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(――送ってしまった!)
一度は思いとどまった復讐だが、今回は違った。どうしても許せない。美晴が浮気したせいで感染症にかかって子供を流産させてしまったなど、まったくのデタラメな話だ。まさか流産の原因を作った張本人の幹雄が、義母と一緒に自分を攻撃してくるなんて。
(許せない。絶対に許せない!!)
美晴はアプリからの返信を待った。画面が切り替わり、キラキラとした金色のグラデーションの中央に『Re』という文字が映った。Reを中央に花柄があしらわれているロゴのようだ。復讐などまるで無関係のような画面に戸惑った。
(えっ……この先どうしたらいいのかな)
画面を見つめていると、メッセージの着信があった。アプリから返信だ。
『復讐をお望みですね。承知いたしました。
わたしがあなたの復讐を全力でサポートいたします』
(嘘じゃなかった…本当に復讐するんだ……)
『当アプリはポイント制となっています。これ以降の情報はポイントを利用の上、情報を閲覧ください。1ポイント100円で換金可能です』
(あ……お金がいるんだ……)
美晴は画面を見つめて考えた。このアプリは美晴の感情や願いを利用しているのではないか。一度気持ちが高まったときに復讐の手続きを進めたが、怪しいシステムに巻き込まれることのリスクを考えると不安が募った。
どうしようかと思ていたら、続けて料金に関する内容が送られてきた。提示されたものは以下の通りだ。
『夫への復讐方法:1000P
愛人情報:500P
ここには無い秘密の情報:800P(1週間ほどお時間をいただきます)
相談:50P』
(幹雄さんへ復讐する方法って1000Pもいるんだ……そんなお金ないよ……)
美晴は肩を落とした。独身時代の貯金は幹雄に渡してしまったので、彼が握っている。会計士である彼が管理するという名目だ。
美晴は自分のものを自由に買うお金は渡されていない。欲しいものがあれば、幹雄にお願いして買ってもらうというのが松本家のルールだった。
自由に使えるお金がない美晴には、すぐに情報を買うことができない。やはり怪しいシステムである。もう止めようかと思ったが、あれだけ酷い暴言を吐かれたり浮気を疑われたのだ。そのうえ子供を失う原因を自ら作っておきながら、反省もせずに責め立ててくる幹雄をどうしても許せなかった。
夫への復讐方法:1000P というものを、どうしても見たい!
――自由に使えるお金を私は持っていません。どうすればいいですか?
美晴はチャット画面に支払いができないことを正直に打ち込んだ。
『支払いが困難な方は、条件達成でポイントを入手することも可能です。松本様はこのアプリを初めてご利用になりますので、初回特典の“相談:50P”をプレゼントいたします』
50Pもらえるのはありがたいが、夫の情報には程遠いポイント数だった。1000Pともなれば現金で換算すると10万円も必要になるということだ。
(無料って言うけれど、内部課金があるなんて…)
美晴はため息をついてもう一度内容を見つめ直した。
夫への復讐方法、次いで愛人情報――……愛人!?
(えっ。愛人って……もしかして幹雄さん、愛人がいるの!?)
確かめずにはいられずに、50Pを消費してアプリに尋ねた。
――私の夫、松本幹雄に愛人はいるのですか?
アプリはすぐに返事をくれた。
『はい。いらっしゃるようです。詳しいことがお知りになりたい場合は、アプリ内課金『愛人情報』から閲覧ください』
衝撃だった。まさか…夫に愛人がいるなんて――!
にわかには信じらないが、美晴の個人情報を全て言い当てたアプリだ。信憑性は高い。