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耀聖(ようせい)
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食パン
37
それを僕が理解して本を閉じた時、頭上から声が降ってきた。
「あの·····」
声をかけられ顔をあげて、驚いたが表情には出さなかった。驚いたのは声を発した相手の顔を知っていたから。
感情を隠したのは、彼女は僕に本とは関係なく声をかけたのかもしれないと思ったからだ。
というか、恐らくこんな僕でも、同級生が余命幾許もないという運命を背負っている可能性を、否定したかったのだろう。
クラスメイトが声をかけてきたことにだけ関心を持ったという顔を作って、彼女の言葉を持つと、僕の薄っぺらい期待を嘲笑うみたいに彼女は手を差し出した。
「それ、私のなんだ。【地味なクラスメイト】くん、どうして病院に?」
当時、彼女とほとんど会話をしたことのなかった僕は、彼女について自分とは正反対の明るく溌剌としたクラスメイトという情報しか持っていなかった。
だから彼女が、重大な病気のことを関係の薄い僕に知られたというこの状況で、気丈に笑顔を浮かべていられることに面食らった。
それでも僕はできる限り知らんぷりをしようと決めこんだ。
僕にとっても彼女にとっても最善の選択だと考えた。
「前に盲腸の手術をしたんだけどね、それの抜糸に」
「ああそうなんだ。私は膵臓の検査にね。診てもらわないと死んじゃうから」
なんていうことだろう。
彼女はすぐさま僕の配慮とか気づかいを粉々に砕いた。
真意が読み取れず彼女の表情を観察していると、彼女は笑みを深めて僕の隣に深く腰かけた。
「びっくりした? それ「共病文庫」、読んでたんでしょ? 」
あっけらかんと、おすすめの小説を紹介するみたいに彼女は言った。
だから、なるほど彼女はいたずらを仕掛けているんだ、疑似餌にひっかかったのがたまたま面識だけはある僕だったという話なんだ、とすら思った。
「本当言うとさ」
ほら、種明かしだ。
「私がびっくりしちゃった。無くしたと思って大慌てで探しに来たら、【地味なクラスメイト】くんが持っているんだもん」
「·····どういうこと? これ」
「どういうことって? 私の「共病文庫」だよ。読んだんでしょ? 膵臓の病気って分かってから日記みたいにつけてるの」
コメント
1件
第10話、読み終えました! 「診てもらわないと死んじゃうから」って台詞、軽い口調なのに一撃で空気を変える力があって痺れました。主人公が気づかいを全部粉々に砕かれる感じ、読んでるこっちも「あっ…」となりましたね。 「共病文庫」が日記だったという種明かしも、急に現実感と重みが出て良い伏線回収だと思います。この先、彼女とどう関わっていくのか気になります。続き楽しみにしてます!