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深い眠りの中、僕の髪を優しくなでる心地よい手。
僕はこの手が本当に好きだ。
男らしくて、骨張っているのにどこまでも優しくて。
温かくて、包まれているだけで心がとても落ち着く。
「……っん、……、」
……あれ、ここ、どこだっけ……?
カーテンの隙間から溢れた日の光が、瞼の隙間から優しく入り込んでくる。
その眩しさに、僕はゆっくりと瞼を開けた。
「……、あ…」
僕が目を開けると、すぐ目の前で、しゅんの優しい眼差しが僕をじっと見つめていた。
「お寝坊じゅうちゃん、おはよーさん」
お寝坊……。
確かにずいぶんぐっすり深くまで寝ていたような気がする。
「……今、何時……?」
「えーっとなぁ、あと15分で9時やで?」
「え……まじ……っ?」
一気に頭が冴える。
「えらい気持ちよさそうに、ふにゃふにゃになって寝てたなぁ?ふふっ」
「わぁーー! まじごめん、しゅん!」
「ええで? その代わり、はよ起きて? 朝食、9時までに入らな終わってまうから!」
「えっ? え、ちょっ、待って!!」
「ほら、寝癖直して歯磨いて、はよ行かな間に合わん!!」
「えっ、ま、……っ」
まだ寝ぼけて頭が回っていない僕の手首を掴み、しゅんはベッドからグイっと力強く起き上がらせた。
そのまま流れるような動作で洗面台へと連行される。
鏡の前に立たされて、前かがみにさせられたかと思えば、しゅんの手によって優しくパシャパシャと顔を洗われた。
驚いている間に、今度は歯ブラシが僕の口にすぽっと突っ込まれる。
「ほら、自分でシャカシャカして!」
僕が必死に手を動かしている間に、しゅんはブラシを手に取って、僕の盛大な寝癖を器用に直してくれた。
口に溜まった泡をペッと吐き出すと、すぐ横から、すかさず水の入ったコップが差し出される。
僕はそれを受け取り、口の中をガラガラと流した。
口元についた小さな水滴まで、しゅんが手元にあったタオルで優しくトントンと拭いてくれた。
「はい! イケメン柔太朗の出来上がり!! ほら、行くで!」
まるで小さな子供のお世話をするみたいに全部を終わらせると、しゅんは僕の手を引いて早歩きで朝食会場に向かって駆け出した。
「遅れてすみません! まだ、間に合いますか……っ?」
会場の受付に到着し、彼が息を切らしながら店員さんに聞いてくれる。
利用時間の終了本当にギリギリだったけれど、なんとか滑り込みで間に合ったみたいだ……。
案内された席につき、僕は小さく息を吐いた。
「……寝すぎて、本当にごめん」
「ふはっ ほんまやで!」
「……、起こしてくれたら良かったのにぃ……」
「いや、だってじゅうの寝顔が天使すぎてなぁ。ずーっと見つめてたら、気付いたらこんな時間になってたんやもん!」
「……っ、なに言ってんの? ……でも、本当にごめんね」
「ええよ!! じゅうがゆっくり眠れてよかったわ!」
しゅんは全く怒る風もなく、むしろ嬉しそうにクシャッと笑う。
言われてみれば深く眠れたからか身体が驚くほど軽くて、すっきりとしていた。
「あ、そうや! じゅう、朝方にめちゃくちゃ可愛い寝言言ってたで?へへっ」
「え、うそ、なんて……?」
「…『しゅん、だいすき』……って!!!!」
「え、うそだ!!!//」
「えー? ほんまやで! 録音しときゃ良かったわぁ!ふへへっ」
最悪だ……。
一体何の夢を見たのか全然思い出せない。
でも、彼の腕の中で見たあの夢は、とても温かくて幸せな夢だった気がする。
だから……もしかしたら、その寝言は嘘じゃないかもしれない、なんて胸の奥がキュンと甘く疼いた。
「もう、からかわないで忘れて!!」
「へへ~それは無理やよ~! 俺の心のメモリーにしっかり保存したからな~」
「最悪〜……っ//」
そんな風に僕が顔を真っ赤にしているうちに、テーブルの上へ手際よく朝食が準備された。
美味しそうな和食の数々。
それを見つめた瞬間、お腹がすいていたのを思い出した。
グゥー……。
朝食を目の前にして、僕のお腹が静かな空間に盛大に鳴り響いた。
「ぷぷっ!! ほんま、じゅうの体は素直やね!」
「お腹すいたんだもん……! 仕方ないじゃん!」
「まぁ、素直なのは凄く良いことやなぁ? ……自分の気持ち我慢できなくなっちゃうのも……めちゃくちゃかわえぇしな?……昨日みたいに、」
しゅんがニヤニヤと、やけに意味深なトーンで声を低くして言うものだから。
昨夜の自分を顔が一気に沸騰した。
「……ちょっと、なんか、言い方……//」
「なにー? お腹すいて我慢できひんから、お腹が鳴っちゃうって話やで?んー?」
「……っ、……//」
「じゅうちゃん、なんの話やと思ってるんー?ふふっ」
「……もう、最悪、」
「ふははっ!! はよ食べよー! いただきまーす!!」
「……いただきます」
これ以上ないくらい嬉しそうな、満足げな顔をしちゃって。
まじで腹立つ。
でも、恥ずかしすぎるけれど、その意地悪な笑顔の奥にある彼の瞳は、とても優しかったから…。
to be continued…