テラーノベル
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「クソ!何を考えてやがんだよ!!」
ルシオが机を思い切り蹴り飛ばす。
「食料調達に近隣領地へ武器の支給……嫌な予感はしていたが、まさかこんなすぐに隣国との戦争になるとは……」
机に肘をつきながらヴェスパが大きなため息をついた。
「なんで今更このようなことを……」
アルテアも不安そうな顔つきで項垂れている。
「賢者ジャヌス。忘れられた英雄とはいえ、実力のある者や国の威厳者ならなおさら知らぬ者などいない英雄の訃報……場合によっては国力の低下を疑われ、攻められるかもしれない」
「………!!」
「そんな理由で戦争なんかするのか!!」
唇を噛み締めるニティアと激怒するフィニス。しかし冷静にヴェスパは話を続けた。
「だからなんだよ。ここ十数年の間、魔女が姿を表さないどころか、魔族に関しても表立った行動をしていない。他の国もそっちに戦力を割かなくて済む分、戦争へ力を集中することができる。それくらい今は危険な状況でもある話なんだ。だから、やられる前に一度大きな戦争を起こし、世界に国力誇示をし、周りを黙らせる。国を守るためを思えば間違えてるとも言えないんだよ。私は気に食わないけどな」
「あくまで可能性で攻められるって決まったわけでもないんだろ!?」
「その可能性が問題なんだよ。判断が1日でも遅れれば、国境の村や街なんてすぐにでも襲撃を受けちまうからな」
「……でも!」
「……どうしようもないのでしょうか……」
ヴェスパが封に入っていた書類を1枚広げる。
「これは?」
不機嫌そうにルシオが書類を睨みつけながら尋ねる。
「国からの指令書だ」
・開戦は国境の先にあるベスオー平原。この地の前線へ、傭兵として戦力を送ること。
・同時刻、平原の後方にて支援人材を送ること。
・重症による支援困難等の理由が無い場合、ギルドの人員全てをどちらかの支援に向かわせること。理由無き不参加の場合は国の規定に則り、厳罰に処すものとする。
「私たちも結局……この戦争のために、この国にとどめさせられたのかな…….」
「クソっ……!」
俯くニティアと、ただただ握り拳を強く握ることしかできないフィニス。
いや、フィニスだけでは無い。この場にいる全員が、もはやどうすることもできない状況になっていた。
「戦争まであとどれくらい?」
フィニスが呟く。
「1週間後。だが、1週間後にベスオー平原となると、5日後にはここを出ることになるだろうな……」
重い空気が漂う。誰1人言葉を発することなく、しばらくしたのちに各々が立ち上がり、その場を後にしていった。
⸻
7日後 〜 ベスオー平原 〜
騎士団や兵士。冒険者や聖職者。中にはまだフィニス達よりも幼い子供までが鉄の塊を身に纏い、隊列を組んでいた。
ヴェスパ達のギルドメンバーにおいても、一部の血気盛んな数人を除き、他全員は支援部隊に入ることにしていたため、後方からその光景を一望することができた。
「すごい人……」
ニティアがボソッと呟く。
「でも……この人たちは戦争で……」
悲しそうな表情のアルテア。
「お前らは何も考えなくていい。傷ついた人の手当てと、遠距離や魔法攻撃が来た時だけ対応してくれ」
険しい表情のルシオ。フィニスもその言葉に頷いた。
こちら側の隊列と向かい合う形。平原の反対側には、同様に兵士たちが隊列を組んで待機していた。おそらく同じくらいの人数だろう。
この人数が衝突するとなると、お互いの国に一体どれくらいの被害が……そんなことを考えたニティアは、震えている手をぎゅっと握りしめて大きく深呼吸をする。
「全軍!突げ⸻」
開戦の号令がかかろうとした瞬間……
「!?」
眩い光と共に
「なんだ……あれは……?」
突如上空に現れた
「もしかして……」
巨大な
「魔……法陣……?」
魔法陣。
一段と輝きを増し、白い光があたり一面を覆った次の瞬間……
キィーン……
展開されていた上空の巨大な魔法陣から巨大な閃光が上空目掛け、飛んでいった。
そして次の瞬間……
ドゴーン!
