った。
鈴さんと会ってた事は、何も言ってくれなかった。
「……どうして隠すの? 言えない理由が、あるの?」
聞きたいけど、怖い。
律が黙っているつもりなら、聞かない方がいい。
そう思った私は、さっき見た事は忘れようと心に決め、お湯を沸かして律が出て来るタイミングでコーヒーを淹れた。