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「ごっ、ごめん!! ほんまにごめん!!!」
シーツが大きく波打つ音と共に勢いよく起き上がった彼が、必死の形相で謝りながら僕の口元に自分の両手を差し出してきた。
水が漏れないようにとでも言うように、不器用に受け皿の形を作っている。
「……ん、?」
あまりの狼狽えぶりに、僕はまだ頭がぽわぽわとしたまま、訳が分からず首をかしげた。
「ほんまごめん、じゅう!! 出してええから!! はよ!! 吐き出して!!」
「え……もう、飲み込んじゃった……」
そう言って、口をあー、と小さく開いて彼に見せる。
口の中には本当に何も残っていないことを確認した瞬間、しゅんは嘘みたいに絶望した顔をして頭を抱え込んだ。
「……しゅん?」
恐る恐る名前を呼んで、彼の顔を覗き込む。
顔を上げた彼の瞳には、自分でも制御できなかった欲望への、そして何より僕を傷つけてしまったかもしれないという、底なしの罪悪感がこれでもかと浮かんでいた。
そんな顔、大好きな彼にしてほしくない。
胸の奥がキュッと締め付けられて、僕は居ても立っても居られなくなり、ベッドの上で膝立ちになると、しゅんの大きな身体に勢いよく抱きついた。
「しゅん、そんな顔しないで?」
「……じゅう、……っ。俺、我慢できなくなってもうて。あんな、手荒なこと……ほんま、ごめん、……」
「しゅんだから、全然嫌じゃなかったよ?」
「……ほんま、……? 怖くなかった……? いやじゃなかった……?」
しゅんは僕の肩に顔を埋めたまま、声を震わせて怯えるように問いかけてくる。
「うん! ……だってね、しゅんの目、ずーっと俺のこと好きって言ってくれてるみたいに、すごく優しかったから。だから全然怖くなかった」
「それは……じゅうのことが好きやから、そうなんやけど……。でも、俺の理性が途中から完全にどっか行ってしまったんよ……」
僕の腕の中で、彼は明らかに後悔の表情を浮かべて、自分を責め続けている。
「ねぇ……そんな顔しないでよ。今したこと後悔してほしくない」
「ちゃうねん……。じゅうの過去も傷も全部聞いて、もっと大切に、もっと優しくしたかったんに……っ」
「俺は、しゅんにあんなに激しく愛されてるのを感じて本当に嬉しかったんだよ?」
「……じゅう、……」
「確かに、最初はちょっとびっくりはしたけどね。へへっ… でもね、すごく幸せだったから」
「、、じゅうーーーーーっ!!! 」
しゅんは僕の名前をまあまあな大声量で叫びながら、今度は彼のほうから力任せに僕に抱き着いてきた。
「ふふっ、さっきまでの強引でかっこいい舜太はどこに行ったの??」
「……もう、二度とあんな風にしないって、約束……する……っ、」
完全にしょんぼりとした大型犬に戻ってしまった彼が可愛くて、僕はわざと少し意地悪な笑みを浮かべて彼を覗き込んだ。
「えー? もうしてくれないの……?」
その一言の破壊力は、案の定効果覿面だった。
「ちょっ!! じゅう!!! こ、困るわ! そんなん……煽られたら我慢できへんっ!!!」
子犬のようにプリプリと怒りながら全力で焦っている彼の姿を見ていたら、僕の身体から、これまでのすべての緊張と強張りがすぅーっと綺麗に抜けていくのを感じた。
過去の心の傷も、消えてはくれない左脇腹の傷も、この温かい部屋の空気のなかに完全に融けて消えてしまったみたいだ。
「しゅん……このまま一緒に寝ちゃお?」
「あぁー…。もう、ほんま、じゅうは天使すぎて……。俺をどうしてくれんねん……っ」
唐突にまた頭を抱え込むしゅんの姿が、なんともおかしくて笑えてくる。
愛おしい。
本当に、どうしようもないほど愛おしい人。
僕は今度こそ誤魔化さずに、自分から彼の胸の中にぎゅーっと深く抱き着いた。「よしよし」と言いながら、しゅんはベッドの端に追いやられてしまっていた掛け布団を引き寄せ、僕の身体に優しく、丁寧に掛け直してくれる。
そして、自分の腕を僕の首の下へと滑り込ませて腕枕をすると、僕の身体のすべてを包み込むようにして腕の中に閉じ込めてくれた。
しゅんの男らしくて甘い匂いと、世界で一番大好きな温もりに丸ごと包まれて、僕はゆっくりと深い息を吐きながら心地よい疲労感のなかで意識をそっと手放し、穏やかな眠りへと付いた。
to be continued…
ち び
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