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クスクス・・・・

「ねぇ・・・もう目を開けてもいい?」



「ダメ 」




北斗に言われ目を閉じたまま両手を引かれて、連れてこられた建物の中に入ってアリスは混乱した




ここは真夏のように暖かな空気に包まれている、そしてとても良い香りがこの建物中に漂っている




「気を付けてそこに段差がある」




言われた瞬間アリスは何かに躓いた




「きゃぁ!・・・もう・・・目を開けてもいいでしょう」



「まだ ダメ!」




そういう北斗に抱きかかえられアリスはまた彼の首に腕を回し、こんどはケラケラ笑った




ここは温室だわ・・・・アリスは戸惑いながらも気が付いた、さっきから濃密なバラの香りがする。とても良い香りだ




入る時は何やらルーブル美術館にある、ピラミッドのようなガラス張りの建物に見えた




「さぁ もう目を開けてもいいぞ」




そして目を開けると・・・・そこには色とりどりのバラしか目に入ってこなかった




アリスは感動と戸惑いを同時に感じた、まさか日本にこれほど見事なバラの温室があるなんて




床の頑丈なレンガの花壇の上にバラが生い茂っている




可愛らしい木製の荷車にまで、小ぶりのスプレーバラが小さな花を咲かし、その横にはホーローの鉢にかなり大きめのレモンの木が植えている




だからなのか・・・・アリスは納得した、ここはバラの芳香に、柑橘系の爽やかな香りもする・・・・




この人から漂ってくる香りだ



アリスは周りをぐるっと見渡した、よく考えて設計されている、この場所はアンティークでありながら上品でくつろげる様々な品種が咲き乱れ、そして中心には・・・・



彼の言った通りバラの温室の真ん中にガゼボ(ドーム型の休憩所)が建設されていた



アリスは今まで海外のバラ園にも、出向いたことはあったが、こんなに美しいガゼボは見たことがなかった




ドーム型に曲げられた鉄柱に薄いピンクと赤の、オールドローズが巻き付いている




ドームの下には大きな籐で編んだ大人三人は眠れるベッドが、異国情緒のある非日常的な佇まいを感じさせる




まるでCGだと思ってしまうぐらい、この温室は圧倒される精巧な作りだった



「わぁ~・・・・ 」


「俺のちょっとした休憩所だ」



アリスはガゼボの中のベッドに腰をかけ、自然と仰向けになってドームのバラを眺めた



アリスの中のアーティストとしての心が高揚するのを感じた



夢のような・・・甘くて美しいおとぎの国だ。しかもこれを彼が建てたのだ、なんて素晴らしい感性の持ち主なんだろう




きっとここでお昼寝をすると目覚めたら、天国に来たと思うだろう




「素晴らしいわ・・・北斗さん 」


「気に入った? 」



「気に入ったどころじゃないわ、ずっとここに住んでいたいわ 」




北斗がクスッと笑った




「俺たちの住まいは別にあるよ。ここは・・・亡くなった母が建てたんだ」



「まぁ!お母さまが?」




「ああ・・・でも亡くなってからは、俺が出・て・来るまでずっと放置されていて、ここまで回復するのにずいぶんかかったんだ」




・・・幽閉されていて・・・出てくるまでってことね・・・・




ここ数時間一緒に居て彼には触れてはならない、過去があることがなんとなくアリスは感づいていた



でも・・・ふとこうして彼の気が緩んだ時に、ポツリ・・ポツリと話してくれる




アリスは彼の過去を根掘り葉掘り聞かなくても、こうして一緒に居ることで彼の過去も少しずつ、明確になっていくだろうと考えていた




あせる必要はない、これからずっと一緒にいるのだから




「ここはもう君のものだ」



クスッ・・・「私のもの?」



アリスが楽し気に瞳を煌めかせて、北斗に質問する




「ああ・・結婚した以上、俺の持っているすべてのものは、君にも所有する権利がある、土地・・・資産・・・その他諸々・・・」




北斗が身を乗り出して、アリスの手に口づけした



「あまりあげられるものはないけど・・・」



「私が欲しいのは、あなたの心よ・・・」





あえて目を反らさず聞いた、今度はアリスが射るように見つめる番だ




―私を愛してくださるの?―



と心の中でつぶやく



北斗がアリスの耳たぶをそっと噛んだ、思わずアリスは吐息を漏らした




「心ならもうとっくに捧げている・・・」



彼が屈みこみベッドに腰掛けているアリスに熱いキスをした



そしてまるで丁寧に包装されたラッピングの包みを開けるように、北斗はアリスの服を一枚一枚脱がせようとした




「・・・恥ずかしいわ・・・私・・・上手く・・・出来ないかも・・・・」




上半身裸にされてアリスが腕で胸を隠し、北斗の目線を避けた、頬がピンク色に染まっている





「大丈夫・・・・俺にまかせて 」




北斗の指先がアリスの肩の曲線をうっとりするほど、優しくなぞった




「恥ずかしがり屋さん、下を脱がすのにはどちらのほうがいい?すばやく?それともゆっくり?」




「すばやく・・・かしら?」





アリスが息をするよりも早く、スカートもタイツもパンティもはぎ取られた、あまりにも素早かったので、アリスは可愛らしい悲鳴をあげ笑った




隠れるようにシーツの中にもぐりこみ、あらわになった太ももに鳥肌が立つ








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