テラーノベル
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昼休みが終わったあと。
休み時間に女子たちの視線やからかいを受けて、〇〇は心がざわざわしていた。
(やっぱり、亮と距離を置いたほうがいいのかな……)
そう思いながら教科書を開いていると、横からひそひそ声がした。
「……気にしてる?」
驚いて顔を上げると、亮が自分の席から身を寄せ、声を落としていた。
「えっ……な、なにを?」
「みんなの噂。……○○が俺と一緒にいるせいで、やりづらいなら、俺は控える」
その瞳はからかいじゃなく、真剣そのものだった。
〇〇は戸惑いながらも、小さく頷いた。
「……だって、私のせいで女子に嫌われちゃったら困るでしょ。亮は人気者なんだから」
亮は一瞬黙り込み、それから小さく笑った。
「……違うよ」
「え?」
「俺は人気なんて欲しくない。ただ、○○といたいんだ」
心臓が跳ねた。
「みんなの前で○○に話しかけたり、隣に座ったりするのは……俺が“○○を特別に思ってる”ってことを示したくて。からかわれても、嫉妬されてもいい。○○が一人にならないなら、それでいい」
〇〇は言葉を失った。
まっすぐにこちらを見つめる亮の瞳に、からかいや軽さなんて一切なかった。
「……亮……」
次の瞬間、チャイムが鳴って教室がざわめき始めた。
気持ちを言葉にする間もなく、亮は自分の席に戻っていく。
(どうして……こんなに胸が熱くなるんだろう)
〇〇は教科書の文字を見つめながら、頬に広がる熱を抑えられなかった。
第5話
〜完〜
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