テラーノベル
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るあ⭐︎ 🍑🌙💧
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※自己満なので詳しい設定は書かれてないです
思い出すのは、黄金のヒマワリ畑。
私と“お姉ちゃん”が幸せだった頃の、優しい記憶。
ヒマワリはただ、太陽の方を向いていた。
掴もうとするわけじゃない。ただ、見つめていただけだった。
私は考えた。
「幸せを見つめるだけで掴むことができないだなんて、可哀想」だと、そう思った。
間違っていた。
幸せを見つめているだけで、十分幸せだったんだ。
今の私たちには、幸せを見つめることすら
「ねぇ、聞いてる?」
冷たくて低い声に、“メル”は思い出の世界から引き剥がされた。
「困るな、ちゃんと聞いてくれないと。そんなにお兄ちゃんの声が耳障りかな?」
メルはびくりと肩を跳ねさせ、硬直した。顔は上げないまま、目の前にいる彼を見る。
彼は微笑んでいた。
前髪で隠れかけている瞳は、光を宿していない。こちらを見ているのかもわからなかった。
「話の続きなんだけど、お兄ちゃんは貴女にssbを抜けてほしくないんだ。
メルは1人でお仕事できないでしょ?お兄ちゃんとssbを続けるのがいいと思うな。」
“侵略者殲滅部隊”、通称“ssb”。
侵略者殲滅、なんて正義のような名称だが、実際は戦士を皆殺しにする目的の組織だ。
メルはssbに所属し続けるのが、嫌で嫌で仕方がなかった。
「………あ、あたし………1人でも………」
メルが口を開きかける。
ドガァッ
「ひっ」
鈍い音が響いた。彼が、机に拳を殴りつけた音だ。
「………し、シルバー、お兄ちゃん………」
彼はゆっくりと頬杖をつき、小首を傾げて微笑む。
「できないだろ?お兄ちゃんはちゃんと貴女のこと、わかっているからね。
だってそうだよね、貴女はずうっと昔から、お兄ちゃんに引っ付いてばっかりで、
何かあるごとに、私に助けてもらってたもんね。
懐かしいな、子供の頃は、私ずっっっっっと貴女のこと守ってたもん、ね?」
否定したかった。が、彼の言う通りだった。
ことあるごとに、彼に守ってもらっていたのだ。
同級生にいじめられても、父親に殴られそうになっても、
父親が赤い目で、胸に手を伸ばしてきたときも───
「子供の頃は」、という響きに、メルは思わず下を向いた。
「………………………。」
沈黙が痛い。
何も言われていないのだ。それなのに、鼓動は早まっていくばかり。
メルが顔を上げようとした、その瞬間───
バシャンッ
「…………ぁ」
頭上から、冷たい感覚が走る。
自分の長い黒髪から、リズムを刻むように、透明な雫が滴り落ちている。
水だ。
正面にいる彼は、さっきまで水が入っていた、プラスチックのコップを握っている。
「聞いてないよね?」
冷水よりも冷たい声が、頭の中で反響するように響いた。
「き、きい、て……聞いて、る…………」
か弱く、掠れた声が、喉からこぼれ落ちる。
鼻の奥がツンと熱くなり、瞳に映っている彼が、じわりと歪み始める。
目から溢れた涙は、被った水と区別がつかなかった。
「………なんかもう、いいよ。」
柔らかく、優しい声が聞こえた。
ほんの少しの声色の優しさと、「いいよ」という言葉に、 メルは思わず救われかける。
「……い、いい、って………」
「全部、わかったよ。」
彼の声に、諦めのようなものが滲む。
「貴女が好きなのは、
“お兄ちゃん”じゃなくて、“お姉ちゃん”だもんね。」
彼が微笑んで発した言葉に、メルの心は、完全に凍りついた。
ぽっ、ポツ、ポツポツ……
ザァァァァァァァァァァァァァァ
彼の背後にある窓に、水玉模様が増えていく。
瞼が、ピクピクと痙攣し始める。
口は、薄く開いたまま、動かない。
固まっているメルを横目に、彼は立ち上がり、背中を見せた。
「とりあえず、ssbは辞めさせないから。頭冷やしておいてね。」
無慈悲なことに、振り返りもせず、彼の足は玄関の方へ向いていた。
メルは唇を噛み締める。
血の味が滲んだ。
「───お兄ちゃん!!!!」
ピクリ。
彼の歩みが、止まった。
振り返る様子は、ない。
「……そ、その……あたしは、お兄ちゃんが助けてくれたこと、忘れないから……」
「……………。」
「………お兄ちゃんは、お姉ちゃんだから……!!!」
「……………………。」
沈黙が続く。
部屋に響いているのは、雨が降る音と、床が軋む、鈍い音。
……余計なことを言ってしまったのではないか。
また、殴られるのではないか。
そんな思考が、頭の中で渦巻き始める。
「メル。」
名前を、呼ばれた。
慌てて顔を上げる。
彼が見せているのは、笑顔ではなく、後頭部だけ。
「“お姉ちゃん”は、どこにもいないよ。」
彼はそう呟いてから、ビニール傘を片手に、外に足を踏み出してしまった。
バタン。
そうだ、もう姉はいない。
あの頃の“優しいお姉ちゃん”は、世界中のどこを探しても、見つかることはない。
「…………ごめん、なさい………」
嗚呼。
この救われない孤独を、
雨は、洗い流してはくれなかった。
終
コメント
7件
あ……あわわ… (訳:上手すぎて語彙力が外へ 行きました マジで大好きです(( )
この話すきすぎます……╰(*´︶`*)╯♡ シルバーおにいさんがかっこいい✨ 表現とか、めっちゃすきですっ!☀️
この第1話、一気に引き込まれました……。最初の黄金のヒマワリ畑の回想、あの優しい記憶が、今の冷たくて支配的な“お兄ちゃん”との対比で胸がぎゅっとなる。水をかけられたシーンとか、メルの震えが伝わってきて、読んでるこっちまで息が詰まりそうだった。「お姉ちゃんはどこにもいない」って最後の言葉、重すぎるよ……。この孤独感、雨が洗い流してくれないって描写がすごく刺さりました。続き、気になります。