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第十章①
激突
―魔獣襲来―
巫女たちと神官が割れた窓から外へ飛び出すと、街はすでに魔獣で溢れ返っていた。
建物は壊され、人々の悲鳴が夜空に響き渡る。
「逃げろ!」
「誰か助けて!!」
逃げ惑う人々を目にした煉華は、刀を強く握り締め魔獣へ向かって駆け出した。
「関係ない人たちを巻き込まないで……!!」
握り締めた刀を鞘から抜く。その瞬間、朱雀の紅き焔が舞い上がり、魔獣だけを包み込んだ。
「……神殿で闘った魔獣と違う? ……これは……」
蒼紫は扇を構え、静かに風を巻き起こす。
風は次第に勢いを増し巨大な竜巻となると、魔獣たちを巻き上げ、鋭い風刃で次々と切り刻んでいった。
「ご飯をジャマされた恨みを思い知れー!」
琥珀は双剣を構え、一気に魔獣たちの間へ飛び込む。
一瞬。
カチン――。
冷たい音を響かせ双剣を鞘へ納めた。
その刹那、琥珀が駆け抜けた場所にいた魔獣たちは、一斉に首を落とし崩れ落ちていく。
「お願い……っ。これ以上、街の人も街も壊さないで……!」
詞葉は錫杖を強く握り締め、天へと高く掲げた。
優しい光が街全体を包み込み、崩れかけた建物と逃げ惑う人々を守るように結界が張られる。
「さすが巫女さま方……」
羅刹は柔らかな笑みを浮かべ、四人を慈しむように見つめた。
「闘うお姿も、まるで神へ捧げる舞のようにお美しい……」
その時、一体の魔獣が羅刹へ襲いかかる。
しかし羅刹は表情一つ変えず、袖口から鎖付きの短剣を放った。
鋭く放たれた刃は魔獣の急所を貫き、そのまま絶命させる。
やがて最後の一体が倒れ、街に静寂が戻った。
建物には大きな被害が残り、多くの負傷者も出ていた。
それでも巫女たちの活躍により、幸い死者は一人も出なかった。
「お疲れさまです、巫女さま方。お怪我はございませんか?」
羅刹が穏やかに声をかける。
「はい。神官さまも、ご無事で何よりです」
煉華は安堵したように微笑んだ。
「たくさん動いちゃったから、お腹空いたよー」
琥珀がいつもの調子でお腹を押さえる。
「そうですね。では宿へ戻りましょうか、巫女さま方」
羅刹がそう言って歩き出そうとした、その時――。
「待って……話があるの」
蒼紫の真剣な声に、その場にいた全員が足を止め、一斉に蒼紫へ視線を向けた。
第十章②
迫る脅威
―違和感―
「どうかしましたか、神代さん……話とは?」
街の人々の手当てをしていた詞葉も、蒼紫の真剣な声に手を止め、皆のもとへ駆け寄った。
「今の敵……神殿で闘った魔獣と、何か違うと思わない?」
「うーん……姿形は違ってたよ? あとは……前の敵より硬かった?」
琥珀は首を傾げながら答えた。
「……集団行動してた」
小さく呟いた煉華の一言に、その場にいた全員が驚きの表情を浮かべる。
「そう……。まるで誰かの指示に従って動いているみたいだったの」
羅刹は静かに頷いた。
「青龍の巫女さまがおっしゃる通りです。中級以上の魔獣は言語を理解し、ある程度の統率を取ることができると報告されています。つまり、先程の魔獣たちは中級以上ということになります」
羅刹は落ち着いた口調で説明した。
「えっ……つまり、それって……」
詞葉は錫杖を握る手に力を込め、不安そうな表情を浮かべる。
羅刹は静かに頷いた。
「これから先……敵の力はさらに強大なものとなるでしょう」
煉華は刀の柄を強く握り締め、小さく呟く。
「……気を引き締めないと」
その時だった。
羅刹の穏やかな表情が一変する。
「巫女さま方! お気を付けください!」
周囲を鋭く見渡しながら羅刹が叫んだ。
「先程とは比べものにならないほど強大な気配を感じます!」
その言葉と同時に、大地が低く震え始めた。
ズシン……。
ズシン……。
重々しい足音が夜の街に響く。
「な、何……?」
詞葉が息を呑み、琥珀は双剣を握り直した。
すると、負傷し、その場に倒れ込んでいた魔獣たちまでもが、ゆっくり起き上がり一つの方向へ頭を垂れた。
まるで、”王”を迎えるかのように――。
その闇の奥から、一人の男がゆっくりと姿を現した。
そして、その背後には先程の魔獣とは比べものにならないほど巨大な魔獣たちが静かに立ち並んでいた。
その圧倒的な威圧感に、誰1人として言葉を発することができなかった…
コメント
1件
いやあ、圧巻のバトル回でしたね!煉華さんの朱雀の焔、蒼紫さんの竜巻、琥珀さんのかっこいい居合い、詞葉さんの結界…それぞれの個性が光る戦闘描写で、読んでいて鳥肌が立ちました。特に「カチン」という音だけで魔獣を倒した琥珀さんのシーンが痺れます。 そして最後の「王」の登場…羅刹さんの表情が一変したあの緊張感、たまらなかったです。魔獣たちが頭を垂れる描写も、階級社会の奥深さを感じさせて。この先どうなるのか、続きが気になって仕方ありません!