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「もみじちゃん。今は何を書いてるの?」



「う~ん、正直ネタに困ってる。溺愛系の恋愛話なんだけど、ちょっとインパクトに欠けるのよね」



都田 もみじ(つだ もみじ)。

私のいとこで同い年の彼女は、153cmで小柄、あまり化粧っ気はないけど、目力がある。



「そうなんだ。インパクトがある方が読者さんに刺さるのかな?」



「そうなのよね~良い感じのネタないかなぁ」



真剣に悩むもみじちゃんは、黒髪を1つに束ね、無造作にクリップで留めたり、お団子にしたり、ラフな感じが可愛い。



小さな頃に両親を亡くした私は、母の妹であるもみじちゃんのお母さんに引き取られ、今も一緒に暮らしてる。26歳になってもまだこの家にいるのには、色々理由があるけど、ずっと面倒を見てくれたおじさんとおばさんには……感謝……してる。



「恋愛小説が書けるなんてすごいよね。私は読む方が好きだから」



「双葉ちゃんなら書けるよ。色々経験してるんだから。それを小説にしてみたら? 書くの楽しいよ」



「無理だよ、私なんて。もみじちゃんの書く小説を読ませてもらうだけで十分。次も楽しみにしてるね」



私をずっと本当の姉妹みたいに思ってくれてるもみじちゃんは、自作のお話をいくつかの小説投稿サイトにアップしている。いつもランキング上位にいて、とても人気の作家さんだ。



彼女の部屋と私の部屋は2階の隣同士だけど、たまにもみじちゃんの部屋に呼ばれて、こんな風に話をする。



「そうだ! ねえ、あの話、詳しく聞かせてよ。小説の参考にしたいの」



「あの話?」



「そう。双葉ちゃんが詐欺にあった話」



「え、あっ、あれは……」



思わず言葉に詰まる。



「実際に詐欺にあった友達とかいないし、小説にしたら絶対インパクトあるよね、きっと」



目をキラキラ輝かせて私を見るもみじちゃん。



「……ごめん。あの時のことはもう忘れたいの。だから……」



「残念~。双葉ちゃんの話詳しく聞きたかったのに。詐欺にあってお金を盗られたって……」



「ダ、ダメだよ、すごくつまらない話だから。あんなの小説にしたって全然インパクトないよ」



笑顔で言ったけど、何だか心が痛くなった。

でも、もみじちゃんには悪気はない。



「双葉ちゃんの意地悪~。まあ、いいけど。とりあえず早く書き上げてコンテストに応募しなきゃ。締め切りがあと少しなんだよ。他にも挑戦したいコンテストもあるし、もういくら時間があっても足りないよ」



「もみじちゃん、すごい。頑張ってね、応援してるから」



「ありがとう~。双葉ちゃん大好き」



もみじちゃんには才能があると思う。実際、読んだらとても面白くて、その世界観にどっぷり引き込まれる。たくさんの物語を作り上げ、様々なコンテストに応募してて、夢は恋愛小説の人気作家になることらしい。

その夢、私はいつか必ず叶うって信じてる。



「2人ともご飯だよ、降りてきなさい」



下からおばさんの大きな声がした。

世界で1番幸せな私~イケメン御曹司の一途で情熱的な溺愛に包まれて~

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