両軍の前線に光の塊が降り注ぎ、兵士たちを吹き飛ばしていた。
「なっ!?」
両軍が一斉に上空を見上げると……
無数の白い光の塊が降り注いできていた。
ズガガガガガガ
「総員!上空からの衝撃に備えろ!」
「可能な奴は結界魔法を!急げ!」
「魔法使い!上空の閃光目掛けて魔法を放て!」
関係なく降り注ぐ閃光。
フィニス達もアルテアの結界とルシオの盾に守られながら、衝撃から身を守っていた。
ズガガガガ……ドーン!
響き渡る悲鳴と怒号。衝撃の音にそれらの声が徐々にかき消されていく。
どれくらい続いたのだろうか……降り注ぐ閃光の衝撃が止む頃には、あたり一面が砂煙と静寂に包まれていた。
「いって〜……」
「みなさん……大丈夫ですか?」
「魔族と同じ……魔力そのものを放出した魔法……?」
「……ってことは、魔族が現れたってことか?」
「落ち着け。それも含めて今は状況確認が最優先だ!」
混乱するフィニス達をよそに、ヴェスパの声が響き渡る。テキパキとメンバー達へ指示を飛ばしながら、混乱する隊列の間を駆け回るヴェスパ。周りの隊列が徐々に落ち着きを取り戻していった。
「巨大な魔法陣……」
冷静さを取り戻したフィニスが、図書館で読んだ非公式の手記を思い出す。
砂煙の向こう側。魔法陣が展開されていた場所をじっと見つめるフィニス。
徐々に視界が晴れていく。
「……フィニス?」
そんなフィニスの様子を見たニティアが声をかけるも、フィニスの耳には一切届かず、砂煙の先の一点をずっと見つめていた。
徐々に見えてくる、上空に浮かぶ一つの影。
ドクン……
心臓が高鳴っていくのが自分でもわかった。
長い白髪を風に靡かせながら、ただただ無表情で平原を見下ろしている女。
「あいつは……」
上空に浮いていた女がゆっくりと地面へと降り立った。
「白髪の……魔女!!」
幼い頃、薄れていく意識の中で見た女。何度も夢にまで見た魔女がそこにいた。
「フィニス!!」
村を焼かれ、家族を殺した仇が目の前にいる。ニティアの叫ぶ声も届かず、フィニスは双剣を抜くと、一目散にその魔女の元へと走っていった。
魔女の視線が反対側の軍へと移ったその瞬間、フィニスは白魔女の元へと飛び込み、魔女の首目掛けて剣を振り抜こうとしたその瞬間。
ガキン!
フィニスの方を一切見ずに、手に持った杖で軽々とフィニスの剣は受け止められてしまった。
「お前が家族を……村を……!!」
もう片方に握る剣に力を込め、魔法効果を発動させるフィニス。
この片方の剣に込めた魔法。それは………
”超振動”
超振動により極限にまで摩擦を減らすことにより、この魔道具自身の切れ味も相まって、硬いものであってもすんなりと切断することができる。
ただの振動。火炎やプラズマを発生させる魔法とは異なり、初見ではまず”分からない”と言うと。そして、ただ本体を振動させるだけのため、魔法で何かを生み出すよりも消費魔力が少なくすみ、インターバルも少なくなる。
フィニスが魔法効果を発動させ、もう片方の剣で魔女めがけて剣を振り抜く。
ガキーン!
「なっ!!」
持っていた杖をくるりと動かし、魔法効果のかかっている剣を受け止める魔女。
フィニスの魔法効果が切れたフィニスが感じた違和感。
剣を止められている杖から感じる微かな振動……
「お前……!なんで……!?」
魔女がフィニスの方に顔を向け、何も持っていない手をフィニスの方にかざす。
その瞬間、フィニスはそのまま空中で”固定”され、身動き一つ取れなくなっていた。
「ぐ……」
全身の力を使っても、身体がぷるぷると痙攣するだけ。指先一つ動かせない。
白い魔女を睨みつけることしかできなかった。
「フィニス!!」
ニティアが叫び、魔法を放とうとするも、ルシオとアルテアに止められる。
「やめろ!フィニスに当たっちまう!」
「でも……!」
「今はなるべく……刺激しないように……!」
その言葉に踏みとどまるニティア。
白髪の魔女はニティア達の方に一度視線を送った後、再度フィニスへと視線を戻す。
睨みつけるフィニスの視線先に写った魔女。無表情を装っているが、瞳が潤んでおり、どこか切なそうな顔をしていた。
白髪の魔女の指先が、そっとフィニスの頬に触れ、目を伏せた次の瞬間……
……ヒュン!!バコーン!!
