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第2章王都という名の混合槽(ミキサー)
第6話:異世界の朝はだいたい騒がしい
「起きろ、野山健!」
「無理……人類は睡眠を必要としてる……」
健は焚き火の横で毛布に包まり、完全に溶けていた。
昨夜は異世界初夜ということで、警戒して寝不足だったのだが――
本人はその事実をすっかり忘れている。
「ここは森だぞ! 魔物が出る!」
「大丈夫……昨日のゴブリンより弱い奴なら、俺のメンタルで倒せる…」
「意味が分からん!」
リュシアのツッコミが鋭い。
結局、健は首根っこを掴まれて強制起床。
異世界二日目、朝からだいぶ雑な扱いである。
「今日は王都に向かう。昨日の件、ギルドに報告しないといけないからな」
「王都!?」
健の目が一気に覚めた。
「来たな……テンプレ舞台……!」
「てん、ぷれ?」
「いや、こっちの話!」
テンションが一気に上がる健。
この世界に来てからというもの、
恐怖と同じ速度でワクワクも膨張していた。
(異世界だぞ? 王都だぞ? 何か起きない方がおかしい)
――起きる。確実に。
第7話:王都バルディア――人も運命も混ざりすぎ
王都バルディアは、
健の想像を軽く超えてきた。
白い城壁。
石畳の大通り。
屋台の匂いと怒号と笑い声。
「うわ……RPGの街が現実に……」
「RPG?」
「人生がゲームっぽいって意味で!」
「また分からん!」
リュシアは相変わらずだが、
健はこの掛け合いが心地よくなってきていた。
ギルド前に着くと、
建物の前は人で溢れている。
「冒険者登録か?」
「いや、俺はまだ高校生」
「こうこう……?」
「学生!」
「……とりあえず中に来い」
この世界でも、説明は面倒らしい。
第8話:ギルドと“あからさまに強い男”
ギルド内部は、
酒と汗と危険な気配が混ざった空間だった。
健は――すぐに気づいた。
(……いる)
空気が違う。
視線の先。
壁にもたれかかる一人の青年。
黒いコート。
無駄のない立ち姿。
年齢は健と近いが、明らかに人を殺したことがある目。
青年が、健を見る。
一瞬――
世界が、静止した気がした。
「……面白い匂いがする」
青年が呟く。
リュシアが小声で言った。
「気をつけろ。あいつは――」
「分かってる」
健は、なぜか笑っていた。
(ああ……これだ)
――ライバル枠。
青年が歩み寄る。
「俺の名は――レオン」
名乗りと同時に、
健の胸がざわつく。
「冒険者か?」
「いや、日本の高校生」
「またそれか」
レオンは口元だけで笑う。
「お前、人じゃないな」
空気が一気に張り詰める。
(バレた!?)
健は内心で叫んだが、
表情には出さない。
「失礼な。俺はちゃんと人間だぞ?」
「……“混ざってる”」
レオンの目が、細くなる。
「お前の中には、世界がある」
健の背筋が凍る。
(この人……ヤバい)
だが次の瞬間――
「面白い。いずれ、殺し合おう」
「軽っ!? ライバル宣言軽すぎない!?」
健のツッコミに、
周囲の冒険者が吹き出した。
レオンは肩をすくめる。
「冗談だ」
「冗談に聞こえねえ!」
――こうして、
健は最初の因縁を得た。
第9話:初任務、即トラブル
ギルドの勧めで、
健たちは簡単な討伐依頼を受ける。
――のはずだった。
「……ちょっと待て」
健が足を止める。
「この森、さっきと違わない?」
「何がだ?」
「空気が……混ざってる」
言葉にした瞬間、
地面が隆起した。
「なっ!?」
土と骨と闇が融合した存在――
キメラ型魔獣《グラヴ=モルド》。
本来、初心者が当たる相手ではない。
「退け!」
リュシアが叫ぶ。
だが健は、一歩前に出た。
「……やってみたい」
「正気か!?」
健は深呼吸。
(怖い。けど――)
胸の奥で、
能力が応える。
《調合融合(ブレンド) 起動》
健は、走る。
――石 × 風 × 意志。
拳が、光を纏う。
「うおおおおお!」
殴る。
だが――
グラヴ=モルドの腕が、健を吹き飛ばした。
「健ッ!」
地面を転がり、血が滲む。
(……甘いな)
健は笑った。
「じゃあ、次は――」
――恐怖 × 痛み × 怒り。
世界が、きしむ。
健の身体が、
“戦うための形”に再構築される。
「融合解除・再構成!」
次の瞬間。
健は、魔獣を真正面から粉砕した。
衝撃波。
沈黙。
リュシアは、呆然と呟く。
「……化け物」
健は息を切らしながら、苦笑する。
「人間です。高校生の」
遠くの木の上で、
レオンがそれを見ていた。
「……やはり、面白い」
――彼は確信する。
野山 健は、いずれ世界を壊す存在になる。
第10話:憎めない敵と、迫る本物
その夜。
討伐対象ではないはずの魔物――
知性を持つ小柄な魔族が、健の前に現れる。
「やあやあ、人間さん。今日は負けを認めよう」
「敵!? なのに軽い!」
魔族は笑う。
「君、混ざりすぎだよ。世界が酔ってる」
「え、俺のせい?」
「半分はね」
悪びれない。
だがその背後で――
とてつもない圧が、空気を潰した。
魔族の表情が変わる。
「……来たか」
リュシアが剣を構える。
「何がだ!」
健は、汗をかいていた。
(ヤバい……さっきのとは格が違う)
闇の奥から、
“本物の敵”が歩いてくる。
――世界級の存在。
第2章・了