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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第62話 〚 玲央が“守られている構図”に気づく回〛
最初に気づいたのは、
違和感だった。
修学旅行先に着いて、
班で行動を始めた頃。
玲央は、
なんとなく全体を見渡していた。
(……あれ?)
澪の近くには、
いつも海翔がいる。
それだけなら、
今に始まったことじゃない。
でも。
真壁恒一が動くと、
必ず海翔も
一歩、動く。
真壁が澪に視線を向ける。
→ 海翔が、さりげなく立ち位置を変える。
真壁が近づこうとする。
→ 海翔が、自然に会話を挟む。
(……露骨じゃないけど)
(これ、
偶然じゃないな)
玲央は、
一度だけ
真壁の動きを追った。
視線。
足の向き。
タイミング。
そして、
海翔の動き。
(完全に、
“被せてる”)
それは、
喧嘩腰でも、
威圧でもない。
ただ、
「そこには入らせない」
という距離の作り方。
(……海翔、
ここまでやってたのか)
玲央は、
少しだけ
息を吐いた。
正直、
気づかなかったわけじゃない。
でも、
“確信”したのは
今が初めてだった。
真壁恒一は、
それに気づいていない。
いや、
気づけていない。
(守られてる側の澪より、
守ってる側の海翔の方が、
よっぽど神経使ってるな)
そう思った瞬間、
玲央の中で
何かが整理された。
(これ、
澪が望んでるかどうかは別として)
(今の状況では、
必要な壁だ)
玲央は、
あえて海翔に声をかけない。
代わりに、
自分が一歩
外側を見る。
真壁が別の方向に行くとき、
さりげなく
そちらに人を集める。
澪の近くが、
“自然と埋まる”ように。
(……役割分担、
だな)
そう思って、
少しだけ苦笑した。
守る人間が一人だと、
限界が来る。
でも、
気づいてる人間が増えれば、
壁は厚くなる。
澪は、
何も知らずに
えまと話して笑っていた。
それを見て、
玲央は
安心する。
(これでいい)
(少なくとも、
今は)
海翔と、
一瞬だけ目が合った。
何も言わない。
でも、
玲央は小さく
頷いた。
——分かってる。
言葉はなくても、
それだけで
十分だった。
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