襖を開けると其処には12人もの人が正座で畳に座り込んでいた。
「にゃはっ♪二子っちやっときたね〜」
まず、最初に声を上げたのは黄色のインナーカラーにおかっぱヘアをした元気そうな人だった。
「お久しぶりです。蜂楽くん」
二子はそう言うと俺を手招きして自身の隣に座る様に促される。
俺はカチコチになりながらも二子さんの隣に座り13人の祓い屋と向き合う形で正座する。
静寂が広がる中、俺が正面を見上げると目の前にはタイコーズブルーの瞳をした綺麗な顔立ちの青年が居た。
見ている事に気が付いたのか目がばっちりと合ってしまい俺は目を逸らす為に慌てて右を向く。
其処でも目が合い、左を見ても誰かと目が合ってしまうものだからどうしようと慌て俺が百面相をしていると
にゃ〜ん
突如として猫の鳴き声が聞こえてきた。
俺が驚いて声の方を見ると、俺の後ろに先程別れた筈の紅い猫が座っていた。
「お前飼い主さんの所に帰ったんじゃなかったのか!?」
驚く俺をおいて紅い猫は近づいて来ると甘える様に俺に体を擦り付けてくる。その様子があまりにも可愛くて俺は顔合わせという事を忘れ思わず顔をほこらばせる。
「君凄いね!お嬢の猫が懐いてる!!」
先程二子さんに話しかけていた青年が感心した様に声を上げる。周りを見ると他の青年達は驚いた様に目を見開いて此方を見ていた。
猫が懐くのってそんなに凄い事なのか…?後、お嬢って??
「俺の名前は蜂楽廻!二子っちから聞いたと思うけど祓い屋やってるよ!!君の名前は?」
「あ、えっと…潔世一です、」
「潔って呼ぶね!これからよろしく〜!!」
「う、うん。よろしく蜂楽、!!」
蜂楽唯一初対面の俺に気さくに話しかけてくれな。
なんか、蜂楽とは良い友達になれそう。少し安心したかも…。
「…蜂楽くん以外の皆さんも驚いてないで潔くんに自己紹介して下さい。僕は一刻も早く潔くんに事情を説明したいので」
二子さんは少し声に怒りを含め、青年達を前髪の隙間から見つめる。
青年達が二子さん言葉に意識を戻すとそこから一斉に大人数による自己紹介が始まった。
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「千切豹馬。ん…?これって属性言った方が良いのか?まぁ、よろしくな」
綺麗な赤髪の美人。
「國神蓮介。お前には2回目の自己紹介になるがよろしくな」
優しく強い志を持ったヒーロー。
「凪誠士郎〜よろしくぅ…」
ふわふわした眠そうな白クマ。
「御影玲央だ。よろしくな。凪ー起きろ〜」
その白クマ?を世話する飼育員??
「…糸師凛」
下まつげが特徴的で無愛想な人。
「いや、非凡お前それ名前しか言うとらんやん。はぁ…まあええわ。
烏旅人や。よろしゅう」
名前の通り利口的な顔とツンツンした髪型をした烏。
「ちゅーす、乙夜影太ですー。よろしくー」
陽キャというかなんというか、端的に言ってただのパリピ。
「雪宮剣優です。これからよろしくね」
話してるだけなんだけど、なんか周りに妙な色気が漂ってる気が…。
「氷織羊言います。よろしゅう」
京都弁を話すこの人は赤髪の人とは違う部類の美人って感じ。どっちかというと可愛い系?
「黒名蘭世。よろしくよろしく」
蜂楽と同じ感じがする。仲良くなれそう。
「七星虹郎って言います!これからよろしくしますっぺ!!」
うん。可愛い後輩感が半端ない。こういう後輩欲しかった。
「清羅刃。、よろしく」
よく分かんないかも…。なんか謎?
いや…何で自己紹介の時点でこんな違うんだよ。個性溢れすぎだろ。今何となくだけど感じた感想を頭の中で整理してみたけどなんか、二子さんが言ってた事分かってきた気がする。
確かにこの全員と話してたら収拾つかなくなりそうだし、頭痛もするわ。
ってか、自己紹介の途中で出てきた属性?が気になって仕方ないんだけど。やばい、気になる事だらけだ。
「今ので皆さんの自己紹介は済みましたね。では、潔くん。
此処からが本題です。僕達だけで潔くんが眠っている間会議を開いたのですが話合った結果、君はこれから僕達祓い屋の本拠地で保護する事になりました」
「…えっ、ええ〜〜〜〜〜〜!!?!!?」
目を白黒させ混乱しながら二子さんの言葉に俺は叫んだ。それは思いっきり。本拠地であるこの広い家に轟くくらい。
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「…叫んですみません、。お恥ずかしい限りです…」
今現在、大声で叫んだ俺は周りを見渡し後皆の前で顔を真っ赤にさせながらお手本の様な土下座をして謝っている。
「あははっ!潔そんな気にしなくて良いよ!!っというか保護する以上俺達と同居する事になるんだから敬語なんか使わずにもっと気軽にしなよ!!」
「…蜂楽…!!ん?待って今何て言った??」
自身を慰める蜂楽のセリフの中に1つ不穏な単語が聞こえた気がするんだけど。
「え?そんなに気にしなくて良いよって」
「その後!!」
「気軽にしなよ?」
「それは行き過ぎ!!その前!!」
「えーっと、…あ!保護する以上俺達と同居する事になるって奴?」
「まさにそれ!!」
両肩を掴み、叫ぶ様にそう答える俺に蜂楽は不思議そうに首を傾げ俺に質問してきた。
「ダメだった?潔なら許可してくれると思ったんだけど…」
「う“、いや…ダメじゃないけどその心の準備というかそれに家の事もあるし」
うるうると目を潤ませ此方を見つめる蜂楽が可愛くて上手く断る事が出来ず、言葉に詰まる。俺、お願いされると弱いんだよな。しかも、潤んだ目で見詰められたら庇護欲というかなんというか守ってあげたいと言うか…っ!
「家…あ、やばいですね。よく考えたら潔くんのご両親の事全然考えてませんでした。どうしましょう、そもそも6日間も此処に居るのはヤバいですし」
二子さんは冷や汗をかきながらぶつぶつと独り言を呟く。
「いや、その心配はしなくて良いですよ。俺、一人暮らしなので」
慌てて訂正する様にそう言うと二子さんは安心したのか1つ溜息を吐いた。これ、俺が一人暮らしじゃなかったらもうとっくに行方不明の届け出されてると思う。
「じゃあ、そういう事なので今日からよろしくお願いしますね。潔くん。後、明日から保護と同時に仲間に入る事となったので一緒に鍛錬頑張りましょうね」
え?保護は分かるけど仲間入り?後鍛錬って何で俺やらされるの??
俺祓い屋でも何でもないただの一般人なんですけど。
「あの…何で俺も鍛錬するんでしょうか?保護されるだけでは?」
「いえ、それはまったく違いますよ。保護するとは言いましたがだけとは言ってません。君には僕ら祓い屋の囮役になってもらいますから。
ちなみにこれは僕の意見ですはなくメガネ鬼教官からの伝言です」
その言葉に俺が滝汗をかく中、横に居る蜂楽はそんな俺の様子を見て満面の笑みを浮かべていた
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