フィニスはルシオのいる方へ吹き飛ばされ、受け止めようとしたルシオ諸共さらに後方へ吹き飛ばされて意識を失ってしまっていた。
「フィニスさん!ルシオさん!」
アルテアが急いで駆け寄り、治療を開始しようと魔力を込めた瞬間……
ゾクッ……
鳥肌が立ち、アルテアは後ろを振り向く。
そこには……ニティアがかつて見たことのないほどの魔力の込めた術式を構築し、魔女に向けて杖を構えている。
「あんた……よくもフィニスを……!!」
先ほどの上空に展開された魔法陣にも引けを取らないほどの巨大な魔法陣。人間では決して作り出せないほどの巨大な魔法陣。
アルテアは急いで2人の元へと駆け寄り、治療をしながら、なるべく大きな結界を張った次の瞬間。
「死んじゃえ」
ゴゴゴゴー!!
魔法陣の中心から巨大な漆黒の閃光が白髪の魔女めがけて放たれた。
白髪の魔女もゆっくりと杖をかざし、巨大な魔法陣を展開させると、その魔法陣でニティアの魔法を受け止めていた。
「そんな……あれも受け止められるなんて……」
巨大な魔力の衝突により発生した突風の中、その様子を見ていたアルテアの心の声が無意識に飛び出す。
パキキキッ!
魔女の魔法陣にヒビが入っていき、ニティアの魔法も徐々に弱まっていく。
パキン!
魔女の魔法陣が砕けると同時に、黒く細い閃光が魔女の頬をかすめた後ニティアの魔法も消失。ニティアも魔力を使い果たしたのだろう。肩から息をしながら、その場で膝をついてしまった。
指先で頬から流れる血に触れる白髪の魔女。
ニティアに視線を移し悲しそうに笑った後、空高くに杖をかざし、再び巨大な魔法陣を展開した。
「そんな……まだそんな魔力が……」
朦朧とするニティアの元へヴェスパが駆け寄り、肩を抱える。
「結界を張れる奴の周りに集まれ!!戦争は終わりだ!全員生き残れ!!」
ヴェスパが大声でそう叫び、ニティアを抱えながら急いでアルテアの元へと駆け寄る。
「アルテア、魔力は足りるか?!」
「は……はい、問題ありません」
気を失っているルシオとフィニスを見て、命に別状がないことがわかると、ヴェスパはアルテアへ回復を中断させ、結界魔法に全集中するように伝えた。
ニティアが朦朧とする意識の中で白髪の魔女の方に視線を移すと、白髪の魔女もその視線に気付いたのか、2人の目が合った。
ニティアを見つめたまま、白髪の魔女は微かに口元を動かしたあと、ふっと少しだけ困ったような笑みを浮かべ、巨大な白い光の塊を上空へと撃ち放った後、いつのまにか展開していた足元の魔法陣の光と共に姿を消してしまった。
#ファンタジー
柘榴とAI

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#ミノえと
めんだこ
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#センチネルバース
かんな
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月白
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コメント
1件
ぶわあああ白魔女ついに現れた!!!フィニスの仇敵がまさか戦場で降り立つとか展開熱すぎる😭💕 超振動かけた剣を杖一本で止められちゃうし、潤んだ目で頬に触れてきた意味が気になって仕方ない…何か事情ありそうだよね!? ニティアの「死んじゃえ」からの漆黒の閃光もヤバかったし、ヴェスパの「戦争は終わりだ!全員生き残れ!!」の叫びにも胸が熱くなった…!続きめっちゃ待ってるよ月白先生!!