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#恋愛
桜空

2,250
僕は、病気なのに動き続けるなんて機械のようだと思っていたけれど、僕の感想なんて大病を患った全ての人にとってどうでもいい。
彼女もまた、余計な考えに邪魔されたりせず、医学の恩恵を存分に享受した。
だから、彼女が僕というただのクラスメイトに病気を知られてしまったのは、彼女の運の悪さと詰めの甘さのせいに他ならない。
その日、僕は学校を休んだ。
盲腸の手術、自体ではなく術後の抜糸のために。
体調もよく病院での処置もすぐに終わった。
学校にも遅刻して行くはずだったのだけれど、大きな病院での待ち時間の長さと、ついでだから学校を休もうという僕の意地の悪さが、僕を病院のロビーに留まらされた。
些細な気持ちだった。
ロビーの隅、端っこにぽつんと置かれたソファの上に、一冊の本が置き去りにされていた。
本好き特有の期待めいた興味が頭をもたげ、僕を動かした。
患者達の間を縫って、ソファに近づき、座る。
本はぱっと見たところでは三百ページの強の文庫本だった。
病院の近くにある書店カバーがかけられている。
カバーを外して題を確認しようとしたところで、少々驚いた。
書店のカバーには本来文庫本そのものに付いているはずのカバーではなく、本体に太いマジックで「共病文庫」と手書きの文字が置かれていた。
もちろんそんな題名も出版元も聞いたことがない。
一体、これは何なのか、考えても答えが見つからないので、ぺらりと一枚ページをめくってみる。
最初のページ、目に入ったのは、慣れ親しんだ印刷の文字ではなく、ボールペンで丁寧に手書きされた、つまりは人が書いた文章だった。
「20✕✕年 11月 23日
本日から、共病文庫と名付けたこれに日々の想いや行動を書いていこうと思う。家族以外の誰にも言わないけれど、私は、あと数年で死んじゃう。それを受け止めて、病気と一緒に生きるために書く。まず私が罹った膵臓の病気っていうのはちょっと前まで判明した時にはほとんどの人がすぐ死んじゃう病気の王様だった。今は症状もほとんど出なくできて·····」
「膵臓·····死ぬ·····」
僕の口から思わず、日常では発音するはずのない音の並びがこぼれ落ちた。
·····なるほど、どうやらこれは、余命を宣告された誰かの闘病日記、いや、共病文庫らしい。
あまり、見ていいものではないな。
コメント
1件
うわあああ『共病文庫』…!😭✨ タイトルからして既に心臓掴まれたんだけど、主人公が偶然見つけた手書きの日記っていう設定がもうエモすぎる…。しかも「あと数年で死んじゃう」って一文がさらっと書かれてて逆にグッと来たよ…。大病を患う人の気持ちなんて自分には分からないって前置きしつつ、それでも惹かれて読んでしまう主人公の心情描写がリアルで好き。続きが気になりすぎる…!😢💕