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地元は、海の近くだった。
海鳥のうるさい声と、潮臭いこの街が、嫌いになったのは、七瀬郁子が死んでからだった。
学校帰り、よく海で遊んだ。小・中学生の頃だけど、それは確かに、俺の中で愛すべき思い出だった。
海を、愛していた。
中学生になって、変化があった。青い襟のセーラー服、ストンとした襞スカート。一方、自分は黒く重たい学ラン。
男女を区別するそれが、もどかしくて仕方がなかった。そしてそこに芽生える余計な感情…。
七瀬郁子は、俺の中で「幼なじみ」から「好きな人」へ変わった。
変わらない無邪気な笑顔。成長しつつある四肢。夜の海みたいな、髪の毛…。
全部全部、扇情的で、美しくて。
このまま幼なじみのふりをしていたらきっと、郁子の全ては俺のものになるんじゃないかって。
そう、信じていた。
彼女は突然、死んだ。
電車と、接触事故を起こした。