コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
明かりを落とした暗い部屋を進み、ベッドの縁に横並びに腰を落とすと、高ぶる胸のときめきに息さえ詰まるようだった。
同じ空気感を覚えていてか、彼が言葉もなく首に掛かったままのネクタイを引き抜いて、シャツのボタンを一つずつ外していく。
その仕草をじっと見つめていると、指先がボタン穴を捕らえかねて、時折外しそこねているように窺えた。
細かな動作をやりにくそうにもしている彼に、目に見えて疲れているように思う。
だってそうだよね……、初めに『ピークが過ぎた』って話してたのは、それまで仕事をどれほど詰めていてってことだもの……。
「……貴仁さん、もしお疲れなら、もう寝ませんか?」
そんな彼を気づかい、そう声をかける。
「だが、それではまた、君に独り寝の寂しさを……っ」
おしまいまで言い終わらない内に、唇を軽く触れ合わせて遮った。
「さっきも言ったように、あなたが来てくれたから、もう寂しくはないの。だから今夜は、眠るだけにして。ね……服は、私が脱がせるから」
彼が途中まで外していたボタンに指を掛けると、それだけでさらにに心臓の鼓動が早まって、指先が小さく震えた。
ようやくボタンを全部取り外し、シャツを開いた。
「この先は、私が自分で……」
自ら脱ごうとする彼を、「待って、」と、制する。
「じっとしていて……最後まで、私にやらせて?」
言いながら、脱ぎかけの肩口に手で触れると、
彼は、「ああ」とだけ短く頷いて、私にされるがまま身を任せた。
肩の手に加え、脇を支えるようにもう片方の手を添え、袖から緩やかに腕を引き抜く。
緊張に強張る手の平に、彼の収縮した筋肉の固さが伝わって、いっそうドキドキとさせられる。
両腕を抜き取り、ワイシャツがはらりと落ちると、こらえようのない思いで、露わになった彼の胸元に顔をそっと埋めた。
「ねぇ私も、上を脱がせて……。あなたと、抱き合って眠りたい」
上目づかいにその顔を見やる。
「うん……わかった」
部屋着が彼の手で脱がされ、上半身がナイトブラ一枚になる。
「これもか?」と、問う彼に、無言で頷く。
ブラが取られると、彼の手が淡く私の胸を包み込んだ。
「スーツの下も脱いでいいか、寝るには少し窮屈だから」
コクッと頷いて返すと、彼がベルトのバックルを開け、穿いていたスラックスを脱いでボクサーパンツのみになった。
けれん味がないためよけいに煽情的にすら映るその姿に、目のやり場に困りうつむけた視界の内に、ふいと自身のルームウェアのパンツが入って、私一人が身に着けていることに、にわかな居心地の悪さを感じて、
「わ、たしも、あなたと同じに……」
ぎこちなく声に出すと、ためらいがちに腰まわりへ手を掛けた。
すると彼が、「君は、無理には合わせなくてもいい」そう言って、穿き口を広げる私の手を取ろうとした。
「いや……いっしょがいいの。恥ずかしくなんて、ないから」
顔が火照るのを感じつつ、強がりを口にして、
「こ…のまま、私と下ろして」
貴仁さんの手を、上からキュッと握り直した。
「君が、そうしたいなら」
握り合った手で、緊張を堪《こら》えて脱ぎ下ろすと、
ショーツ一枚になった下半身の膝裏と首筋とが、おもむろに抱え上げられて、ベッドに横たえられた。